プレゼント
「今日お誕生日ですよね。おめでとうございます」
その後輩は、部活動が同じだった。
ある晴れた日の放課後、校舎と体育館を結ぶ渡り廊下で呼び止められ、少し大きく膨れた袋を渡された。
「あ、ありがとう」
紙とも布とも言い難い素材の袋が、赤いテカテカのリボンでキュッと口を縛られ、造花もくっつけられている。
プレゼントをその場で開けるのは礼儀だから、持っていた鞄を床に置き、リボンに手を伸ばした。すると彼女は、笑いながら、
「先輩、明日が何の日か知ってます?」
にこやかだが、好きになれない笑顔だった。
「いや?」
素直に答えた。
「私の誕生日なんです」
「ふーん」
答えながら、テカテカのリボンを解いた。
彼女の笑顔は相変わらず気に入らない。
そう思っていたら、真っ暗な世界に一人きり。
あれ。
空は明るい。
見上げたら、ギザギザに切り取られた空があって、あの気に入らない笑顔が覗き込んでいた。
「ありがとう、先輩」
「おい、どういうことだ!」
「どうって、そのままですよ」
上からこちらを覗き込む、楕円の瞳がへの字に曲がった。
「素敵なプレゼント、ありがとう」
ギザギザに切り取られた空が萎んで消えた。
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