第3話 ワードISワード
「それで助手よ」
「なんでしょう」
「作家になると意気込んだが、インスピレーションが沸かない」
「才は天から降ってくる訳ではないですからね」
「では、どうすれば」
「そうですね、まずは本を読んで、大なり小なり感覚を掴んでみましょう」
「わかった、しかし問題がある」
「と、言うと?」
「私は漢字が不得意で、本が読めないんだ」
「では読み聞かせましょうか」
「いやいや、なんか・・・恥ずかしいからいいよ」
「では本以外で作家の境地に立つには・・・」
「思いつくか?」
「あの手がありました!」
「オーソドックスなので頼むぞ」
「はい、では行きますよ」
「どこにだ!?」
「着いてからのお楽しみです」
それから私たちは大東京の真っ只中を横断した。
「ここは・・・?」
「コミケの会場です」
「それってアニメの本が売ってるサークル市販会だろ???」
「そうです、ここの人たちの熱気見てください」
「なんか凄い眼光をしてるな」
「そうです、ここに居る大半は本に魅了され集った猛者達なんです」
「なるほどつまり、ここで彼らと同じ行動をとれば、何かしら知れると?」
「ええ、では行きましょう」
「まず質問なんだが、あの方たちは一体?」
私の眼先には、三次元を逸脱したファッションが大っぴらに露見していた。
「あれは、いわば愛ゆえの行動心理でしょうね」
「愛の体現って多様化してたんだな」
「では私たちも着替えましょう」
「え?ええ?なぜだ??」
「言ったでしょ、深淵を覗くなら、またこっちも深淵になれと」
「そんな言葉あったっけ?」
「無くもないです、意味が通じれば全て言葉と言えますから」
「哲学だな・・・だが、何に着替えるんだ、さすがにフリル系はなしだからな」
「これです!」
それは明らかな秋葉装飾と言える、グロスの効いた服だった。
「こんなピカピカの服着れるか、タイツやないかい!!!」
「この服、特注なんですよ、無駄にする気ですか?」
「そんな無垢な顔でこっちを見るな」
「泣きますよ?」
「わ、わかった、着るから着るよ」
私はせっせと着替えた。
ちなみにグロスとは、スパイダーマンの服のような、ぴっちりしているものの事だ。
「着替えたぞ」
「お似合いですよ」
「これで、本当に何か作家のための足掛かりを見つけれるんだろうな」
「どうでしょう?」
「もっと励ますことを言ってくれよな・・・」
「人間形から入るのは大事ですよ」
「その言葉の元ネタ、形から入ったらダメって言う事を言ってたような」
「大丈夫です、言葉にあるとされる意味合いなんて、人それぞれ違うものですから」
「では作家として、私が意図して言葉を並べても、違ってくると?」
「そうですね、言葉に対する入れ込みが人それぞれ違いますから」
「なるほど、では作家とはそれを考慮し、出来るだけ大衆心理を突いた事を言えばいいのではないか」
「確かに言えますね、ヒットしてる本はどれも、共感を抱けるものが多いですし」
「共感か、いいことを知った、で、君は、私の格好に何か共感じみたものを感じたか?」
「ええ、申し訳ないことをしたという同情が芽生えてます」
「なな!!もう着替える!!!」
そうして禍根を残しながらも、互いに新たな節目を迎え
家に帰る二人、
たわいない事を話し、じゃれたようで、尊い時間を過ごした。
事実、作家としてはまだ始まってもいなく、それでも、いつか言葉にして届けたいと。
その心意気は確かに二人を包んでいた。
まだまだ続く。
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