第39話 叶わぬ願い
柾人はゆるゆると彩葉の中で挿抜を繰り返しながら、彩葉の淫猥な姿を見下ろす。
きっと、これ程までに淫靡な姿は柾人しか知らない。
もっと、こうやって彩葉を優しく抱けば良かった。
今更、心の底から思う。
愛しいと思う相手を抱く事の快楽も、相手も知ろうとして抱く事も、これから先は、もう二度と無いのだ。
そう思えば思う程、彩葉を抱いているこの時間がずっと続けば良いと思う。
もう口にする事も憚られる、彩葉への恋情。
この仮初の時間が終われば、優しく労わるように触れる事すら出来なくなる。
軋むように、胸が締め付けられた。
せめて、今だけ。
自分にだけ、笑顔を見せて欲しい。
誰にも見せてない笑顔が見たい。
そう言えない思いは、違う言葉で口から出た。
「…気持ち良い…?」
緩やかな挿抜で、息を乱しながらも彩葉は柾人を見た。
そして言った。
「…気持ち良い…」
小さく微笑みながら。
柾人はその笑顔を脳裏に焼き付けたいと、顔を背け、瞼をギュッと閉じた。
無意識か、人肌恋しさか、彩葉の腕が柾人の首に回る。
もう、気の所為でも何でも良かった。
彩葉の事が堪らなく可愛くて、愛おしいと感じた。
やっと笑ってくれた。
そして彩葉が自ら自分に抱きついてきた。
それだけが今の柾人には全てだ。
もうこれでいい。
柾人は彩葉を抱き返しながら思った。
幼少期より自らが望んだ、
だけど。
今、強く願った想いは叶えられた。
彩葉が自分に向けて微笑んだ。
だから、もういい。
手を離してやろう。そう思った。
柾人は彩葉のこめかみに、唇を寄せてキスをする。そして自分の昂りを解放する為に、挿抜を繰り返す。
これで最後だと思いながら。
胸を締め付ける切なさは見ない振りをして、柾人は彩葉の中で果てた。
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