第44話 そして椅子に傅く

一瞬、目の前が白く霞んだ。


瞬きをし、前を見ると大きな背中が見えた。


その大きな背中の男性は、コチラを見ないまま、後ろ手で腕を伸ばしている。


掌は開かれ、まるで手を繋ぐ事が当然のように差し出される。


その手に触れても良いのか躊躇い、掴まないままでいると、男性が振り返った。


「『彩葉?…おいで』」


優しく微笑んで、身体を此方に向けながら両手を広げた。


その胸に飛び込んで、自分の腕を彼の首に回す。


「『…可愛い…、好きだ、彩葉。』」


耳元で囁かれる。


その声で、私の身体はヒクリと反応し、そして強烈な快感が身体を駆け抜けた。


「…んぁ、あああぁぁ…っ!!…ぁ…」


「…動かしてないのに…逝っちゃったな。」


そう呟かれると、私の中の楔が抜かれた。


「…え?…今…」


状況の分からない私は、しっかり目を開ける。


すると最初に見えたのは、汗を滲ませ少し息の荒い柾人だった。


彩葉は、桐人がデザインしたチェアに座っていた。


座っているというのは、正しくはなかった。




柾人と互いの想いを通わせると、その場で抱かれた。


チェアに身を任せた彩葉は、柾人からの愛撫で身体を支える事が難しくなり、次第に下へ身体が滑り落ちていった。


チェアの座面に上半身を乗せ、下半身は宙に浮いてしまった。


ちょうど良いとばかりに、柾人は彩葉の両足を開き、そこでもまた彩葉の秘部に口淫を施す。


滴り落ちる愛液を気にせず、ひたすらしゃぶりつく。


そうしてやっと柾人が彩葉の蜜口を満たす。


両足を抱え上げ、幾度となく貫かれ、視界が白く霞んだ。





「…さっき、一瞬…飛んでたよな?…キツいか?」


少し気遣う柾人の声に、彩葉は首を振る。


「…夢かと…思いました…。一瞬、本当に夢を見たのかも?…何処まで現実…?」


困惑気味の彩葉の体勢を立て直す。

そして彩葉の頬に、柾人は軽くキスをする。そして耳にもチュッとキスをする。


「…ちゃんと現実だ。…現実でないと困る…。今の…幸せが、現実ではなく夢なら…もう覚めなくていい」


そう言うと、柾人はチェアの前で跪いた。


そして彩葉の細い脚を持ち上げる。


足先を口元まで持っていき、その先にキスをする。


「…汚いです…、足…」


小さく呟いた、彩葉の言葉は聞き入れられない。


「…夢でも、現実でも…もう…俺はお前から与えられる…『好かれる喜び』をお前に教えられた。」


唇は足首へ伝っていく。


「もう、その甘美な蜜のような『喜び』無しでは耐えられない」


舌先が膝を舐める。


「…だから俺は…その蜜を求めて、何度でも…椅子彩葉に傅くだろう」


彩葉の柔らかな内腿に唇が触れ、そして滴る蜜を求めて、舌は彩葉の蜜口へ。


「…あぁ!!…ダメぇ…っ」


敏感になっているそこは、舌を迎え入れる前からヒクヒクとしている。

そこに柾人の舌が捩じ込まれ、あまりの気持ち良さに、彩葉は首を振って悦び、咽び泣く。


柾人の手が蜜口を丁寧に舐める為に、秘部を広げる。

そして膨らんだ陰核を反対の手が責める。


「やぁっ!!…イク!!…逝っちゃうっ!!」


瞬く間に絶頂へ導かれる。


彩葉が逝くと、柾人は身体を起こし、彩葉の体勢を変えた。


彩葉をチェアに乗せ、背もたれにしがみつくようにする。


膝立ちになった彩葉は、支えを求めて背もたれに身体を預ける。


彩葉のお尻を撫でながら、柾人の昂りが彩葉の欲望が潤う蜜口にゆっくり入ってきた。


「…ヒィッ!!…んぁっあぁっ!!…」


背中を仰け反らせた彩葉の両胸を揉みしだきながら、柾人は耳元で囁く。


「…傅く俺に…愛を教えて…。愛される…悦びを…。何度でも。」


そうして二人は共に、絶頂へ。


柾人の手が、彩葉の顔を自分へ向けさせる。


そして念入りに口腔内を舌で舐る。


唾液が混じり合う水音が、ぴちゃぴちゃと響いて二人を包む。


「…もう…離れない。」


「…嬉しい…」


彩葉の言葉に柾人は微笑み、そしてまた彩葉も微笑んで、唇を重ねた。

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