第13話 情交

『戯れ』と言いながら触れ合う。


『処女ではない』と言った秘書の小さな口に舌を忍び込ませると、おずおずと躊躇いがちに絡まってくる。


随分と拙い舌の動きに、柾人は逆に煽られた。


捕らえていた顎に添わせていた手を、首筋や耳に持っていく。


薄目を開けて様子を見れば、彩葉は目を閉じ、顔を赤くしてキスを返してくる。


この様子だと、初めてでは無いが、慣れている訳でもないようだ。


耳に触れていた手と逆の手が、彩葉の身に着けたスカートをたくし上げ、ストッキング越しの臀部を撫でる。


キスを続けながら、彩葉がビクッと身体を揺らす。


それでも、キスを中断することは無かった。


舌を絡ませ、舌先を吸われる。唇を甘噛みされ、舐められる。舌先が歯列を辿り、また絡んだかと思えば、今度は上顎を責められる。


「...ふぁっ...っ」


他人に触れられた事すら無い箇所を舌先で舐められ、困惑する間もなく、未知なる快楽を教え込まれる。


続け様に繰り返される口付けに、彩葉は息を短く吐き出す。


キスを繰り返しながら、臀部を揉む。もう一方の手は、気付けばボタンを全て外され丸見えになったブラジャーの上から胸を揉んでいた。


「...まだ今からだぞ...。秘書殿は思った以上に手馴れてないようだ...」


彩葉の慣れない様子に満足気な柾人は、微笑みながら言う。


それに対し、彩葉はいつの間にかブラウスのボタンを外され、更には胸に触れられている事に驚く。


柾人の大きな手が、自分の胸を下着越しに触れている。


驚く彩葉を尻目に、柾人は次なる手として首筋に唇を寄せた。

舌で舐め上げ、耳朶の下を軽く吸い上げる。少し位置を変え、また同じように舐めては吸う。


そして反対の手は、まるでストッキングの感触を楽しむかのように、柔らかな太腿から。丸みを帯びた臀部を撫でつけてた。

その大きな手は、やがてストッキングの中にゆっくりと入ってくる。


そしてストッキングが途中まで下ろされると、柾人は彩葉の体勢を変え、自分の太腿の上に彩葉を座らせた。


「...脱がすぞ...」


後ろから耳の裏を舐められ、そしてそこに唇を当てたまま囁かれた。


「...ひゃっ...あっ!!」


囁きは、まるで肌から骨へ。そして直接脳へ、直接響くような錯覚を起こし、それが快楽へと繋がった。


ストッキングの中に柾人の手が入り、足のラインを確かめる様に、ストッキングごと下に降りていく。


「足を上げろ」


ゾクゾクと背中に感じる。少し低い、熱を帯びた声。


逆らう事など許されない。まるで侵食するかのように、思考を奪われる。そして無抵抗に、従順になっていく。


彩葉は導かれるまま、身体を柾人の身体に預け、足先を太腿に乗せる。


すると、柾人の手は滑り落ちるかのように、下へ下へと落ちていく。

柾人の手が彩葉の足首に触れ、その手は、肌の直接の感触を楽しむかのように戻ってくる。


もう片方も同じように脱がされ、音もなくストッキングは床に落ちた。


後ろから、首筋、うなじに繰り返されるキスに、まだ未熟な彩葉の身体はビクビクと揺れる。


そして背後からまろみを帯びた乳房が、柾人の大きな手で包まれた。


ブラジャーの上から揉まれた乳房は、中にするりと入ってきた手によって、外に出される。


「...あっ...」


まだ身に着けたままのブラジャーが、彩葉の乳房を強調するかのように寄せて見せた。

そしてそれを、柾人が両手で揉みしだいている。


視界にその様子が入ると、より一層の羞恥を覚えた。


「...あ...、は...恥ずかしい...です...」


首元まで真っ赤にした彩葉の様子に、そこに触れている柾人の唇が笑うように動いた。


「...恥ずかしがってろ。こんなもんで済ます気は無いがな。」


そう言うと柾人は顔を上げ、覆い被さるようにして再度唇を奪った。


そして両手は、彩葉の胸の頂きに触れる。


掠るように先端に触れられると、キスをしながらも、くぐもった声が零れる。


繰り返し、繰り返し。

敏感になっていく先端を擦られ、キスが続けられる。


そうして唇が離れた時には、彩葉の目は潤みきっていた。

濡れた唇は誘うように薄く開き、そこから震える吐息が幾度となく出る。


「...随分とその気になってもらえたようだ。...ベッドへ行こう。」


柾人は彩葉の肩を抱き、立ち上がらせた。


すると、腰にあったたくし上げられたスカートが、ストンッと足元に落ちた。


「...え...?」


気が付けば、タイトスカートのフォックは外され、ファスナーも下ろされていたようだ。


そしてブラジャーも、後ろのフォックが外されて、最早肩にぶら下がっているだけだった。


あられも無い格好に彩葉は動揺し、スカートに手を伸ばそうとした。


しかし柾人に肩を抱かれ、引き寄せられた。

その拍子にスカートが足元で縺れ、柾人の身体にぶつかる様に身を寄せた。


「...あ、スカート...」


「...必要無いだろ」


転けそうになった彩葉だったが、スカートを上げようと手を伸ばす。

それを阻止するかのように、柾人は彩葉の腰を抱き、ヒョイッと持ち上げた。


そして、スカートの輪から抜け出した彩葉を下ろした。


腰を抱いたまま、柾人は彩葉を連れて動き出す。

引き寄せられた彩葉は、柾人にしがみつく様にしながら、やや強引に動き出される。


「...あ、あの...シャワーとか...」


「...必要ない。もう...黙れ...」


寝室前でそう言い出した彩葉に、黙らせるためなのか、柾人はまたしてもキスを仕掛けた。


舌を絡ませながら、そのまま寝室へ入っていく。


ベットサイドの照明が点いている。

柾人が入浴後、衣服を身に着ける為に入った時にでも付けていたのか。


薄明かりが、寝室を照らしている。


寝室内に入ると、逃がさないとばかりにキスをしながら、柾人は彩葉を抱き上げた。

そしてベッドへそのまま上がると、彩葉はそこに降ろされた。


やっと離れた時、彩葉はベッドに押し倒される。


「...あの...社長...。私...1人だけ...こんな格好...」


まだ服が乱れてもいない柾人に、彩葉は躊躇いながらも言う。


「...焦るなよ。今、脱ぐ。」


彩葉に跨りながら、柾人はセーターを脱いだ。

手荒に投げられたセーターが床に落ちたが、気にもならなかった。


引き締まった身体を目にした彩葉は、また違った意味で恥ずかしさを味わった。


思わず両手で顔を覆い、彩葉は自分の視界を遮ったが、その手は柾人の手で阻止された。


「...見たかったんだろ?」


「...そんな意味で...言ったんじゃ...」


焦る彩葉に、柾人は「クッ」と笑う。


そして改めて、熱を帯びた瞳で彩葉を見つめた。


欲情したその瞳で彩葉を見つめ、そして言った。


「...抱くぞ」


「...はい。...抱いて...下さい」


もう何度目か分からない口付けを、彩葉は受け入れた。

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