27 モヤモヤする 悠希Side


 二階堂が水泳の全国大会で優勝したらしい。そして、それにより彼は人気者になってしまった。


「はぁ」


 そして、一連の出来事が原因で私はモテなくなった。


 別に彼を責めたいわけではないし、彼のせいにしたいわけでも無い。

 教室がざわついていた時だって、本当は二階堂のほうに行きたかった。でも一度、二階堂を振った身だ。だから、おこがましいかと思って近づけなかった。


 だけど、思わない?

 自分より下だった人が急に手が届かないくらい上にいったら、モヤモヤしない?


 それに彼には佐渡玲愛という彼女がいる。だから、ウザい告白をされる心配も無い。


 羨ましい。


 二階堂には彼女がいて、付き合えないから離れるっていう女子もいなかった。例えるなら、いまの二階堂は学園のアイドルだ。アイドルだったら、付き合えなくても推し続ける人は沢山いる。それと似たようなものだ。男女問わずに人気で、廊下を歩けば黄色い歓声が上がる。


 ――私は二階堂に対して、もう怒りや嫉妬は抱いていない。


 ただ、現実を受け入れられないだけ。


 玲愛ちゃん、という凄い彼女が出来た時も驚いたのに、今回の件は驚き過ぎて言葉が出ない。


 玲愛ちゃんにLINEを送る。


『調子どう?』


 するとすぐに返信が返ってきた。


『私は良いですけど、五城さんは?』

『調子良すぎだけど、明日から学校休む』

『矛盾してません? モテなくなったからですか?』

『うるさいわね! みんなから嫌われたんだから、仕方ないでしょ』

『話、飛躍し過ぎです。みんな貴女のこと、嫌っていません』


 ……。


『もう、寝るね! おやすみ!』


 画面の向こうで玲愛は(五城さんって都合が悪くなるとすぐ逃げるんだから……)と密かに思っていた。


『おやすみなさい』


 その玲愛の返事には、朝になるまで既読はつかなかった。


「はぁ」


 何度目かの溜め息。


 私はまた冷蔵庫からプリンを取り出し、食べる。


 二階堂をこれ以上見てらんない。眩しすぎて。


 玲愛ちゃんが羨ましすぎて、彼女にも気安く近づけない。


 私の居場所が無くなってしまった。


 転校しよっかな……。


 小学生の頃、いじめられてたから、当たり前のような逃げ癖がついてしまった。


 すぐ逃げるし、すぐ嘘つくし、二面性もある自分が嫌いだ。大嫌いだ。


 それに比べて、二階堂の性格は良すぎる。生まれ変わったら、二階堂になりたい。なんてね。


 そんな二階堂のことが私は――。


 ――好きになってしまった。


 もう遅いのは分かってる。おこがましいのも分かってる。

 玲愛ちゃんがいるから、付き合えないのも分かってる。


 だからこそ、二階堂を好きになってしまったから尚更、学校に行きたくなくなった。


 私、明日から学校休みます。

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