第27話 魔物との初戦闘

それから撤去作業が完全に終わるまで他の騎士や傭兵と模擬戦等をして戦士団の皆は日々を満喫し、村に来ていた人が全員帰るといつも通りの日常に戻り、僕の訓練には対人訓練とアリーさん直伝の回復魔法の訓練が追加されることになった。


小さい内から、力を使った戦い方は難しいという事になり、身軽な動きが得意なカイルさんから集中的に教えてもらい、その際痛みに耐える訓練と回復魔法の訓練もしたいと申し出た為使う武器はお父さんに貰った竜の剣を使う事になった。


その後、アレックスさんからダメージを肩代わりして限界が来ると音を立ててセットした魔石が砕けるネックレス型の魔道具と、魔力を封じる腕輪を送ってもらい更に訓練が捗るようになった。




そして時が経ち3歳を過ぎ、4歳になった頃僕は両親と、アリーさん、カイルさんと共に村の外に出て森の中に居た。


なぜ森に行けるようになったかと言うと、模擬戦で僕は魔力の使用がありならばカイルさんや他の戦士団の皆に安定して勝てるようになったからっていうのがまず一つ、そして恐らくスキルの獲得したというのも一つになっている。


模擬戦の勝ち方はワンパターンだけど自分で言うのなんだけど、ハメ技としか言えない連携を作った。


まずは開始早々に光魔法とで目潰しした上火魔法をわざと地面にぶつけて爆音を鳴らし、自分の居場所を悟られにくくしてから、重力魔法をかけて動きにくくして、更にその上から土魔法で土を降らせて固めて動けなくさせるというもの。


火属性の魔法は基本的に怪我をさせる前提の攻撃になってしまうからあまり使わなかった。


正直魔法のみで勝ってもあまり嬉しくないが、皆からは勝てるならなんでも使うべきだ、と言われて確かにその通りだと感じた。


勝てるようになってから、両親からスキルを得られた感覚を覚えた事はある?と聞かれ、身に覚えのある感覚だと剣と大斧は明らかに使いやすくなったし、体力の回復もかなり早くなり、力も不自然なほどついた気がすると伝えた所、次の段階に移行しようとのことで森に来れる事になった。


今日使っていいと言われた武器は刃引きのされた剣、魂を強くしてしまうことはスキル獲得の難易度を高めてしまうそうで間違えても敵を倒さないようにする為に渡された。

「今日の目的はゴブリンって言う魔物だ、弱いが油断は出来ねえ。今日の所はただの体験ってとこだな」


「相手は命を狙ってくるんだ、絶対に油断しちゃあいけないよ?」

もちろん死ぬのは嫌だから油断はしない。

「うん、わかった」

みんな楽しみなのかニコニコしてる。


少し歩くと直ぐにゴブリンが現れた。


と言っても僕が気付いた訳ではなくお母さんが一番先に気付き教えてくれた。


数は3体、僕はゴブリンの元へ一人で歩いていく。


まず第一に死なない事、第二に倒さない事を念頭に置いてゴブリンの近くまで来た。


3体のゴブリンは僕に背を向けて小動物を食べており、僕の気配に気づいたのかゆっくりと振り返って僕を目に入れた瞬間騒ぎ始める。


身長は僕より高く、悪い魔女みたいな顔をしてて大きく口を開けて騒ぐもんだから、口から臓物が垂れててるのも合わさって気持ちが悪い。


3体は、ニタニタ笑いながら少しずつ距離を詰めてきた為、僕も備えておきながらゴブリンの方に歩いていく。


一定の所まで近づいた瞬間一気に飛び掛かるように突っ込んできた。


と同時に、地面に叩きつけられる。


流石に最初から3体相手に堂々と戦う気はなかったから重力魔法を準備していたけどそれが功を奏した。


まずは1体の重力を解くと、それと同時に襲い掛かってきた。


正直いて予想より動きは鈍い、だけども油断はしない。


まずは軸足のみに身体強化を使い、鳩尾の当たりに前蹴りをいれる。

「ギュァアアアアアア!」

ちょっと吹き飛んだのはいいんだけどその後うずくまって苦しみだした。


さすがに跳ね返されたりして、少しは苦戦するもんだと思ったけど確かにあまり強くなかった。


でもきっと掴まればやられてしまうと考え油断せず、うずくまっているゴブリンに重力を掛けた後、残り2体の重力を解いて剣を構える。


1体目同様に、わき目を振らず僕の方へ突っ込んでくる。


このままじゃ同時に攻撃されそうなので左のゴブリンの方へ移動し壁にしながら戦う事にした。


両手を伸ばし掴みかかってきたので左にずれながら足を強く打ちながらすくい上げ、2体目に向かったが同じように襲ってきたので鳩尾を突く。


2体とも立てなくなってるのを確認して重力を掛けて皆の所に戻ろうとしたら、急に背後から石が飛んで来た。


辛うじてギリギリ避ける事が出来た為襲撃に備えていると、投げてきた方から皆が歩いてくる。


(正直そんな気はしてたんだけどね)



「初戦闘にしては上出来な動きだったよ。石を避けたのも良かった」


「ッフ、普通なら上出来どころじゃないんだけどな」


「ガハハ、うちのアンドレイは普通じゃないぞ。何てったって超強いんだからな!!」


「ほらほらみんな今日の所は帰って反省会するよ。カイルもアリーも夕飯食べるだろう?」

お母さんのその言葉に二人は頷きながらゴブリンに止めを刺していく。



正直言ってゴブリンを相手にしたときや倒したときに何か感じる事があるんじゃないかと思っていた。


でも実際にはなにも感じなかった。


落ち着いていたし、相手をちゃんと見れていたし、容赦なく攻撃できた。


訓練し続けたからとは言え過去の自分ならこうはいかなかっただろう、その事実にちょっと怖くなって表情が暗そうになるけど頭を振るって頭からその考えを振り払い、顔に笑顔を浮かべて皆と一緒に帰路についた。


こういう悩みも僕を強くしてくれる要素の一つになってくれるはずだ。

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