23 心情


 騙された。彼氏を作るのはそんな簡単じゃなかった。


 私はベッドの上でうずくまる。自然と目に涙が浮かぶ。


 傷ついた心では、今まで自分が受けてきた告白は全部嘘告だったのでは? と思ってしまう。

 でも二階堂だけは――表情から伝わる真剣さが確かに違った。今日の男子とは天地の差。


 二階堂の告白は遊びじゃなかった。

 本気の告白だった。それを私が無下にした。


 私が裏切ったから、神様が怒って天罰が下ったんだ。考えてみれば、最近嫌なことばかりだ。


「はぁー」


 少し大きめの溜め息を吐く。


 二階堂はこんな気持ちだったんだ……。


 今回の件で二階堂の気持ちが分かった気がする。ひとまず彼に謝ろう。


 大好きなサメのクッションに顔をうずめる。


 二階堂、案外好きかも。


 今日の男子が酷すぎて、そんなふうに思えてしまう。


 けど、彼に告白した所でもう遅いよね。私から断ったんだし。


 玲愛ちゃん、良いなぁ……。素敵な彼氏がいて。


 あんまり眠れなかったけど、朝陽と共に目は覚めた。



 ***


 放課後の昇降口。

 玲愛と一緒に靴を履き替えていると、突然後ろからやって来た五城に謝られた。


「二階堂くん、ごめんなさい!」


 深々と頭を下げられる謝罪。誠意は窺えるが、許す気は無い。それにこれだけだと、何に謝っているのか、分からない。恐らく、告白の件についてだろうが。


 五城は玲愛のいる前で本当は謝りたくなかった。でも俺と玲愛は常にくっついているので、仕方がなかった。実は二人きりになれる機会を伺っていたらしいが、見つからなかった。


「謝罪は確かに受け取りました。ですが、許す気はありません」

「それでもいいです。謝りたかっただけだから……」


 五城の態度の急変に少し頭を悩ませる俺。何か引っ掛ける。玲愛も首を傾げている。


「何か、あったんですか?」

「何も無いよ?」

「そうですか」


 俺と玲愛は構わず、歩き出す。

 それに五城もついてくる。


「私も……一緒に帰っちゃ、ダメかな?」

「いいですけど」


 そこからはずっと沈黙が続いていた。


「「「……」」」


「この無言と気まずさって、もしかして私のせい?」

「ええ」

「玲愛ちゃん、酷くない?」


 しばらく歩いて、五城はふと疑問に思う。このカップル、どこで帰り道別れるの? 、と。


「ねえ、いつになったら――」

「――カナメくんとはずっと一緒ですよ♪」


 後の言葉を聞かずに、五城が聞きたいことが分かってしまった玲愛はそう告げる。


「えっ、一緒に住んでるの?」

「「はい」」

「!?!?」


 五城は驚きのあまり、倒れた。


「五城さん、大丈夫ですか?」

「あんたらの方が頭大丈夫? 高校生で同棲とか早くない?」

「五城さんに私とカナメくんの愛を理解してもらおうとは思っていません」


 五城は目をぐるぐる回して――。


「やっぱ、あんたら無理! 理解出来ない!」


 足早に去っていくのだった。


「五城さん、そういえば彼氏は――」


「行っちゃった」


 あれから彼氏が出来たのか、聞きたかったのに。


「まあ謝って貰えたのは良い収穫だな」

「ですね」


 やっと、ちゃんと反省してもらえた。

 きっかけが不純だとしても。


「――一生恋人が出来ないのは、カナメくんじゃなくて、五城さんっぽいですけどね」

「人気者は大変だな」

「私、彼氏出来ましたよ?」

「玲愛は何というか……」

「何ですか?」


 そう問う玲愛の目が怖い。


 何というか……に続く言葉はいくら考えても見つからないのだった。

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