第7話 生涯の契り

リャーミャと諒が再会して、二週間と少しが経った頃。

諒の体調は、悪くなっていく一方であった。

最後までいつも通りがいい、と言う諒の希望に合わせて、毎日を過ごしていく。

「おはよう、諒」

「おはよう、、リャーミャ」

もうほとんど起き上がることのできない諒と、居間で二人で話すのがリャーミャの日課になっていた。

そろそろ話の話題も似通ってきた。

これまでのことをお互いに思い出していると、リャーミャが顔を上げる。

「そうだ!諒、私の紙!最初に渡した!あれ、なんて書いてあった?聞くの全然忘れてた」

「……えぇっ、と」

「?」

諒の動きに眉をひそめるリャーミャ。

目を左、下、上、と動かす。

それは、諒が嘘をつくときの癖である。

「嘘、つかないで」

ぴしゃりとリャーミャが告げると、観念したように諒が話し始めた。

「あれに書かれていたのは、前会った時にリャーミャが言ってた、エルフの、『生涯の契り』についてだったんだ。口頭ではそんなに詳しく教えてもらってなかったんじゃないか?」

--生涯の契り、っていうのはお互いを愛し合い、その生涯が続くまで、共に過ごす覚悟がある二人が結ぶものなんだ。結ぶ時の条件は、互いに心から愛し合い、それを口に出すこと。そして、口づけをすること。

そこまで続けた諒は、一旦息を吸うと、真剣な瞳でリャーミャに向き合った。

「ここからが、大切なんだ。生涯の契りを交わした者は」


「人間の寿命に合わせて死ぬ」


「え……?」

「生涯を共に過ごすって、死ぬ時も一緒って意味だったんだ」

理解が追いつかないリャーミャを他所に、諒は覚悟をした目で、続ける。

「俺はもう、長く、ない、から」

「諒?」

「ごめんね、リャー、ミャ」

「諒!愛してる、愛してるから、諒も愛してるって言って!!諒がいないなら、生きてても意味がない!お願い!」

「……手紙、読ん、でね」

「諒!……諒?諒?嘘、待って、逝かないで。私も一緒に、連れてって」

部屋に残ったのは、リャーミャの鳴き声だけになった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る