第52話 精霊魔法、闇属性

「・・・認識阻害?」


テスの言葉を聞き、私は全く気にせずにいたクラウディアの言葉を思い出す。

『私も彼らと同じ目で見られる』

そうだ、何故私はそのまま聞き逃していたのだ、

その言葉は、クラウディアが奴らと対等でなければ出ない言葉だというのに。


「珍しいわね、何の切っ掛けも無しに私の精神干渉から抜け出せるなんて。

 でもごめんなさいね、これは私が力を得る為の呪いで、代償。

 体質みたいなもので、自分では上手くコントロールできないの。」

「気にしないでください、私は体質上、精神や感覚の影響を受けませんから」

「そう、貴方人間かと思ってたけど機人族なのね、

 人そっくりってことは、第1か第2世代かしら」


クラウディアはテスの言葉に納得し、ポケットから冒険者証を取り出した、

虹色に輝くそれの裏面には、予想はついていたがタロットカードの

『魔術師』が描かれていた


「・・・はぁ~・・・」

「え、なに?驚かないの?え、そんな逆にガッカリされることあるかしら?」


放火魔ロスウェル・クルー

妄想結婚妄想未亡人アルッセナ・フリート

ポンコツで犯罪斡旋トロワ・ヒルメルズ


『色欲クラウディア・ロジャー』


どうすんだよこれ、人族は何と戦おうとしてこんな奴ら集めてるんだよ。

目下、敵対している魔族達に申し訳ないと思わないのか、

そんなことを考えると、私もテスもただただ溜息しか出ないだろうがよ。


「トロワの言う通り、尖ってるか歪んでる人しか居ないかも知れませんね」

「ちょ、止めなってテス、本人の目の前だぞ」

「随分かなり失礼な事言われてるけど、話続けていいかしら」


思ったリアクションでなかったことに恥じるでもなく落ち込むでもなく、

あくまで表情を変えることなく、冒険者証を仕舞ってから

クラウディアは話を続けた。


「知ってると思うけど、魔法使いの魔法は精霊の力を借りて行使するの、

 正式名称は『精霊魔法』と言うものだけれど、

 自然界に居る精霊は木・火・土・金・水。風は木属性、雷は金属性に

 含まれたりと多岐になるけど、大本はこの5種ね」

「魔法の基礎だな、だがそれと別に魔力を使って

 自身の身体能力を上げる技術や付与魔法も、精霊を介していないが

 魔法と同義とされているな」

「そうね、魔法は奥深く、幅広い。

 貴方達は『精霊を介さない精霊魔法』を知っているかしら」


クラウディアが片手の掌を上にして前に伸ばした、

するとその手の上に、拳大ほどの真っ黒な球体が発現する。

ただそれだけの、一見すると地味な手品とあまり変わらない行為であるが、

『魔法』と言うものを詳しく知っている者なら

一瞬で卒倒してもおかしくない、それほどの芸当であった。


「『闇属性』、ですか」

「本当に?本当に感想それだけ?どんだけ肝が据わっているのよ」

「驚いているさ、勿論。『闇属性』は魔族にしか扱えず、

 更に魔族の中でも秘中の秘の魔法だからな。

 なぜただの獣人族がそんなものをいとも簡単に扱えるのか、

 いや、だからこそアルカナに選ばれたのなら納得の理由だろうよ」


精霊魔法について改めてその技術と仕組みを考える。

精霊魔法は魔法を行使する上で必要な魔力を、

精霊を呼び出す為だけに留め、魔法を精霊に使わせることで

多大な魔力の負担を軽減させているのだ。


分かりやすく言えば火球を撃ち出す魔法を使う時に

使用する魔力を100%とすれば、

魔力を10%、魔法使いが負担して精霊を呼び出し、

精霊が90%を負担して、火球を撃ち出すという仕組みだ。


しかし闇属性とか光属性など、

クラウディアの言う『精霊を介さない精霊魔法』を行使するとなると

100%の負担を負わなければならない。

ただ黒い球を出すだけでも、その辺の人族の魔法使いであれば

出し続ければ10も数えないうちに失神するはずだ。

だからこそ、『魔族のみが扱える秘中の秘の魔法』と呼ばれているのだ。


「まるでバケモノだな」

「やっとそれっぽい感想が出たわね、短過ぎるのが不満だけど。」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る