第2話 歪んでしまった神聖な儀式
「むぐぅ…」
巫女の玲子は暑さと汗、自分の匂いにうんざりしていた。
彼女は今、手足を折りたたんだ状態であのタヌキのぬいぐるみで全身を覆われている。
参拝者が去ってからしばらくし、呼吸が整った彼女は仰向けの上体から器用にも起き上がり、またぬいぐるみのようにお座りの体勢になった。
この状態では手は使えないし、移動するにも肘と膝を使って四つん這いでしか歩けない。
「あぐ…んぁ…」
起き上がるときにまた開けられている口からだらしなく涎が垂れ、ぬいぐるみと敷かれた毛布に吸収されていく。
ぬいぐるみの口には開口型の猿轡が付けられており、そこから玲子の口の中が丸見えである。
すでにぬいぐるみの口周りは玲子の唾液でべちょべちょになっている。
しかし口以外は例のぬいぐるみで覆われてしまっており、玲子には外が全く見えない。
そして玲子がこのぬいぐるみに閉じ込められてから半日近くたとうとしている。
発汗の多い背中やわきの下、首周りには分厚いぬいぐるみの生地にかかわらず玲子の汗が染み出てしまっている。
こんな惨めで汚い姿で本殿に閉じ込められているのだ。
(はぁ…はぁ…のどかわいた…暑い…くさい…もういや)
なぜ玲子はこんな恰好で隔離されているのか?
それはこの神社の巫女に与えられた儀式に関係していた。
代々この地は"獣様"という神様を祀っている。
この神社、獣の社には獣様のご神体があると伝えられている。
しかし、獣様の力は一年に一度弱くなると言われている。
そうなると獣様の結界で守られているこの土地、また獣様自身が無防備になり厄災が降りかかってしまう。
そのための儀式、"厄除の儀"を行う。
厄除の儀は、獣様の結界が弱くなっている間に、神社に勤めている巫女の中の一人が朝から晩まで獣様に降りかかってしまう厄を代わりに受ける、いわば生贄として獣様を守る儀式なのだ。
この一日を乗り切ることができれば獣様の結界の力は戻る。
厄を代わりに受ける巫女は"厄受の獣"、蔑称"ぬいぐるみ係"として玲子が着ているこのタヌキのぬいぐるみを着る必要があるのだ。
玲子は巫女としての力が強いと言われており、この役柄が適任であるとされてしまい、かれこれここ5年連続でぬいぐるみ係をやらされてしまっている。
(儀式だからって…なんで私がこんなぬいぐるみを着なきゃいけないのよ!)
玲子も毎年ぬいぐるみ係に任命されてかなり不満をもっていた。
しかし、代々巫女の家系としてこの神社に仕え、獣様を守るための大事な役割なため玲子もこの仕事を無下にはできないのである。
ぬいぐるみの背中にはチャックが付いている。
しかし、そのチャックを覆い隠すようにぬいぐるみに合わせた色の生地がマジックテープを使って貼られている。
今の玲子にはこの生地を剥がすことができない。
剥がせたとしてもこの折りたたまれた手ではチャックを下げられない。
この恰好がいくら暑くても、臭くても、恥ずかしくても自力では脱ぐことができない。
可愛らしくデフォルメされたタヌキの丸い尻尾、白いお腹、そして股間についたキンタマ袋が玲子の羞恥心をさらに煽る。
ぬいぐるみの中の玲子は全裸であり、朝からこんな分厚いぬいぐるみを着せられているので汗まみれになっている。
そして儀式は半日以上という長丁場なので、前日から食事は抜いている。
しかし水分補給と尿は断つことができないため、オムツをあてがわれてしまっている。
(はぁ…はぁ…くっ…この歳でオムツにするなんて…)
何時間もこのぬいぐるみに覆われてしまっているため玲子は我慢できず、何回かこのオムツに排尿してしまっている。
二十代後半の玲子にとってはかなりの屈辱だ。
かなり厚手のオムツなのでちゃんとに吸収され排尿による不快感はそこまではない。
しかし、オムツへの排尿を儀式中という建前で受け入れてしまっている自分にも玲子はうんざりしていた。
そして玲子を苦しめる最大の屈辱、それは肛門と膣に淫具が入れられていることだ。
しかもこの淫具は音に反応して振動する。
先ほど参拝者が鈴を鳴らしたとき、玲子はこの淫具に両穴を責め立てられていたのだ。
(なんでこんなものまで付けなきゃいけないの!くっ…!)
実際玲子は先ほどの刺激で絶頂させられてしまっている。
無理やりとはいえこんな状況で感じてしまっていることにも恥辱を感じていた。
なぜこのような淫らな器具が入れられているのか。
それはこの淫具が獣様に降りかかる厄災と見立てられているからである。
厄除の儀は500年以上続いている儀式だ。
伝承では山の獣たちの毛皮を纏い、儀式にのぞんだと書き記されている
厄災を見立てたものを巫女の力で押さえつけるという記述はあるのだが、それを恥部や肛門といった場所に仕込むという記述はない。
いつからこの淫具が付けられたのかはわからない…どこかで歪みが生じてしまったのだろう。
それに参拝者の参拝が引き金になるという点が実に罰当たりだ。
過去の古臭い風習と現代の淫らな器具が組み合わさってしまった悪い例といえる。
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