8.人間の振れ幅の大きさ(バトル5)

 さあ、あっという間に第8回です。

 今回は大規模戦闘および戦争規模の戦いをどう展開したのかについて書いていきます。


 結論から言って、戦いの規模が大きくなるほど現実世界の流れに近づくというのが「半身転生」の流れでした。

 異世界バトルファンタジー、魔術ありスキルあり、おまけに人間がやたら頑丈なので、そうなると個々の戦いは必然的にハイレベルになるわけですよね。

 言い換えれば人間という種の戦闘能力の振れ幅が非常に大きくなるわけで、それが現実世界との違いなわけです。

 しかし、こと戦争に限ればこの要素が少しずつ薄まって結果的に似たような展開に収束するのです。


 例えば魔術。

 一応設定では魔術と結界術について言及があるのですが、軍が陣形を組んで押し合いをしている最中に魔術を発動させるのは非常に難しいです。

 理由として、体外に放出した魔力を安定させることが難しいというのが一番大きいです。

 あれだけ近距離で敵味方が入り乱れていると、体外で形成した魔術回路が魔力の力場に邪魔されて魔術が不発に終わります。

 だから原始的な剣や槍で戦うことになりますし、魔術師の集団は互いに距離を取って魔術を使います。


 剣や槍に関しても同じ話が言えます。

 いくら現実世界の人間と比べて戦闘能力が強いと言っても、一般の兵士は5分も全力で戦えば体力が限界を迎えてしまいます。

 他にも機動戦を仕掛ける場合も、バラバラに動けば流石に集団行動を取る敵に容易く討ち取られてしまうわけです。

 このように、異世界でも戦闘において集団の力の寄与が一定ラインを越えると、日本の戦国時代と何ら変わらない戦闘様式に変化するのです。

 実際どうなるかはともかくとして、「半身転生」ではそのように話を展開しました。


 とはいえ一般論に当てはまらない例外が存在するのも当然のこと。

 普通から外れてしまった人に対してどのように対処するのか、これも異世界集団戦の大事な要素です。

 分かりやすい例で言えば、Aランク冒険者相当の手練れが敵の場合、等級換算でCランク以下の戦力では何人かかっても討ち取ることができません。

 Aランカーも冒険者ですから、遠巻きにして持久戦を仕掛ければ勝てるかもしれませんが、そもそも相手も独りではないわけですし、突撃されて蹴散らされたらこちらが総崩れになってしまいます。

 例えば100対1の場合を考えてみましょう。

 3人斬られた時点で味方の足が止まり、もう5人斬られたら前線が崩壊します。

 距離を取るのは自由ですが、広く展開して包囲した時点で突っ込まれたらなす術がありません。

 あとはまるでゲームのように蹂躙されて終了、そんな感じでしょうか。

 それだけの特級戦力が異世界には存在しているのです。


 話を戻して、人外をどのように対処するのか。

 答えは簡単、こちらも人外をぶつけます。

 Aランカーには基本的に同数以上のAランカーをぶつけるのが常識で、それが無理なら数倍以上のBランカーをぶつけます。

 前者は作中でも山ほどそういうシーンがありましたし、後者はハルツ・クラーク率いる部隊が敵のAランカーを罠に嵌めて殺しています。

 そうなれば戦争という広域集団戦の中でAランカー同士による小規模な戦闘が発生するわけで、まあ面白いことになるのかなと思います。

 手練れ同士の戦いは彼らの目を通して戦場を一人称視点で描くことにもなります。

 そうなれば自然と視野が広くなりすぎる戦争描写をより狭く書き直すことができます。

 そういう意味で、割と楽しく面白く書けたんじゃないかなと思いました。


 大まかな設計思想が明らかになったところで、戦争の流れをどうやって決めたのか語ろうと思います。

 まあ戦力ですよね。

 国同士の政治状況などを踏まえて軍の規模が決まり、その他あれこれ事情を加味して陣容も細かく定まります。

 私の場合は誰を戦争に参加させて誰を参加させないか決めたくらいですが。

 そこまで来たら、両軍の勝利条件や敗北条件のすり合わせが始まります。

 ここまで占領したら勝ち、ここを守り抜けば勝ち、攻め込まれたうちここまで取り返せば勝ちなど。

 あとは大まかな戦いの展開を予測して、どっちが勝つのか徐々に描写を細かくしていきます。

 ちなみにこの時点で戦争はまだ始まってすらいません。

 陣容、規模、場所、勝利条件、時間制限、そういった背景を加味した上で、戦争の自然な流れをシミュレートします。

 ただ、自然な成り行きだけだと戦力の豊かな方が勝つだけなので、そこでアクセントを入れることを検討します。

 トラブル、奇策、主人公の覚醒、要素はなんでもいいですがある程度納得のいく分岐点を用意して、いざ実際に戦争開始です。

 あとはほとんど任せるままに、こちらは盛り込みたい描写を入れていく。

 それだけでも案外様になるものなのです。


 戦争は準備が9割と言われますが、話の構想もおおよそ同じだと思います。

 大人数が関わる都合上どうしても個人の能力や事情は無視されがちです。

 悲しいかな、そうなるようになっています。

 まあそこはあまり悲観せず、脳内シミュレーションで大まかに流れを作れることを喜びましょう。

 あとは書きたいように書くだけ、ただし整合性に気を付けて。


 総じて、きちんとプロットを練りさえすれば戦争描写は比較的何とかなるんじゃないかなと思いました。

 いまどき参考資料を集めようと思えばいくらでも出てくるわけですし。

 今日書いたのはあくまでも私のやり方でしたが、参考になれば幸いです。

 では。

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