22 告白には裏がある


 五城はこれまで幾度となく、数多くの男子に告白されてきた。そして一度も告白を承認した試しは無い。


 今回も例外じゃない、筈だった――。



 彼女の恋愛願望はカナメと玲愛のキスを見たことにより、悪化した。カナメの告白を承認していれば、私も今頃キスし放題だったのかもしれない。そう思う。

 そして何より、ライバル意識のあった玲愛が先に彼氏を作っていることが、羨ましかった。


 ――恋したい。


 今の五城は完全に乙女だった。


 だからもう誰でもいいから、彼氏を作る。次に告白してきた男子をランダムで彼氏にする。そう決心した。



 放課後。

 やはりいつものように、男子から告白された。


「五城さん。俺、ずっと前から貴女のことが好きなんです。五城さんを好きな気持ちは誰にも負けません! どうか俺と付き合って下さい」

「いいですよ」

「へっ?」


 男子は素っ頓狂な声を上げる。何が起きたんだ、と言わんばかりに目を白黒させる。


「いま、なんて?」

「いいですよ、と言いました。勇気を出して、告白して下さり、ありがとうございます。さあ、私と是非付き合いましょ――」

「――五城さんと俺が付き合えるわけ、ねーだろ。釣り合ってねーし。まさかマジで告白OKされるとは思わなかったわ。ずっと振り続けてるんじゃなかったっけ?」

「えっ、なんで……?」


 五城は地面にくずおれる。

 ランダムだったのが、いけなかったのだろうか。これが裏切られた人の……気持ち……。折角、彼氏が出来ると思ったのに。


「じゃ、俺行くわ」

「待って!」


 男子は一度も振り返ることなく、彼女から遠ざかっていった。


 屋上にひとり取り残される。

 冷たい秋風がからかうように吹きつけた。



 数時間前。

 人のいない生徒会室で男子たちは盛り上がっていた。


「誰がコクる?」

「やっぱお前っしょ」

「えー、やだよ」


 誰が五城に告白するか話し合っていた。勿論、罰ゲーム告白――いわゆる嘘告――だ。告白を承認されるなんて微塵も思っていなくて、ゲーム感覚でダメ元で告白するというもの。


「ここは公平にじゃんけんで決めない?」

「「お、いいな」」


 そうして、告白するのは男子Aと決まった。


「じゃあ俺、五城さん探してくるわ」

「おけ。見つけたらLINEよろ」


 三人はハイタッチする。


 五城は簡単に見つかり、男子Aは彼女に声を掛ける。


「あの、屋上に来て頂けませんか?」

「はい」


 途端に五城のテンションは上がる。



 事前のLINEにて。


『告白ってどうすればいいんだ?』

『適当に好きです、付き合って下さいとでも言えば? これが定番っしょ』

『おけ』

『仮に告白が了承されても、付き合うなよ? お前がいじめられるだけだからな』

『分かってるよ。俺、五城さんのこと、好きじゃねーし』

『奇遇だな、俺も』

『ははっ』

『佐渡さんのほうが魅力的だもんな』

『馬鹿、お前。佐渡には彼氏がいる』

『じょーだん、じょーだん』


 こうして、軽いノリで男子Aは五城に告白した。


 そしてまさかの、OKを貰ってしまった。

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