13 デートプラン
「カナメくんは何処か行きたい場所、ありますか?」
風呂上がり。いつものように、玲愛の髪を乾かしてあげると彼女はそう聞いてきた。
行きたい場所かぁ……。
ココって場所は無いなぁ……。玲愛とのデートだったら、何処でも楽しいだろうし。
「……」
そういや、玲愛の私服って見たことなかったから、一度でいいから見てみたい。
「玲愛の私服が見たい!」
「人の話、聞いてました? 場所を聞いているんです」
「あ、そうだった、ごめん。ゲーセンとかでいいと思う」
「ゲームセンターですね、分かりました。私はショッピングがしたいのですが、付き合ってくれますか?」
「勿論」
というわけで、ショッピングの後にゲーセンと決まった。
でも昼ご飯、どうするんだろう……?
「昼、どこで食べる?」
「そうですね……」
スマホで調べる玲愛。
商業施設の近くだと、ファミレスと喫茶店があるらしい。でも、喫茶店は限定メニューとかで結構混むらしい。だとしたら、ファミレスか。
――話し合いの結果、ファミレスで食べることになった。喫茶店の行列は待てないという意見で一致した。
「じゃ、早速予約しますね!」
そして彼女が予約してくれた。
「それと私服の件ですが――」
悲報。
玲愛は私服を取りに行かなければいけないので、今日は一緒に一夜を明かせなくなった。
「では、明日駅前集合で」
「寂しいけど、夜寝れるか?」
「寝れますよ。私をナメないで下さい」
ツンツンしているが、どこか不安を滲ませている。
「カナメくんの方こそ」
だな。寝れる自信無い。
夜遅いので玲愛を家まで送ってあげる事になった。
その中途。
「五城さん、滑稽でしたね」
「ああ、滑稽だった」
「割とダメージ与えられたのではないでしょうか」
「まあな。でもダメージ与えたからといって許す気は無い」
「同じく」
「困ってそうだったけど、あれでいいんだよな?」
「ええ。自業自得ですので」
そんな会話を繰り返しているうちに、彼女の家が見えてきた。五城の件は完全にはスカッとしていないけど、心は軽くなった。
「――ありがとうございます、カナメくん」
家の前で礼を言われる。
玲愛の家は一軒家だった。夜で暗い為、屋根の色などは分からなかったが、オシャレな家なのは窺えた。
今度、家の中入ってみたいな。
そんなわけで、玲愛とはバイバイした。
***
深夜のこと。俺の部屋にて。
一人の夜はとても寂しかった。何かを抱きしめていないと落ち着かなくて、抱き枕を抱きしめる。でも、玲愛の感触には敵わなくて、途中で抱きしめるのを放棄した。
昨日、付き合い始めたばかりなのにすっかり玲愛がいるのが当たり前になってしまった。
だから、慣れていた一人の夜がとても寂しかった。
玲愛は一人で平気なのか?
***
玲愛は寂しさを埋めるように、少しだけ母親と喋っていた。
「赤点でやばい子は今日は放っておいて大丈夫なの?」
「明日、その子と図書館で勉強する予定だから、私服を取りに来たんです。休日に制服はどこか違和感を覚えますから。夜くらい大丈夫でしょう」
「そう」
玲愛は親に『学力が心配な子がいるから、つきっきりで継続してその子の家で勉強を教えたい』という理由で断っている。めちゃくちゃな嘘だ。
性別は教えてなく、同じクラスの子という情報だけ教えている。
きっと女子だろう、と母親は本気で思っている。だって、玲愛は彼氏など出来た経験が無いのだから。
「おやすみなさい、お母さん」
「おやすみ」
玲愛は自室の扉をバタン、と閉める。
(明日、どんな服を着ていったら、カナメくんに可愛いって言われるのかな……?)
そっと目を閉じる。
何故だか、自然と眠りにつくことが出来た。
朝日の光で目が覚める。
「んん〜」
気持ちよく伸びをする。そして、隣をふと一瞥する。
(!)
一瞬焦ったが、すぐに冷静になり、彼がいないのを受け入れる。
(そういえば……そうでした)
昨夜の出来事を思い出す。
朝食を食べた後、化粧を済ませ、服選びをした。その服選びが化粧より長く掛かるとは、この時は思ってもいなかった。
「どれがいいんだろ……」
既に三十分が経過。
あいにく、連絡先を知らないのでカナメくんの好みが聞けない。どうしよう……。
一時間後……。
やっとひとりで今日のコーデを決めることが出来た。
彼ならどんな服でも「可愛い」と言ってくれると信じて。
水色の長袖のワンピースにベージュのバッグ。いつもはサイドテールにしている髪も下ろしてみた。
そして、鏡の前で笑顔の練習。
「よし!」
良い感じに決まったので、急いで家を出る。早くカナメくんに会いたい。
約束の時間は過ぎており、遅れるのは確定だった。走って駅前に着くと、彼が手を振って待っていた。
「遅くなってごめんなさい」
「いいよ。俺の為に遅くなったことくらい、分かってるから」
「……!」
「今日の玲愛、めっちゃ可愛い」
玲愛はどんな髪型でも似合う。そして服ともマッチしている。初めて見た、下ろした彼女のサラサラな髪に今すぐにでも、カナメは触れたくなった。彼女の髪は陽光を浴びて、光り輝いている。
「あ、ありがとうございます」
にこっ。
上手く笑えたかな……?
「!」
刹那、カナメは吐血し卒倒した。あまりの天使過ぎる笑顔に。
「もう、こんなので倒れていたら、デートなんて出来ませんよ」
玲愛はカナメに手を貸す。
カナメは立ち上がると――
「俺、いまが人生で一番幸せだ」
――そう告げるのだった。
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