第6話 最後の夏
再会に高鳴っていた胸が、ヒヤリと鎮まった。
「っ、……」
「諒?」
異変に気づいたリャーミャが、目線を合わせてくる。
覚悟を決めて、言葉を口にした。
「リャーミャ。俺、一緒に遊べないんだ」
「どういうこと?」
眉をひそめるリャーミャの眼を、今度はまっすぐと見つめる。
「俺、病気なんだ」
「……え?」
「もう、助からない、ってむこうで言われて。じゃあってことで、思い出の場所とか、巡ってたんだ」
「ちょっと待って、ちょっと待って!助からないって、そんな、嘘……!」
一息で言い切った諒の言葉に、被せるようにしてリャーミャは首を振る。
信じられない、という様子で、受け入れられないリャーミャとは対照的に、落ち着いている諒。
それがさらにリャーミャを混乱させた。
「嘘じゃない。俺は、もうすぐ死ぬ。だから、ごめん。怪我しそうなことは、できるだけやれないんだ」
「…………分かった」
自分の中で、受け止めきれない感情を飲みくだしたリャーミャ。
それを見て、いまさら握っていた手が冷たくなっていたのに気づく。
再び、二人の間に静寂が訪れた。
「……諒は、いつまでここにいるの?」
握っていた手を緩めながら考えを巡らせていると、先に静寂を破ったのはリャーミャだった。
「……死ぬまで。死ぬまで、ここに居たい。他のとこは大方行ったし。それに、」
少し考えて、やっぱりそうだな、と思って口に出す。
あの頃、はっきりと認識していなかった気持ちが、今になって浮き彫りになってきた。
きっとあの時話せていたら、似たようなことを口にしたんだろう。
「最後は、リャーミャと過ごしたい」
「……!!」
悲しそうな目をして諒を見ていたリャーミャの耳が、ゆっくりと朱色に染まった。
喉を鳴らして、リャーミャが言う。
「私も……!私も、もし叶うのなら、諒の最後を一緒に過ごしたい」
一旦、諒とリャーミャは分かれ、荷物をまとめて、諒の祖母の家へ行くことになった。
「リャーミャ、その紙何?」
「あ、これ?私、諒たちの文字読めなくて。諒のおばあちゃん家に着いたら、読んでもらおうかと思って持ってきたの」
「ふーん」
そんなことを話しながら家に着くと、ちょうど正午を回ったところだった。
「なんか、お腹空いてきたね」
「だね。……昼にしよう。どうしよっかなぁ」
「私に任せて!諒、怪我しちゃダメなんでしょ?」
「……いいの?」
「もちろん!」
そう言いながら、もう台所に向かっているリャーミャを見送って、居間に座る。
(ん、そうだ。今のうちにリャーミャの紙、読んでおくか)
「リャーミャ!紙、読んどくね」
「はーい!ありがとー!」
紙を手に取って、記されたことに目を通していく。
(……!これは、自惚れてるかもだけど、黙っておこう)
ゆっくりと紙を閉じた。
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