18 悠希と玲愛
放課後、図書室に行くのが佐渡玲愛の日課だ。カナメは部活なので、ここにはいない。ちなみに彼は水泳部で部長を務めている。成績も優秀だ。
一方、玲愛は家庭科部だが、今日はお休み。なので、早い時間にここに来た。
今日は何故か人がちらほら居て、本を読んでいる生徒やいまこの瞬間、本を手に取った生徒や勉強をしている生徒。それから、机に突っ伏して寝ている……生徒っ!?
その後ろ姿はどこか見知った人物っぽかった。
「先客が居たようですね」
その人物は声に反応し、くるりと振り返ると、刹那めちゃくちゃ嫌そうな顔をした。
「玲愛ちゃん……」
玲愛は机に突っ伏して寝ていた生徒――五城悠希の隣に腰掛けた。
「あのさ、何でプリクラの写真なんか私に送ったの? もしかして送り間違い?」
「送り間違いではありません」
「じゃあ、なんで……?」
「嫌がらせです」
「ハッキリ言うのね」
はぁ、と大きく溜め息を吐く悠希。一方、玲愛の表情は珍しく無表情だった。
「五城さんは人を好きになったことってありますか?」
「いきなり何っ!?」
「質問に答えて下さい」
「無い。そもそも男子とかアホばっかりだし、興味ないし」
「――好きな人に告白するのって、凄く勇気がいることなんです。振るにしても、言葉を選ばなきゃダメですし、傷ついた心を更に傷つけたりしちゃダメなんです。適当に振る、は一番ダメです。人を好きになったこと無くても、これだけは覚えておいて下さい」
真剣な眼差しで玲愛は告げた。
悠希はコクリと頷く。
「あの写真見て何か思いませんでした?」
「うざい」
「他には?」
「羨ましいし、彼氏欲しくなった。二階堂を振ったことを少しだけ、その、後悔した」
「カナメくんはダメですよ? 私のものなので」
「だったら、玲愛ちゃん良い人、紹介してよ」
「良い人……って言ったらカナメくんしかいないので、紹介は出来ませんね」
「うう……」
悠希は
「それでは、私は本を返したら帰るので。またね」
「あ! 待って、玲愛ちゃん!」
「何ですか」
「その、カナメくんって人を好きになった理由、聞かせてくれないかな?」
「嫌ですよ」
「そう言わずに、さ」
「しょうがないですね……」
玲愛はカナメを好きな理由を語りだした。それは恋する乙女のように、顔を赤らめて俯きながら、声を震わせ、ゆっくりと。
そんな彼女の話を悠希は静かに聞いていた。
もう人は悠希と玲愛しか残されておらず、静まり返った図書室を玲愛の声だけが支配していた。
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