第33話 町へ
現在、僕は5歳になり町の入口に立っている。
付き添いは両親のみ、移動方法は徒歩で全力疾走。
向かった町はあまり知り合いの居ない町にしたそうで少し遠回りをしたらしいが、事前に皇太子のアレックスさんに伝えて教会から僕の情報が漏れないように準備しておいて貰ったらしい。
世の中色々あるみたいだ。
大体3~4mくらいの石壁に囲まれている町で、初めて見る光景にワクワクしていた。
「どうだ、アンドレイ。村とは違うだろう!」
「すごい!かっこいい!!」
「そうかい、かっこいいかい。そりゃあ町を作った奴も喜ぶだろうよ、アハハハ」
列があるわけではないが、ゆっくりと周囲を楽しませてもらいながら町の入口へ着く。
入口に居る衛兵の人はお父さんとお母さんの図体の大きさ、そして顔の厳つさに怖がっているのかもう一人の衛兵と共にあたふたしているようだ。
「話通してくるわ」
そう言ってお父さんは小走りで先に入口の衛兵の所に行き、何かを話しているようだがこちらには聞こえない。
だが見ていると、すんごい頭を下げられてる。
あっ、握手してる。
なんか、有名人みたいな扱いを受けてる……、すげぇ。
すたすたとお父さんは戻ってくる。
「案内してくれるようだぜ。それとダッラにもぜひ挨拶したいとよ」
「アハハ、そうかいそうかい。こんな身を尊敬してくれるってんならいくらでも歓迎するさ」
ミーハーな僕はちょっとキラキラした目で両親を見てしまっていた。
3人で入口に着くといつの間にか衛兵の人数は増えていて、野次馬なのか普段着っぽい人も居る。
そんな中ちょっと装備が良さそうな人が歩み出て来る。
「ようこそおいでくださいました。我々衛兵隊一同、心より歓迎いたします。私この町、マレンの衛兵隊長を勤めさせていただいております。タイルと申します。私がご案内させていただきます」
おおう、すんごいVIP待遇じゃん。
「そうかい助かるよ。だが、あたしらにそんな言葉遣いをする必要なんてないさ。ただの戦士団だよ、兵士と変わらない」
「いいえ!!断固としてそうはいきません!!我々は旧王国貴族の圧政に対し反旗を翻した一団の一つなのです!その際、戦士団の皆さまの活躍により我々も救われた者の一人なのです!!拝見させていただいた戦いぶりはまさに神々が舞い降りたかのように思える程だったのです!!そのような方に無礼などあっては生涯の恥となります!!」
めちゃめちゃ聞き取りやすい早口で戦士団を褒め殺した為、両親もすんごい照れてる。
なぜか僕も照れちゃう。
「わ、わかったわかった。そんなら案内頼んだぜ」
「は!!お任せください!!全員配置に戻れ、非番の者は護衛に徹しろ!」
『は!!』
全員一糸乱れぬ動きで散開していく。
普段着の人がどうやら非番の人みたいだ。
その光景を見てお父さんが感心する。
「よく訓練しているもんだ。言っちゃ悪いがただの衛兵がここまで動けるとこはそうそうないだろう」
「我々は誇りを持って衛兵をしております。冒険者に頼りきりになど決してなりません。この町の民を守る為、日頃訓練を怠らず行っております!!」
その言葉を聞いて二人は深くうなずいていた。
案内してもらいながら教会へ向かう。
道中で衛兵に護衛してもらっている僕らを見て手を振ってくる人や声を掛けてくる人が居る。
その度にお父さんとお母さんはそれに対応していき、人だかりも出来始め、衛兵も周囲を警戒しつつ護衛を続けていた。
僕は周囲をキョロキョロ見ながら、しっかりとついていく。
そんな中、護衛の一人がこそっと話しかけてくる。
「お坊ちゃんお坊ちゃん」
「え?」
「お坊ちゃんはあの二人の息子だろう?」
「うん」
「てことは、戦闘訓練とかはやってるのか?」
「うん」
「すげぇよなぁ、羨ましいよなぁ。俺も戦士団の皆さんに指導されてみたいもんだよ」
「そうなんだ。何時も一緒にやってるから当たり前になっちゃった」
「一緒にやってんのか!!羨ましいぜ~」
多分マジで羨ましいんだろう、周囲の護衛の人も聞き耳を立てて頷いている。
だが、もちろんそれは衛兵隊長タイルさんにも聞こえていたみたいで……。
「バカ者が!私語を慎め!!」
「すみません!!」
と言ってまた配置に戻っていった。
非番なのに、多分無給なのに、ありがとうございます、ほんと。
両親が思った以上に人気があった為、結構時間がかかってしまったが教会の前に着いた。
護衛をしてくれた衛兵の人達は教会の前で待ってくれるそうだ。
ぼくは、戦士団の皆がここまで色々な人に認められているという事がとても誇らしく思えた。
目の前にある教会は豪奢な感じはせず、想像よりも2倍大きい以外は普通の教会に見える。
僕はここで初めて自分のスキルを知るのだ。
内心すっげぇワクワクしていた。
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