幕間 幼馴染は一番の……

 いつも通り、理代とダラダラ過ごしているある夕方のこと。


 スマホで自分の動画を確認すると、コメントがついていた。


Tari『この漫画、わたしもすごく好きです。面白いですよね!』


 俺は趣味で動画投稿をたまにしている。

 内容は漫画紹介だったり、ゲーム実況だったり。

 ジャンルが定まっていないが、基本的にはサブカル系全般だ。


 そんな俺の動画に、Tariさんという方は毎回コメントをくれる。

 一番の視聴者と言ってもいいかもしれない。


 動画の再生数が伸びたり高評価数が増えたりすることも嬉しいが、言葉にして思いを伝えてくれると、ちゃんと見てくれているんだなと感じられて、喜びが倍増する。

 

 だが、俺はある時からこのTariさんに疑問を抱くようになった。


 もしかして、すぐ近くにいるのではないだろうか――と。



「俺の動画に毎回コメントしてくれてるTariって人……理代だよな?」


 ベッドに腰かけながらスマホをいじっている理代に訊ねる。


「えっ…………いやいやいや、ちちちがうってば!」


 全力で首を振って否定してくる。

 逆に怪しさしかない。

 

 だが否定した以上、決めつけることは出来ない。


 ――とでも理代は思っているのだろうか。

 こちらには、ほぼ確実とも言える手札があるのだ。


 俺は訝しむようにゆっくり告げる。

 

「橘 理代。それぞれの頭文字をとるとTariになるんだが」

 

「ぐぐぐぐうぜんじゃないかなー??」


 目を合わせずに上ずった声で答える。

 理代は嘘をつくのが苦手だが、ここまであからさまだと、笑いしかこみあげてこない。


「ちょっ、なに笑ってるの!?」


「あまりにもバレバレだから」


「わたしじゃないって、言ってるでしょ!」


 恥ずかしいのか、頑なに認めようとしない。


 それでも俺は、心からの礼を伝えた。


「毎回ありがとな。やっぱコメントもらえるとすごく嬉しいからさ」

 

「えへへへへ……はっ、間違えた! だからわたしじゃないってばー!」

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