28 不登校
五城が学校に来ない。
でもみんな、彼女が学校に来ないのはどうでもいいようで、話題にすらしない。
だけど、少し関わりのあった俺らは違う。
「五城さん、学校に来ないな」
「LINEで明日から学校行かないって言っていましたよ」
「まじか……」
かれこれ、五城が学校に来なくなってから、三日は経っている。
今までは毎日のように来てたのに。
寂しげな五城の席も今では他のクラスメイト達がお喋りする場として使用されている。
――授業が終わると、俺と玲愛は昼飯を食べに屋上へ。
あーんも当たり前になり、恋人繋ぎも当たり前になり、キスまでも当たり前になった俺ら。
今日もいつも通り、あーんをしてあげる。嬉しそうに、幸せそうに食べる彼女だが、このお弁当を作ったのは紛れもない彼女だ。だから、感謝するのは俺の方。
「いつもありがとうな」
「いえいえ。私のほうこそ」
「たまには俺が弁当作ろうか?」
「家事スキルゼロじゃありませんでしたっけ?」
「そうだけど……でもたまには……」
「ダメです。カナメくんは料理しちゃいけません! カナメくんがお弁当なんて作ると、この世界が呪われます!」
「そんなズタズタに言わなくてもいいだろ。立ち直れねぇ……」
「すみませんでした。カナメくんに料理してほしくなくてつい……」
不意に五城の様子が気になった。
「いま五城どうしてるか、LINEしてくれないか?」
「何ですか。私より五城さんのほうが大事なんですか?」
デリカシーの無い質問だと俺も思った。でも、気になってしまった。
「違うけど、一応聞いてほしい」
「分かりました」
――数分後。
「大学受験するようです」
「は?」
いやいや、待って。
高校卒業せずに大学行くとか、わけが分からない。五城は何を考えている?
「大学行ったら、絶対人気者になって、モテて最高の彼氏ゲットする! 、だそうです」
「うーん。『学校来て元気な五城さんが見たい』と二階堂が言っている、とメッセージ送ってくれ」
「嫌です、だそうです」
「絶対メッセ送ってないだろ」
「バレました?」
ニヤニヤと笑う玲愛。
「――でも、カナメくん的には好都合なんじゃありませんか?」
「何でだ?」
「嫌いな五城さんが不登校になって、清々すると思いまして」
「うーん。でも五城さんが学校来なくなったのって俺のせいだし」
「カナメくんのせいではありません。自然な流れです」
「でも……」
何だかモヤモヤした。
一応、謝罪も受け取ったし、告白の件はひとまず解決した。
だけど、クラスメイトがひとり欠ける、というのは良い気がしない。
五城の問題だし、これ以上介入するのは辞めた。
弁当箱の蓋を閉める。
刹那、玲愛にキスされる。
「これからは私のこと以外、考えるのはやめて下さい」
「ああ、ごめん」
「五城さんは大学受験の勉強で忙しいそうです」
「そこがちっとも分からないんだよなー」
この高校を辞めるのかも分からないし、高校の授業受けずに大学レベルの問題が解けるのかも謎だし。
やっぱり女子の考えてることって分からない。
「いま、五城さんのこと、考えていませんでした?」
「考えてねーけど?」
「ふーん」
そして、玲愛が怖い。
***
一方、その頃の五城はというと。
「大学受験なんて、今からするわけないじゃん。これ以外の言い訳が見つからなかったんだって」
そう言い、毛布を頭まで被ってゴロゴロしていた。
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