第43話 人の話を聞け
「・・・今、なんと?」
「だから
「王だなんて・・・、それがもし本当なら!
この町に集まってる冒険者だけでは太刀打ちできないじゃないか!
集まっている冒険者は上でもシルバー級が数名程度、
対して王は、ゴールド級の冒険者パーティー以上の適正討伐対象だ・・・!」
なるほど詳しい説明ありがとう、要するに現状、どうする事も出来ないという事だ。
王だけ倒す為にゴールド級パーティーが必要、それは分かった。
その上、王は高い個体能力、統率力以外にも、王にだけに許された能力がある、
『王の指揮下に居る同族の身体能力が飛躍的に向上する』
これが、私とテスがゴブリンの王を嫌がる最たる理由だ。
一般的なゴブリンの身体能力は人間の子供程度、
武器を持った成人男性なら十分倒せるか、追い払える。
だが王の指揮下であれば、ゴブリンの能力は成人男性を遥かに超えてくるのだ。
それこそ、兵や冒険者というものが必要になるほどに。
さて、そんなゴブリンが100匹規模で襲ってきて、
冒険者十数人で対応できるか、結果は分かり切っている。
「町一番の早馬を出して、首都のギルドに応援要請を出した方が良い、
西の支部にララァからそう言われた、と伝えれば腕利きを送ってもらえるかも」
「その必要はない」
私の言葉を遮り、ギルドの入口から声が聞こえる。
私達が振り向けば、そこに居たのは昨日馬車で一緒だった弓手の青年であった。
青年は少し呆れたように近くまで歩み寄り、話を続ける。
「相手はただのゴブリンの集団だ、王だの猛将だの、
依頼として報酬が出ない腹いせにしては、随分と話を大きく盛るんだね」
「な・・・違うぞ!ただのゴブリンが何の算段も無しに、
人族の領域を占拠するはず無いだろうが!」
「ララァ様の言う通りです、ゴブリンは馬鹿ではありますが愚かではないです」
「でもそれが王が率いている証拠にならないだろ?
なによりこちらには仁狼の弟子が居るんだ、上位種が居たとしても
何の問題もならないさ」
私は思わず頭を抱え、テスは深い溜息を吐く、
話が全く通じないし、前向き過ぎるし、
何より仁狼本人じゃないのに仁狼の弟子ってだけで滅茶苦茶信頼あるのなんなのだ。
って言うか、ゴブリンの生態なんて冒険者なら基礎の基礎じゃないのか、
この町に居た冒険者とか悠長に考えすぎだろう、等々。
考えれば考えるほど、突っ込みどころがあり過ぎて
何処から手を付ければいいか分からん、
私と青年の言い分、どっち聞けばいいか分からずオロオロしてる職員の爺さん可哀想
「・・・ふぅ・・・分かった、そこまで言うならもう何も言わん。
その代わり、私達は忠告したからな、何かあれば責任は全部そっちが持て」
「ははは、忠告どうも、あとは僕達ブロンズ級以上の冒険者に任せてくれよ」
「・・・はいはい、ご武運お祈りします。行きましょう、ララァ様」
ギルドを出て、無言で宿の自分達の部屋に戻る。
戻った瞬間、込み上げた感情を爆発・・・させてテスを困らせたくないので
ひび割れた器から漏れる水のようにちょろちょろと口から発していく。
「馬鹿ばっかりじゃぁん・・・」
「まぁまぁ、もしかしたら昔と今ではゴブリンの生態が変わってるかもですし」
「だと良いけどな、職員の爺さんの慌て方からして、厄介さは変わらんはずだぞ」
「だから、ララァ様が何とかするんですよね」
・・・まぁ、確かにそのつもりだ。
責任はそっち、と言って知らんぷりするのは簡単だ、
少なくとも、あの弓手の青年みたいな奴らにとやかく言われる筋合いはない。
例え冒険者達がこの戦いで死んだとして、それは冒険者を生業とする者の定めだ、
それはいい、だが彼らが倒れたその先はどうなる。
私が居れば助かった、町の人達の命まで知らんぷりするほど薄情ではない、
町の人達を助け、あとついでに冒険者も助ける、そのつもりだ。
「すぐ彼らはララァ様の言ったことを身に染みて分かることでしょう、
ララァ様が手助けするのはそれからでもいいかと、それに・・・」
「それに?」
「ララァ様の話を聞かないなんて事、
今に始まったことじゃないではないですか、ははは。」
「おっほっほ、まさかこんなタイミングで
200年前の悲劇をネタにして弄って来る奴居るぅ?」
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