第2話 ライターISライター

「助手よ」

「なんでしょう」

「人生について考えた事はあるか?」

「いいえ、ありません」

「なぜだ」

「脈略のないあまりに抽象的な概念など、私には重すぎます」

「確かに人は全てを理解するほど堪能ではない、しかし興味は持てるだろ?」

「先生、人は有限、限りある時間の中の生き物、先の見えないことを考えても徒労に終わるだけです」

「そうか、残念だね、限界を決めてしまうなんて、実に勿体ない」

「先生自身は、限界知らずだというんですか?」

「そうだとも、最近は空を飛ぶために、首を高速回転させ、ヘリコプターの原理で飛ぶ練習をしてる」

「死にますよ・・・」

「ま、冗談だが、それくらい予想超える現実を絶やさず夢想するのさ、」

「なら作家になったらどうです」

「作家はとても危険な職業なんだよ」

「どうして?」

「あの話を知らないのか?」

「え?」

「作家の起源とはスパイから始まっているんだ」

「戦争の道具だったと?」

「作家という言葉には今もなおその怨念がある、例えば作家を英訳すると、ライターだ、そしてライターとは着火剤、つまり和製英語で火種という意味があるんだ」

「それで戦争の火種という意味だったんですね、知りませんでした」

「いいさ、ただこの瞬間、君は私の言葉で思想の限界をまた一つ越えたのさ」

「またさっきの話にかこつけて、うまいこと言ってますね」

「これもまた一興だろ、」

「じゃそろそろ行きますか」

「どこに?」

「戦争をしに行くんですよ」

「どういうことだ」

「あれ、理解度の限界を超えた発言しちゃまいしたか私」

「君も策士だな」

「いいえ、ただまだまだ戦っていたいんですよ」

「何のためにだ」

「決まってます、私の戦う理由、そして勝ち取りたいもの、それは・・・・」

「言うな、もう私もわかった」

「では行きますか」

「ああ、毎日が最高のバースデー、ろうそくに火を灯すんだろ」

「ええ、作家になって命を祝福する、ロウソクの火種になりましょう」

「ああ、わかった、乗ったよ。」

「じゃ行きましょう」

「ああ、今日から私たちはファイターだ」

「火だけにですか」

「あまりツッコムな、漫才じゃないんだからさ」

「ええ、本気ですものね」

「ああ」

「じゃ、改めて、ファイヤーバースデーキャンドル作戦開始です」

「なんだ小粋な横文字並べよって、だがいい、それでこそグローバルだ」

「ええ、世界進出しちゃいましょう」

「盛り上がってきたな」

「燃え上ってきたのお間違えではなく?」

「またまた君は、しかしそうだな、行こうか」

「ええ、作戦開始です」


そうして二人は作家になると意を固めた。

世界を灯す戦争、これを題目に人生をかけた旅が今始まるのだった。

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