賽は投げられた
そして最悪なことは再び起こった。
「新しい転入生を紹介する」
またもや唐突に先生がこう発言した。
入れ と先生が声を出すと、教室の扉から願ってもいない人物が出てきた。
十中八九、彼女はこの学校に転校してくるとは思っていたが、まさか自分のクラスとは思わなかった。
「お前ら静かに。それでは自己紹介してくれ」
彼女は教卓の前に立ち、微笑みながら、
「ボクは、シャーロット・ホームズ。
みんなも知っている通り、探偵さ。なぜこの学校に転入したのか、それは――――日本の様々な犯罪を解決しようと思ったからだよ。改めて、よろしくね」
拍手が飛び交う。
俺はというと、何も考えていなかった。
いや、考えていなかったというより考えるのを辞めたという方が正しいか。
俺は彼女に正体がバレない事だけを考える事にした。
…
……
………
そして現在に至る。
今のところ彼女との接点はない。
無いというより、作らないようにしている。
授業でよくするグループやペアを組むときは、細工をして彼女と組まれないようにしている。
彼女は危険だ。
特にあの目、なんでも見透かしているような目だ。
気をつけないと―――――
そうしてまた時間が過ぎる。
今俺は家に居る。
ベットに寝転びながらスマホをいじっていると、一つのSNSに目がはいった。
「博物館……か」
普通の博物館であれば目にはいらないが、俺が目にはいった博物館は一つ違う。
なんでも、古代の宝石が飾られているらしい。
俺の目当てのものかわからないが、盗む価値はありそうだと思った。
…
……
………
ある博物館にて、
「それで、これが怪盗が盗むと宣言した宝石かな?」
ボクは、ガラスの箱に囲まれた宝石を見た。
そしてボクの隣りにいた男性が答える。
「ええそうです」
「予告の時間まであとどのくらいかな?」
「あと1時間後です」
「警備体制はどんな感じかな」
「これを見て下さい」
男性は、ボクに警備体制の場所などが記されている端末を見せた。
「ここを少し変えたほうがいいね」
「ここをですか?」
「うん。多く配置すればいいってことではないからね」
「わかりました」
男性は無線機を持ちこの場を離れた。
さてと、ボクはあの怪盗以外のことで考えなければならないことがあった。
怪盗はボクの経験上、ネットやメディアを通じて何を盗むかを決めている。
今回もそうだろう。
だが一つ気になったのが、ここの博物館の記事だ。
やけに大っぴらすぎる。
ネットやメディア、様々なものを通じて宣伝している。
宣伝することは至って普通だが、今回の博物館はなにか違う。
まるで誰かを誘い出しているような。
いや考えすぎか?
でも何か見落としているような………
「名探偵さん。予告の時間まで10分後です」
「…もう50分も経つのかい? 考えているとすぐに時間は過ぎるものだね」
今考えてもしょうがない。
あの怪盗の方に目を向けなければ。
警備体制は万全、でも怪盗はこれだけでは捕まらない。
まずここ博物館の入り口は全て塞いである。
侵入はほぼ不可能だが、もし既にここに侵入していたら。
可能性はなくはない。
予告時間とは盗む時間であり、現れる時間ではない。
取り敢えず、念の為にボクはその対策へうってでた。
…
……
………
「はぁ、はぁ、はぁ――――」
「「「「居たぞ!!!」」」」
「チっ! 今日はやけに回り込まれるっ!」
俺が宝石を盗んだあと、変装してその場を去ろうとした時、あの探偵が俺の行動を予測していたようで、見つかり逃げ回ることになってしまった。
そして博物館の2階3階へと登っていく。
階段に登っていくうちに、屋上へと着いた。
俺は屋上の端っこに駆け寄った。
その時、
「やっぱり最後は屋上なんだね?」
振り返るとそこには、シャーロットがいた。
「随分と今回はガチだったな」
「そろそろ君を捕まえないとね」
「今までは捕まえる気がなかったように聞こえるが」
「ううん、あったさ。でも君の手口をまずは見極めてからじゃないとね」
「でも残念ながらここは屋上だ。逃げるなんて私からしたら簡単だが」
「それはどうかな」
そう言うと、彼女は懐から――拳銃をだした。
「……それで私を脅そうってか?」
「うん? いや違うよ。これは拳銃に見えるけど、人を殺すものではなく、人を気絶させる探偵道具の一つさ」
「それは犯罪の一部に当てはまらないか?」
「ボクのこれは認められているものだよ。言い換えれば、ボクだからこそ認められていると言ったほうがいいかな」
「どういうことだ?」
「まぁ、それはまた牢屋でゆっくり話そうじゃないか。犯罪者くん」
絶望的な状況でやばいと、思っていると――
視界に変なものが映った。
それはオレンジ色のようで、辺りに広がっている。
その正体は炎だった。
その瞬間、爆発音が響いた。
「なっ!?」
探偵もその異常に気づいた。
地面が揺れた。
そして同時に地面が崩れ始めた。
「どういうことだっ!?」
頭の中が葛藤している時、視界に一人の少女が崩れた地面によって落ちていきそうななのを捉えた。
俺はその少女の顔を見て手を引っ張った。
「ど、どうして!?」
「いやどうしてもなにもないだろっ!」
そしてその少女を持ちやすい状態にさせ、
「こ、これってお姫様抱っこ……!?」
「動くなよ、動いたら死ぬと思えっ!」
俺はその少女を抱きかかえながら、崩れそうな屋上から飛んだ。
…
……
………
俺は……いや俺達は無事に地上へと着地した。
抱きかかえていた少女をおろした。
「どうしてボクを助けたのさ……ボクは君を捕まえようとしたんだよ?」
彼女は本当に困惑の顔をした。
「貴女のあの地面が崩れ落ちそうな時の顔だ」
「顔?」
「あの時貴女の顔は、私の昔とそっくりだった。あの、つまらなそうな、諦めているような顔は」
「え………」
すると彼女、シャーロットの瞳が揺れた。
「あの顔――表情を出す奴は大抵過去に良いことが無かった奴らだ。貴女に何があったのかは知らないが、あまり諦めるようなことはしないほうがいい。貴女が死んで悲しむ人は少なくともいるんじゃないか? …まぁなぜ助けたかは殆どは、私が犯罪者といえど人が死ぬのはあまり見たくないからな」
俺がそういうと、
彼女は、天才で美少女の名探偵は俯きながら
「…………ふふ、やっぱり君は面白いことを言うね。……ボクのことをこんなにわかってもらえる人なんて初めて見た。人生で…………初めて――――――」
その瞬間、ガチャリと俺の手首からなにか嵌まる音が鳴った………
―――――――――――――――――――
こういう系のストーリーって書くの難しいですね。
作者より
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