第23話 激情
柾人に二の腕を掴まれたまま、彩葉は引き摺られるかのように会場を後にした。
柾人は彩葉を連れたままホテルの宿泊カウンターまで来ると、今から使える空室があるか確認をする。
「本日は当ホテルご利用のイベント行事参加の方のご宿泊でほぼ満室でして、スタンダードが只今一室、準備中でお待ちいただくようになります。…あとは…、セミスイートのご利用でございましたら、一室ご準備させて頂けますが…」
「…構わない。セミスイートを案内してくれ」
柾人の依頼に受付の職員は一礼し、直ぐに手配される。
彩葉は、状況が分からないながらも、この場で取り乱す事も柾人に恥をかかせてしまうと成り行きを見守る。
案内され、エレベーターに乗った時点で柾人に声を掛けようと顔を上げたが、「後にしろ」と先に発言を封じられた。
そうして、やや強引に室内に連れ込まれた。
室内に入ると、二人はそのままベッドルームへ直行する。
柾人は強引に、彩葉をベッドへ投げ飛ばすかのようにすると、勢いに負け、彩葉はベッドの上に仰向けに倒れ込んだ。
その上に、柾人は跨ぐようにして彩葉の上に乗った。
「…随分と
柾人の言葉に彩葉は驚く。
とんでもない勘違いをされていると彩葉は焦った。
「違いますっ!!…そんな事してません!!」
「…
彩葉の言葉を、苛立ちを隠すことも無く
「…随分と親しそうだと思ったら、元彼か。…そう言えば、一度きり…、寝た事があったと言っていたな?」
以前、彩葉は柾人に経験について尋ねられた時、そのように答えたことがあった。
しかし今の話となんの関係があるのか。
彩葉は疑問に思ったが、それは直ぐに答えが出された。
「…あの男と、…もう一度寝てみようとでも思ったか?」
柾人の言葉に、彩葉はクラクラと目の前が暗くなる様な感覚に陥った。
そんな事、一欠片たりとも考えたことは無い。
ただひたすら、目の前の柾人が好きなのに。
嫌われようとも、あの夏。
出会った時の笑顔が忘れられない。
あれからだって。
時折見せる優しさや、仕事に対しての真摯な姿勢、日々の中で柾人は彩葉を惹き付けてやまない。
だけどきっと。
きっと、柾人は彩葉の『浅はかさ』に気付いているのだろう。
だからこんな疑いを持つのだ。
持たれても仕方ないのだ。
そう思うと、彩葉は次の言葉を発する事も出来なかった。
「…なるほど…?…まぁ、…お前…欲求不満だもんな。…俺がそう仕向けていた所もあるからな」
なのに柾人は彩葉が黙った事を誤解したまま、更に誤解を深めていく。
「…とはいえ、目の前で男漁りとは…不愉快だ。」
彩葉には、最早どう答えて良いかも分からなかった。
◇◇◇◇◇◇
彩葉が否定しない事に、柾人は更に苛立った。
彩葉があの男の誘いを断ろうとしていた事は、目の前で見ていた様子で分かっていた。
それでも。
あの男が彩葉に触れていた事が苛立った。
そして不用意に触れさせる彩葉にも苛立った。
柾人は少し身体を起こしていた彩葉の左肩を押して、勢いよくベッドへ押し倒す。
その反動で、彩葉の身体が左向きに倒れた。
自分がそうした。
それでも、左に背けられた顔は、まるで柾人を拒否しているかのように見えた。
その首元に、柾人の贈ったネックレスが見えた。
そのネックレスが飾られた細い首に、あの男は触れたのかもしれない。
柾人の組み敷いた細い身体も、あの男が最初に
柾人はそのネックレスに手をかけ、力任せに引っ張った。
「…痛っ…!」
華奢なネックレスは、柾人の力で呆気なく千切れる。
驚いた彩葉は痛みを訴えながら、柾人が千切ったネックレスがある征人の手を見た。
柾人が握り締めた拳が少し緩められる。すると引き千切ったネックレスに使用されていた真珠がパラパラとベッドに落ちていく。
勢いよく千切られた拍子に、真珠を止めていた糸が切れ、その糸を伝って落ちていく。
「…あ…」
大事にしたいと思っていたネックレスが壊れてしまった。
首についた傷よりも、その事が痛かった。
「…だから…望めば逝かせてやると言っただろう…?…なのに、他に手を伸ばすとは…。」
最早これは八つ当たりだ。
柾人にもそれは分かった。
自分の感情が制御出来ない。
自分の中で渦巻く、煮え滾るようなどす黒い感情はなんなのか。
自分に何をさせたいのか。
自分自身の事なのに分からない。
そしてどうしようもなく、渇望している。
何を欲しているかも分からないまま。
これは肉欲か、それともプライドか。
「…満足させてやるよ、…本気でな。…せいぜいよがり狂え…」
柾人は彩葉の服に手をかけた。
◇◇◇◇◇◇◇
まるで獣の交尾だ。
最早言葉など忘れたかのように、彩葉は強制的に声を上げ続けた。
部屋に響き渡るのは、柾人の荒い息遣いと彩葉の嬌声。
そして交じり合う音だ。
快感が責め苦になるとは、彩葉はこの日初めて知った。
泣いても喚いても、止まることの無い絶頂が繰り返される。
柾人が達しても、指や舌で責め苦は続けられる。
そして何度も逝かされ、また怒張した柾人のものが挿入される。
言葉を取り繕うゆとりも無い。
「…もう…やだぁ…。逝くの…、逝くのやぁ〜!!」
泣きながら訴えても、柾人の動きは止まらない。
「…ヤダ、ヤダ…っ!!…ああぁっ!!逝く、イク…イク…いくぅぅぅッッ!!!!」
彩葉が激しく逝くと、柾人は彩葉の蜜壷を掻き回していた己を引きずり出し、体位を変えて後ろから再度挿入した。
「…くぅ…はぁっ!!…やらぁ…もう…」
彩葉は既に身体を自分で保てず、枕に顔を押し付けながら首を振る。
柾人に強制的に持ち上げられた腰は、まるで入れて欲しいと臀部を高く上げているかのようでもあった。
柾人はグズグズになっていく彩葉に満足しながら、それでも尚貪り尽くす。
嫌だと言いながら、途中で挿抜のスピードを緩め、浅く責めると彩葉の小さな腰が柾人の動きとは別に揺れた。
「…嫌なのか…?…もう逝くのは嫌だと言ったな?」
既に快感のみしか追うことの出来ない彩葉は、柾人に抵抗出来ない。
「…やぁ、逝きたい!!逝きたいぃっ!!」
「…じゃあ、そう言っとけよ」
そう言って、柾人は再び激しく彩葉に腰を打付ける。
すると彩葉は直ぐに絶頂を迎える。
「…もう、逝った!!逝ったぁっ!!…あああっ!!また逝く!!…っくぅっ…」
膝立ちになり、顔を枕に埋めた彩葉は強烈な快感を少しでも耐え抜く為か、膝下の足を浮かせ、爪先までピンと伸ばし力を入れた。絶頂を迎え、全身に力がこもりピクピクとしている。
そんな彩葉の両膝に腕を入れ、柾人はそのまま彩葉を抱えた。
「…っ!!く…はぁっ!!ああぁ!!」
柾人の胸に背中を預けるようにして抱えられた彩葉は、叫ぶように声を上げた。
柾人のモノが抜かれないまま抱えられ、自分の体重のせいでより深く、柾人の大きな昂りが入ってきた。
膝裏に差し込まれた柾人の腕は上に伸び、彩葉の胸の膨らみを大きな両手が覆った。
両方の胸の先を、器用に柾人の指が繰り返し擦りながら、ゆさゆさと身体を揺さぶられる。
先程よりも激しさはなかったが、最早どんな刺激だろうと彩葉には強烈なものになった。
柾人の舌が耳に差し込まれる。
ぴちゃぴちゃと水音が内耳を伝って響く。
「…はぁ、はぁっ!!あっ…いっ…逝くっ!!」
「…何回、勝手に逝ってるんだか。辛いなら少しは耐えろ。」
無慈悲にも柾人はそう言い捨てる。
「…無理ぃ…無理っ…、いやぁっ!!…もうぉ…やぁ…、逝ってる!!逝くの…止まんないぃっ!!」
そう言って、背中を仰け反り小さな臀部を柾人に擦り付けるようにして彩葉はイキ続ける。
そうしていると、柾人は彩葉を手放す。
力の入らない彩葉は、ベッドマットの上に足を広げたまま倒れ込んだ。
僅かに浮いた腰が、痙攣するかのようにビクビクと揺れ動く。
それでも尚、柾人は彩葉の腰を持ち上げ、もう一度挿入した。
「ひぃっ!!…やぁ!!…ああぁっ!!」
もうどれ程逝き続けたのかすら分からないまま、彩葉は咽び泣く。
背中を舐めあげられ、脇腹を撫で下ろされると身体が跳ねた。
うなじに唇を寄せられ、強く吸い上げられる。
柾人の速度が上がった。
ようやく柾人も逝ってくれる。
既に彩葉は朦朧としていた。
視界は滲んで、ハッキリしない。
不意に柾人がうなじを力強く噛み付いた。
強く、強く噛み締められ、彩葉は痛みと快感が混濁したまま逝き、意識を飛ばした。
「…お前が…笑わないから…」
何か、小さく呟かれた気がしたが、彩葉にはもう分からなかった。
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