2 出会った
誰もいない図書室。
いや、正確には図書委員もいるのだが、一般生徒は俺くらいしかいないので、実質ひとりだ。
(……はぁ)
溜め息を吐く。
五城の好きな人が誰なのか、を考えたほうが心の負担は軽減されるのだろうが、いまはフラれたショックのことしか考えられない。脳って不思議だ。
何でフラれたんだろう? いや、冷静に考えればあの学園のマドンナと付き合えるほうがおかしいのだ。そんなの、分かってる。分かってるのに傷つく。
恋心とは不思議で不条理なもので。
普通に振ってくれれば、ここまで傷つくことはなかった。
何だよ、さっきの追い打ちは。暴言は。
学校一の美少女の裏の顔を俺は知ってしまった。
あれは今までの告白に対する鬱憤の爆発だったのだろうか。
一生、彼女出来ないって何だよ。
もう人を信じられない。怖い。
あんな絶望的な言葉を真に受けて、俺は絶望していた。
――気晴らしに漫画でも読むか。
そう思い、漫画を一冊手に取る。
この学校の図書室には色々な本と少量の漫画が置いてある。漫画は数少ないが、それでもあるはあるので、俺は好んで読んでいる。恋愛、アクション、ファンタジー、ギャグ。そんな所か。
本はライト文芸までなら置いてあるが、ラノベは一冊も無い。まあ学校だからな。ラノベが読みたい人は個人で持参している。
俺は恋愛漫画を選んだ。
告白シーンがあるモノは今の俺にはキツイので、ただひたすらヒロインに癒され、甘やかされている内容のモノにした。
でも、実際は全然漫画の内容が入って来ず、ページを捲るだけの動作をしただけだった。
こんな天使みたいな優しいヒロインなんて、現実にいるわけないもんな。
さっきの出来事があったから、ネガティブ思考になるのも無理はない。
どんどん人間不信が加速する。
「もう帰るか……」
ページを捲るだけの無駄な時間をいつまでも過ごしていては勿体ない。
漫画を本棚にしまい、学生カバンを背負って、図書室を出ようとする。
図書室のドアノブを握った時、扉の向こう側に女の子だろうシルエットが映った。
こんな時間に誰だろう? 本の返し忘れか?
ドアノブを回し、扉を開けるとそこにいたのは――
「こんばんは。二階堂さんと少しお話がしたいです」
茶髪のサイドテールに
――間違いない。
この美少女は学校で二番目に可愛い、と称されている、
でもどうして、佐渡がこんな所に……?
そもそも、なんで俺の名前まで知られているんだ?
「なんで俺の名前を知って――」
「五城さんにフラれたんでしょう?」
「人の話聞いてる!? っっって、何で君がそれを知っているんだよ!」
「見てました」
「は?」
告白現場を学校で二番目に可愛い女の子に見られていたらしい。
「私がその傷も全部、癒してあげます」
にっ、とはにかむ佐渡。
窓から射し込む夕焼けの光とも相まって、その笑顔が眩しい。
どうやら、天使みたいな優しいヒロインは現実にもいたらしい。
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