第2話 返事が返ってきた

 気になってまた東館に行ってみた。古びた班ノートを見てみた。

 

6月6日 吉岡久美子よしおかくみこ

1 1 2 3 5 8 13 

次は?

   

 

 え? 新しい書き込みが増えてる。誰かが書いたのかな。生徒でないなら職員の人か外部の人か。問題の答えはすぐに分かった。前のふたつを足したものが次の数になる。これはフィボナッチ数だ。

 フィボナッチ数というのは自然界でも多く登場する。黄金比の1・618はフィボナッチ数から出てくる。ひまわりの種や巻き貝の数もフィボナッチ数になる。うさぎのツガイが子供を産むその増える数もフィボナッチ数だ。フィボナッチ数は自然界の掟を表している。8と13を足して答えは21。僕は答えを書いた。

 

6月7日 山本優斗やまもとゆうと

答えは21です。

これはフィボナッチ数と呼ばれ自然界にも登場します。

   

 

 しっかし古いノートだな。かなり色あせている。ノートを引き出しにしまった。次の日また東館に行ってみた。

 

6月10日 吉岡久美子

2 1 3 4 7 11 18 

次は?

   
 

 また新しい書き込みだ。やはり誰かが書いている。誰かのイタズラか。かといって悪いことをしているわけではないしな。

 今回の問題は前の2項を足したものが次の数になる。これは前回のフィボナッチ数と同じだ。違うのは初項の1が2に変わっただけ。答えは29だ。そこでふと思いついた。今度はこちらから問題を出してみよう。班ノートに書いた。

 

6月11日 山本優斗

答えは29です。初項が違っても自然界の掟は変わりません。

今度はこちらから問題を出します。

45 15 64 31 

次は?

   

 

 これは明治・大正・昭和・平成で答えは令和の6年だ。こういうなぞなぞもいいだろう。次の日。早速返事が帰ってきた。

 

6月12日 吉岡久美子

45 15 64 31  

答えが分かりません。

   

 

 本当に? 僕はびっくりした。無理もないか。確かに急になぞなぞに変わったからな。

 

6月13日 山本優斗

明治45年。大正15年。昭和64年。平成31年。答えは令和6年です。

 

6月14日 吉岡久美子

昭和64年とはなんでしょう。平成と令和が分かりません。今は昭和49年ですよね。

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