第3話 夏の思い出

白いワンピースに身を包む目の前の少女は、同い年くらいに見える。

溢れそうなほど大きく開いた目は、綺麗なアーモンド型。高く通った鼻に、形のいい唇。

可憐、という言葉が似合う、美しい少女だ。

(だ、)

「「だれ……?」」

(うわぁ、すっげえ可愛い……)

「えっ、と……」

「……あ、俺は諒!よろしく!……君は?」

「……私は、リャーミャ」

少し不安そうに目を合わせてくるリャーミャに、できるだけ明るい声で話す。

「リャーミャ、はこの辺に住んでるの?」

「えっと、そう、だね。うん。この辺に住んでる」

「そっかぁ!」

心なしか声が弾む。

見るのは初めてだが、引っ越してきたのだろうか。

なんにせよ、遊び相手が見つかった。

ドキドキが収まらないまま、話し続ける。

「なぁなぁ!リャーミャはこの後なんかある?」

「……?ない、けど」

「!じゃあさ!一緒に遊ぼうぜ!」

リャーミャにぐっと近づく。

だが、諒の勢いとは裏腹に、リャーミャは少し迷うように口をつぐんでしまう。

それをじっと、はやる気持ちで見つめる。

「……うん、遊ぼう!」

「まじで!?おっしゃぁ!」

何か吹っ切れたように見える彼女は、キラキラと輝く瞳で笑う。

「じゃあさ、リャーミャはやりたい遊び、なんかある?」

「そう、だなぁ。私、あんまり人と遊んだことがなくて……」

「え!?そうなの!?じゃあ俺がやりたいやつでいい?」

「うん!それがいい!」

(そうだなぁ、何がいいかなー)

考えながら辺りを見渡すと、あることを思い出す。

「なぁ!魚の掴みどり、やんない?」

「掴み、どり?」

不思議そうにしながらも、リャーミャの目からは好奇心が見え隠れしている。

「そう!前母ちゃん達と来た時やってさ、めっちゃ楽しかったんだよー」

「……私やったことないから、やってみたい。教えてくれる?」

「おう!もちろん!」


「きゃあっ!っ、あっははは!全然掴めなーい!」

「惜しい惜しい!俺は…、ちょっ!あれ?おっかしいなぁ、うおっ!」

「!?……ふふっ、大丈夫?」

「……ありがと」

足を滑らせた諒に、リャーミャは楽しそうに手を伸ばしてくれる。

それは、最初の印象とはかけ離れていて。

なんだかまっすぐ目を見られなくなって、諒はそっぽを向いてしまう。

(あっちぃー)

「そ、そろそろ帰るかー」

赤く染まってきた空に誤魔化すように呟く。

木の影も、段々とこちらに近づいてきた。

「うん…」

さっきの様子とは打って変わって、悲しそうに目を伏せる彼女に、にっ、と笑いかける。

「また、明日も遊ぼうぜ!」

「…!うん!」

彼女は勢いよく顔を上げると、向日葵の花が咲くように笑った。


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