学校一の美少女に振られたら、学校で二番目に可愛い女の子と同棲することになった
友宮 雲架
第1章
第1話 別れと出会い
1 フラれた
俺はあいつのことが好きだった。三年前から好きだった。
――
学校一の美少女であり、頭脳明晰、スポーツ万能。そして、誰に対しても優しい。そんな優しい彼女の裏の顔があんなに酷いとは、この時の俺は思いもしなかったよ。
話を戻すが、彼女はストレートの黒髪ロングヘアーと日本人らしい透き通るような黒い瞳が特徴な、清楚な見た目をしている。彼女の容姿と可愛らしい制服は見事に似合っている。
「おはようございます、五城さん」
「おはようございます」
五城は誰に対しても、別け隔てなく挨拶はしてくれる。しかし、五城は凄くモテるのだ。そりゃあ、学校一の美少女なんだからモテるも当然。俺は何度も学園の男子がフラれていくのをこの目で見てきた。だから、きっと俺も――。
そんな心情が続き、何週間、何ヶ月、何年……と告白出来ずにいた。
でも今日告白するのだ。そう決めた。恋愛祈願の神社にも昨日行ってきた。だから、今日こそは……必ず想いを伝える。
問題はどうやって呼び出すか、だ。
手紙を下駄箱や机の中に入れたり、直接言ったり、それから友人の
今日、五城は学校に来ている。
チャンスがあるとすれば、5・6限の体育の後だ。
手を洗っている時や用具をしまっている時にでも声を掛ければいいだろう。
――体育が終わる。
チャンスはすぐに訪れた。
用具をしまい終わった五城は一人で、俺のいる手洗い場に向かってきた。
蛇口から流れる水の流水音だけが、この場の静寂を破っている。
気まずいので、俺は言う。
「こんにちは」
何でこれしか言えないんだー!!
「こんにちは」
無表情の彼女の淡々とした言葉が返ってくる。
「あ」
彼女は突如、俺の額を見てそんな間抜けな声を出す。
そして、自分のタオルを水に濡らす。
「え。タオル、びちょびちょになっていますよ、いいんですか? そんな事して」
「うん」
彼女はそう告げると、あろうことか俺の額に手を伸ばす。
……っ!
ひんやりとしたタオルの感触が気持ちいい。そして少し、そこが痛い。
もしかして、俺怪我してる?
「いきなり何、するんですか。ありがとうございます」
「怪我している人を放っておけないんです」
「五城さんは優しいんですね」
そう言うと何故か、彼女はニヤッと腹黒な笑みを浮かべた。
?
ってそうじゃない! 俺は大事なことを忘れてる。このままだと怪我の手当てで、せっかくのチャンスが終わっちゃう。
「あ、あの」
「はい」
「放課後、時間って空いてますか?」
「空いてます」
「そ、そしたら、放課後屋上に来て頂けませんか?」
「いいですけど」
「ありがとうございます!」
俺は深くお辞儀をする。
彼女はキョトンとしていた。
段々遠ざかっていく彼女の方からこんな声が聞こえた気がした。
「あなたが行くべき場所は保健室です」と。
――放課後の屋上。
涼しげな九月の風が吹いてくる。草木の匂いが風によって、伝わってくる。絶好の黄昏時だ。
何で一人で屋上にいると、こんな気持ちにさせられるのだろう。
今までの思い出などがエンドロールみたいに蘇ってくる。
早く五城さん、来ないだろうか。
一人で屋上にいるとソワソワしてきて、落ち着かない。
――ギィィィ……。
屋上のドアが開く音が聞こえてくる。
やっと五城がやって来た。
「遅くなってごめんなさい」
実は五城は他の男子に捕まり、告られ、ついさっきフッたばかりなのだが、俺はその事を知らない。だが、疲れた表情をしているので、何かあったんだな、と察する事は可能だ。
「いや、いいですよ。俺もいま来たところですから」
「嘘つき」
「へっ?」
彼女らしくない言葉に、少し動揺する俺がいるが、気にせず続ける。
今日はこれを言いに来たのだから――。
「五城さんのことが、ずっと前……否、正確に言うと三年前から好きでした! 今までずっと伝えられなくてすみませんでした。もし良かったら、俺と、つ、付き合って、くれませんか?」
そう告げると、あからさまに嫌そうな顔をする五城。せっかく勇気を出して告白したのに、失礼過ぎる! まあ、今まで散々告白され続けて、振り続けるという一連の行為にうんざりしているのは分かるが。
数秒後、五城は俺を振った。
「ごめんなさい。他に好きな人がいるので、あなたとは付き合えません」
好きな人……? 一体、誰のことだろう……。五城に好きな人がいるとは初耳だ。
『ごめんなさい』、『好きな人がいるので』、『付き合えません』……そんなフレーズが、脳に繰り返し響いてきて、不快。
フラれるとこんな気持ちになるんだ、と初めて知る事が出来た。
恋は時に残酷だな。
「分かりました。この度は貴重な時間を割いてしまって、すみません。それでは俺はこれで……」
泣きそうだった。だって、三年間ずっと好きだった人にフラれたのだから。
なのに――五城はそんな俺に追い打ちをかけた。
「その通りよ」
「え――」
「私、あんたみたいな男たちにめっちゃ貴重な時間を奪われまくってるの。責任取ってくれる?」
いきなり、敬語から砕けた口調になる五城。
「あんた、
「ごめんなさい。チャ、チャンスはあるかな……って」
「身の程知らず。二階堂は一生、彼女できないと思うよ」
「何でそう言い切れるんですか」
「だって――――」
最後のほうはよく聞き取れなかった。
五城はそう告げると、身を翻し、俺の前から消えた。
最初から五城なんていなかったかのように、再び屋上は静かになった。
五城の好きな人って誰だろう?
最初のほうはそんな疑問が脳内の殆どを占めていたが、今はそれすらも気にならなくなっていた。それくらい俺は傷ついていた。
一人になりたかったので、誰もいないであろう図書室に俺は一人で向かった。
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