第4話
◯
お風呂から出た僕は居間にいたエリスさん頭を下げた。
「お風呂ありがとうございました。エリスさん」
「いえいえ、大丈夫ですよー。ユウ君はここが自分ちと思っていいんですからね」
エリスさんはそう言って僕の頭を撫でてくれた。
「ユウのお父さんの出張、次はいつ帰ってくるんだっけ?」
声のする方向を見るとカレンちゃんがいた。僕がお風呂に入っている間に着替えたようで可愛らしいネグリジェを着ていた。
か、可愛い……と言いそうになるけど、絶対におちょくられるのでぐっと僕はこらえる。
「次の月曜日の夕方に帰って来るよ」
「今日が金曜日だから土日はうちにいるんだ♡♡♡じゃあいっぱい遊ぼうね♡♡♡」
「うん!でも、もう宿題やったの?」
「やってないよ!でもカレンちゃんの可愛いプリチーフェイスでお願いしたらユウ君がカレンちゃんの分までやってくれ……ってお姉ちゃん……」
カレンちゃんの目の先には口を膨らませて怒っているアリアお姉ちゃんがいた。
「こーら、宿題するのも人間界の暮らしの一つです」
「そうよカレン。宿題は大事ですからね」
エリスさんも口を揃えてそう言った。
「はーい」
そして、エリスさんは居間でパソコンをカタカタと打ち始めた。
この夢咲家は異世界からやってきたサキュバスという魔人の家族だ。
異世界と地球、両者の文化交流で日本に着て、この街で暮らし始めて、もう5年になるお隣さん。
小さい頃はよくわからなかったけれど、今となっては、この人たちはとても凄い人たちとわかる。
人間に近い姿だけど、人間に出来ないような事が沢山できるし、ここでは禁止されているけど魔法も使えるらしい。
そして、文化が違っていても両者が歩み寄れるように色々とレポートを書くのがエリスさんのお仕事だ。
「じゃあ、ママのお仕事の邪魔しちゃ悪いし、こっちで映画観よ!もうじき9時よ」
「カレン、見終わったらお布団に入って寝るのよー」
「はーい!」
「じゃあ、お姉ちゃんもユウ君と観ようかな?」
カレンちゃんもアリアお姉ちゃんも僕の隣に座ってテレビを付ける。
するとそこには呪いのDVD……という題名の映画が始まっていた。
「カレンちゃん……本当にこれ観るの?」
僕はたまらず言ってしまう。
「えー♡ユウってばホラー映画観れないの?おこちゃまー♡大人の男っていうのは、こういうのを彼女と見に行って、自分は怖がらず、堂々として、そして怖がっている女の子の手を優しく握ってあげるもんだよー♡♡♡」
「そ、そうなの?アリアお姉ちゃん……」
僕はホラー映画にビビってしまってアリアお姉ちゃんに訪ねてしまう。
「うーん。お姉ちゃん。そういう経験ないからわからないな……」
「アリアお姉ちゃん彼氏いないの?」
「ひみつ♡♡♡」
「ふうん……」
僕はお姉ちゃんに彼氏がいるかいないかはぐらかされて、むず痒い気持ちになってしまう。
この気持ちは複雑だ。
僕とお姉ちゃんは年も離れている。
お姉ちゃんは大好きだけど、これはお姉ちゃんへの恋なのか、それとも家族として大好きな気持ちなのか自分でもよくわかっていない。
「ユウはいないの?」
カレンちゃんが僕に訪ねてくる。
「い、いないよ!」
「ええー。かわいそー。クラスメイトで付き合っている人たち何人もいるよー」
「えっ!?」
「えっ!?」
僕もアリアお姉ちゃんも同時に声を出してしまう。
(僕の知らない所でもうそういう事を始めている同級生がいるのか……)
僕がそう思っているとアリアお姉ちゃんが
「小学生でもそういう事をしているの?」と振るえる声で言ってしまった。
「うん。中学生の人と付き合っているって娘もいるよ」
「……」
アリアお姉ちゃんの顔を見ると驚愕の顔で固まってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます