第37話 不貞腐れ
彩葉の舌が、欲望に形取った陰茎を這う。
柔らかい口腔内に包まれたことで、柾人の昂りは、更に硬さを増していく。
今日はひたすら、彩葉の情欲を昂らせたいと思っていた。
そしてその間だけでも、彩葉が柾人を感じてくれると良い。そう思っていた。
だから彩葉に、柾人への口淫はさせるつもりがなかった。
しかしいつもさせていたにも関わらず、尋常ではないくらい、柾人は興奮した。
彩葉は足の間に収まり、四つん這いで頭を屈めて柾人を追い上げる。
思い出す口技を駆使し、夢中になる。
無意識か、柾人を追い上げながらも時折腰が揺れる。
柾人は彩葉を抑えようとしていた、肩に置いた手を背中に滑らそうと動かす。
その時、彩葉が柾人の昂りを離し、柾人の手を捕まえた。
「…ダメです…。…今は…私だけで…」
柾人の手は、彩葉の手が指を絡み優しく捕まえられた。
「…触りてぇ…」
困ったような顔を見せる柾人の言葉を聞かず、彩葉は再び屹立したモノに唇を寄せた。
「…んくっ…」
次第に荒くなる息遣いも、僅かに漏れ出る色を帯びた声も、彩葉を止める手段にはなり得ない。
むしろ加速させた。
「…もう…いい…っ」
彩葉がもたらす快感に、ひたすら耐えている柾人の声に焦りが滲んでいた。
それを表すかのように、屹立する柾人のモノは尖端から欲望の滴を垂れ流す。
不意に、彩葉が口の力を弛め、先端を舌で舐めた。
そして見上げた彩葉の視線と、柾人の視線が絡まった。
「…くっ…!!…クソッ…あ…っ」
悔しそうに呻き、その瞬間、柾人から勢いよく白濁の飛沫が吐精された。
それは、僅かに口を離していた彩葉の舌や頬を汚した。
「…あぁ…っ」
柾人の身体がブルリと身震い、彩葉と繋いだ手にも力が入った。
そして荒い息を少し落ち着かせると、柾人はそっと彩葉の手を離した。
そして目にしたのは、頬や口の端を白濁の飛沫で汚した彩葉の姿だ。
彩葉は、それを中指ですくい取り、舌先で舐めた。
恐ろしく妖艶な姿に、柾人はゴクリと喉を鳴らす。
そして改めて彩葉を見ると、少し嬉しそうな顔をしていた。
その嬉しそうな顔を見た時、柾人は自分の耳に熱が集まっていくのを自覚した。
きっと彩葉も気付いた筈だ。
いつもにも増して、柾人が逝くのが早かった事に。
思わぬ失態だ。
柾人は小さく息を吐き、胡座をかいて膝に肘を着き、その手で口元を隠すように顎を置いた。
確かに早く逝ってしまったが、こんな時に嬉しそうな顔をしなくても良いのでは無いか?
少し不貞腐れたような感情を持て余し、視線を彩葉から外した。
その様子に、彩葉はおずおずと近寄り、柾人の顔を覗き込もうとした。
「…何?」
「…いえ…、あの…耳…真っ赤…」
からかっているのか、彩葉は小さく笑った。
その様子に、柾人は更にやるせない、不貞腐れた気分になる。
「…からかうなよ…」
彩葉から視線を逃したまま、柾人は不貞腐れた口調で小さく呟く。
「…いえ…からかってる訳じゃ…」
そう言いながら、彩葉の指先が耳に触れた。
「…じゃあ、何?」
そこまでされて、柾人は彩葉に視線を戻す。
やはり嬉しそうに笑っている彩葉がいた。
「…違うんです。…嬉しい…と思って…」
「…早く逝ったのが?」
反対の手で、柾人は彩葉の頬を触る。
少し赤い頬。そして笑顔。
笑顔の彩葉を見たかったが、こんな時に見るようになるとは。
そうは思ったが、それでも彩葉の笑顔に絆された。
「違いますっ。…私だけで…頑張って…逝ってもらえたのが…」
そう言うと彩葉は赤面し、俯いてしまう。
そんな風に言われ思い出してみれば、確かにそうだった。
いつもなら、彩葉が柾人に奉仕する時は、柾人は『物足りない』と言って、必ず彩葉の敏感な箇所に触れていた。
今日は彩葉に阻止され、彩葉に触れること無く、口淫と彩葉の痴態で逝った。
それが、今日は自分が頑張って柾人を逝かせた。それが嬉しいと彩葉は言う。
柾人を悦ばせようと頑張ったと言われ、まんまとその言葉の通りに悦んでしまった訳だ。
両手を着いて正面に座る彩葉に、柾人は身をかがめてキスをする。
「…んっ」
少しの間彩葉の舌を可愛がり、そして離した。
「…マズ…」
つい先程、自分の放った飛沫が彩葉の口腔内を汚した後だ。
少し顔を顰め、柾人は彩葉を引き寄せた。
「…入れたかったのに…、お前が逝かせるから…」
そう言うと、柾人は彩葉の手を取り、今は力を無くした己の陰茎に触れさせ、囁いた。
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