第3話 50年前の写真
今は昭和49年だって? こいつめ。答えが分からないからとぼけてきやがったな。さてどうするものか。昭和49年は1974年で今から50年前か。このままタイムスリップごっこに付き合うかどうか。
少し気になることもある。ノートの紙がやたら古い感じがする。もしかして本当に幽霊が書いているのか。いやいやそんなことはあるわけない。しかも数学をやる幽霊って。
ちょっと試してみるか。こちらから写真を送り吉岡さんにも写真を送るよう頼んでみよう。
ノートを持って学校の校門に出た。スマホカメラを向けて長瀬高等学校と書いてある銘板をカメラの枠に入れる。そしてノートを持ち手前に写るようにする。こうすることで他の写真を引用したことにはならない。
校門の左手には花壇があり蝶が飛んでいる。蝶が羽ばたくと幸せが訪れるという伝説があり、花壇を荒らすなというメッセージが込められている。
校門の右手には石碑がある。石碑には昔は学校ではなく病院だったらしくその経緯が書かれている。
写真をパシャリと撮った。学校に戻りプリントアウトしてノートに貼り付けた。
6月17日 山本優斗
写真を貼り付けました。
吉岡さんも手前に班ノートが写るようにして写真を貼り付けてください。
さてどうなることやら。
返事が帰ってきた。班ノートの中には分厚いものが張り付けられている。これはポラロイド写真だ! 写真には僕と同じように校門と班ノートが手前に写っている。学校名を見てびっくりした。
長瀬病院? 高校ではなく病院と書いてある。たしかに昔は病院だった。落ち着いて本文を読んでみよう。
6月19日 吉岡久美子
とても鮮明な写真で驚きました。本当に50年後なのでしょうか。そして病院ではなく学校なのですね。
石碑の文字が読めます。平成六年七月十三日に何か災害が起きたのでしょうか。避難訓練をしていて怪我人がいなかったとは不幸中の幸いです。
僕は手が震えた。本当に50年前にタイムスリップしているのか。ポラロイド写真は解像度があまりよくいない。それでも写っている班ノートが綺麗なことに気づいた。今の班ノートはボロボロだ。それにポラロイド写真には校門の横に石碑がない。花壇もなく殺風景だ。とにかく僕はこのタイムスリップごっこに付き合うことにした。
6月20日 山本優斗
今は長瀬高校です。昔は病院だったそうですね。
僕の母さんは長瀬高校出身で、母さんが高校生のときに土砂崩れが起きて古い校舎が全壊したそうです。偶然にも避難訓練をしていて怪我人はゼロだったそうです。
そして病院が学校になりました。病院には食堂も図書館もありすぐに移転できたそうです。元病院はエアコンもあって喜んでいました。
6月21日 吉岡久美子
とても驚いています。この病院が長瀬高校になるなんて。院内の食堂と図書館が使われているのですね。とても感慨深いです。とういうことは山本さんは長瀬高校の生徒なのでしょうか。
僕は高校生だが吉岡さんはいったい何者なんだろう。僕は気になることを聞いてみた。
6月24日 山本優斗
僕は長瀬高校の高校2年生です。
病院ということは吉岡さんは入院しているのですか?
今おいくつなのでしょうか?
50年後ならおばあちゃんになってどこかで会ってるかも知れないですね。
6月25日 吉岡久美子
病気のことを聞かないのがこの班ノートのルールです。
それに女性に年齢を聞くのはマナー違反です。
私も長瀬高校の生徒です。
返事が返ってきた。女性に年齢を聞くのは失礼だと怒られてしまった。そうだよな文通で年齢は聞いてはいけない。病気も何か人に言いづらい病気なのかも知れない。本当に高校生なのかは怪しい。もしおばさんで30歳なら今80歳になっているよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます