第51話 巻き込・・・

「ところで、貴方達も首都から来た冒険者なのよね。

 ここまで来たのは依頼かしら」


村の小さな酒場で一息ついているとクラウディアがそんなことを聞いてくる、

何でもない会話であるはずなのに、私もテスもすぐに言葉が出なかった。


「んー・・・まぁ、そんなところだ」

「そんなところ・・・ね、詮索するつもりはないんだけど、

 私で良ければ手伝えることがあるかもって思ったの」

「いえ、クラウディアさんを巻き込・・・じゃなくて、

 手伝って頂く程のことではありませんよ」

「『巻き込』まで言ったら『巻き込む』の言葉以外ないじゃない。

 まさか私、危ない人達に拾われちゃったのかしら」


確かに拾ったけどもう村に着いた時点でリリースしたつもりなのに

クラウディアは何故か今も私達と共に行動している。

このままレギュラーメンバーにでもなるつもりだろうか。

それだけはちょっと、いやかなり遠慮したい。


「・・・何やらしれっと一緒に居ますけど、

 まさか首都に向かう馬車が見つからなかったのでしょうか」

「あるにはあったけど・・・」

「けど?何か問題でもあったか?」

「首都へはここから行くには東に向かうのが早いけど、あるのは西へ行き、

 それから北へ向かって、その後に首都へ行く分しかないみたい」

「西、ですか。私達もこれから西の集落に向かうところですので、

 それまではご一緒出来そうですね」


テスの言葉を聞いて、クラウディアの耳が僅かに動くのが分かった。


「西の集落と言えば確か・・・古来より独自の信仰に厚い部族の村だったわね。

 村の外に対しては必要最低限の交流しかしないはず、

 そんな村に態々行きたいって言う人は稀有よ。

 その上、さっきのテスの巻き込むって言葉・・・一体何をするつもりかしら」


静かに、そして確信を持った強気の言葉でクラウディアは私達を問い詰める。

なんでこんな要らんところで鋭いんだよ、と内心ぼやきつつ、

仕方なく私達は旅の目的をクラウディアに話すことにした。

勿論、ギルドではなく便利屋ナナツボシからという所は

一切隠すことなく喋ったが、ナナツボシと言う名前を聞くと、

クラウディアは納得したように『あぁ~』と声を発した。


「なるほどね、確かにギルドじゃなくてあの便利屋の案件になるわ。

 貴方達も災難ね、トロワ・ヒルメルズに目を付けられるなんて」

「あぁ、やっぱり一般的な冒険者でもあいつはそういう認識なんだな」

「一般・・・?一般ではないけれど、まぁ冒険者も商会も貴族さえも

 皆、あの便利屋を厄介な目で見てるのは間違いないわね。

 でも誰も彼女に意見できない、だってアルカナだから」

「改めて言われると、人族代表にするには不相応過ぎるよな。

 誰が人選して権利与えたんだよ」

「仕方ないわ、表向きは人族への脅威への対抗策とされているけど、

 その裏では『暴れられたら困るから多少の犯罪を許す為の口実』でもあるのよ。

 ロスウェル・クルーとかテリスぺリナ、アルベルリリーが良い例ね」


ロスウェルは知っているが、それと並ぶ『何か』が

あと2人居る、という知りたくない情報を知ってしまう。

放火と並ぶ物と言えばなんだ?誘拐とか略奪とか、その辺か?


「おかげで私も彼らと同じ目で見られることもあるし、少し迷惑しているわ」

「そうか、それは大変だな」

「・・・ララァ様?」


突然、テスが私のことを不思議そうな目で見て来る。

何かおかしい事でも言っただろうか、もしくは変な事でもしただろうかと

首を傾げていると、テスは小さく溜息を吐いた


「・・・なるほど、精神干渉による『認識阻害』ですか。

 アルカナであれば造作もありませんか、クラウディアさん」




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