第45話 それで何でも解決しちゃうじゃん
この世界における『銃』と言うものは、大きく分けて2種類ある。
機人族だけが持つ高等技術によって作られた物と、
人族が機人族の銃の構造を研究し、模して作った物だ。
機人族の銃を一般的に『近代銃』、もしくは『機人銃』と呼ばれ、
ハンドガンからショットガン、ライフル、マシンガンと、
その種類は多く、そして精度や威力は他の多くの武器を凌駕する。
反面、一度壊れてしまえば複雑な内部構造から分解修理するのは困難で、
人族の技術では部品を作ることはできない、
過去に作られた、今となっては遺跡と化した機人族の施設から
極稀に見つけることが出来るが、当然状態が悪く、
分解せず可能な限りメンテナンスを施し、壊れないように祈りながら使ったりする。
それらの問題を解消する為に作られたのが、人族の銃である。
火薬を使った弾丸、それを作ることはそこまで難題ではない、
銃弾を撃ち出す為の銃を円筒のパイプを主体にしていることから『パイプ銃』と呼び
より近代銃に似るように試行錯誤した粗末な模造品だが、
近代銃より遥かに簡単なメンテナンス性、
劣りはするが、それでも弓やボウガンよりは精度も威力もある。
銃そのものは非常に高価で、流通は少ないが近代銃よりは入手が簡単である。
まぁ、言うまでも無くテスが持っている銃は
近代銃の『スナイパーライフル』と呼ばれる物、遠距離攻撃が可能な
近代銃の中でも特に驚異的な性能を誇る代物だ。
「こ、これは驚いた・・・。
まさか生きている内にこれほどに完璧な状態の近代銃を見れるとは・・・。
で、ですがこれで本当に、どうにか出来るのでしょうか?」
「対処法を知っていれば容易い相手ではあるな。
だが如何なる相手でも必ず倒せる保証はないし、油断はできん。」
「ゴブリンの群れの恐い所は、王による強力な強化魔法にあります。
ですが王そのものは結局のところゴブリンの強い個体、
王さえ先に倒せれば、配下は元の強さに戻ります、
あとは残っている冒険者達と共に討伐をしましょう」
私達は再びギルドを訪れ、職員に事情を話して他の冒険者に協力を仰ぐ、
先遣隊の敗走、仁狼の弟子の逃亡と悪い知らせ続きでやる気のない連中を
説き伏せるにはそこそこ苦労はあったが、まぁ割愛していいだろう。
「あとは敵の所在ですが・・・ララァ様お願いできますか?」
「勿論、今から飛ばすぞ」
ギルドの前で私はある物を取り出す。
折り鶴、そう、紙を折って作る、あの折り鶴だ。
それが3羽、魔力を流し込み、空に向けて放り投げる、
すると鶴はまるで生きてるようにその翼を広げ、より高く飛び立って行く。
私はその場で目を閉じ、念じる事で折り鶴の視点が瞼の裏で鮮明に映し出される。
使い魔を通して視点を得る魔法は高位の魔術師しか使えないが、
複数の使い魔を飛ばせるのは、私くらいしか知らない。
「・・・見つけた」
1羽がすぐにその姿を捉えることに成功する。
占拠されているとされる街道を見下せる高台、
恐らく破棄された古い見張り台がある場所、そこに陣取っている。
他の冒険者や村から略奪した宝飾品や武具を身に纏い、踏ん反り返って座る奴が1匹
間違いなく、これがゴブリンの王だ。
「テス、私が先導する、より高い場所から撃ってくれ」
「分かりました、すぐに行きましょう」
「お待ちください!」
そろそろ行くか、と思っていた所にギルド職員が馬を連れて駆け寄って来る。
「ギルドで所有している連絡用の早馬です、これくらいしかできませんが・・・」
「あぁ、いや気持ちは有難いが必要ない、テス、久しぶりに走るぞ」
「私としては馬の方が良いのですが・・・仕方ありませんね」
テスと並び、足に魔力を集中させる。
よくある強化魔法の1種だ、脚力を高め、
高速移動とそれに伴う体力の消耗を軽減させる魔法。
ドンッ、と2人同時に土を蹴り出し、大きく一歩を踏み出す、
その距離、軽く100mは超えているだろう、
さっきまで私達と職員が居たところは土埃が立ち上がっているのが見える。
ちなみに競走馬が大体秒速20m前後だから馬の5倍速く移動できている、
そりゃ気持ちは有難いが、馬より早く走れるなら必要ないよねって事よ。
勿論、ずっとこれをするのは疲れるから、普段であれば喜んで馬に乗るんだけどね。
「街道を挟む様に2つの高い丘がある、王はその片方を抑えているから、
私達はその向かいの丘に行く。王を撃ったら、後は冒険者達に任せればいい」
「そうですね、ところでずっと思っていたのですが・・・」
「うん?何だ?」
スッと、テスが走ることを止めたので私も足を止める、
テスは少し言いづらそうに、静か思いを言葉にする。
「・・・ララァ様がサクッと行ってサクッと倒すのが一番早いのでは」
「・・・確かに」
その言葉に、私は絞り出すような声で、肯定した。
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