第26話 僕への報酬
目が覚めると外は明るくいつもの天井、家に運ばれたんだろう。
起き上がろうとするが動けない、体が怠い、この感じの怠さは今まで感じたことがない。
風邪の怠さとも違い具合が悪いわけではないし、筋肉痛みたいに体が動かせないとも違う。
昨日の演習の時に魔力を使い切ってしまったのか。
あの時は、周囲の魔力を使う事にも気を使いながら自分の魔力を必死に送り込み続けたから限界を見誤ってしまったのかもしれない。
魔力を使い切ると具合が悪くなって倒れちゃう位に考えていたけど、こんなにも引きずるとは改めてこの世界での魔力を扱う事のの重要性を思い知った。
体は動かない、魔力も感覚的にあまり回復していない、かといって暇すぎる。
前だったらこんな時は無限に寝れたのに、今は動きたくて訓練したくてたまらない、体がムズムズする。
昨日も襲撃者に対し容赦無く、重力魔法をかけられた。
それも前だったら絶対に怖くてできなかった。
そもそも狙われてるってわかった時点で怖くなっていただろうに不思議と恐怖は感じなかったし、最初に生まれた感情は怒りだった。
僕はきっと変わったんだ、この世界に順応したということかな。
ほんの少し寂しさを感じた。
だけど見方を変えれば、人として更に成長できるチャンスという事だ!これからも頑張ろう!とポジティブに考えていたが動けない状況は変わらず。
ずーっと天井を眺めてボーっとしているとドアの方から足音が聞こえ、ドアが開き歩いてきて顔を覗いてくる。
「おおおおお!起きてたかああ!頑張ったなぁ!!ありがとうなあ!」
僕が起きているのを見たお父さんが途端にわしゃわしゃと髪を撫でながらそう言い、部屋の外に出ていき「起きたぞおおおお」とバカでかい声で叫んでいた。
そんな叫ばないでも聞こえるだろうに、僕はちょっと苦笑いした。
一番先に来たのはお母さん
「よく頑張ったね!ほんと頑張ったねぇ!」
そういいながらちょっと涙目になっている。
続々と人が入ってくる。
アレックスさんと家族もアリーさんもデレじいさんも居て、皆にワチャワチャにされてちょっと恥ずかしい。
「坊ちゃん大活躍じゃねぇか。ほんとすげぇもんだ!」
「その通りだね。襲撃者の制圧からアリーの援護まで、本当に素晴らしい活躍だよ」
「遠くで倒れる姿を見たときはすごく驚いたのよ?」
(アイリスちゃん、動けない僕の頭を撫でるのは辞めてくれい、恥ずかしい)
「魔力が枯渇するまで無理をするのはさすがに褒められたもんじゃないけどアンドレイには心から感謝してるよ。あたしらの演習で決着がつくことなんて滅多になかったんだ。今回の演習が大成功したのは間違いなくあんたの功績が大きい」
「話半分で見に来ていた他国の貴賓や貴族たちも相当驚いていたし、騎士達も熱気にあてられたようで模擬戦していたよ。それに……。」
そこでアンドレイさんの言葉が詰まり、皆の視線が集まる。
「それに?」
思わずといった感じか、吹き出す口を手で隠して話し出す。
「フフッ、演習が終わったあと最近ちょっかいかけてきてる国の外交官が青ざめた顔で慌てて帰って言ったからね。中々愉快だったよ」
「俺んとこには勧誘を匂わせて来るやつもいたぜ。興味もなかったがな、ガハハハ。そんで?そんなら今回の演習は国にとっても大成功だったってことだな?」
「もちろんさ、たった一部隊の演習にこの効果だ。君たちの抑止力は本当に凄まじいものだよ。あの時、全力で勧誘した自分を褒めてあげたいところさ。ところでアンドレイ君、何か欲しい物は無いかい?あれほど頑張ったんだ。何かプレゼントしよう」
「おお!太っ腹だねぇ!アンドレイ、遠慮せずに言いな!」
そう言われても、欲しい物は全部1歳の時貰ったし何もいらないんだけど……。
考えてみると一つ、物ではないけどやりたいことがある。
まだ早いって言われるかもしれないけども、お願いするだけしてみよう。
「ものじゃなくて……せんとうくんれんしたいです」
そういうと僕の頭をずっと撫でてるアイリスちゃん以外固まる。
数秒後アレックスさんが口を開く
「……へ?戦闘訓練……?」
「つよくなりたいです」
と言った瞬間。
お父さんにグワッと掴まれ高い高いされ
「よくぞ言ったぞ!俺の息子おおお!!」
その背後ではお母さんが泣いている。
アリーさんは呆れており、デレじいはポカーンとしている。
そして今だに固まっているソフィアさんは固まっていた。
するとアレックスさんはこう言った。
「ハッ、ハハハ、さすが二人の息子だね。」
「当然だ!!!俺達の息子は俺達より絶対強くなるからな!!!」
「フフ、そうだね。それならダルガス、戦闘訓練に必要な魔道具を幾つか届けるから使ってくれ」
何やらお願いしてみたら大正解だったらしい。
「おう、助かるぜ!!そんなら早速外にいって訓練するぞ!!」
と言い、お父さんは動けない僕を抱えて家を出ていく。
外は撤去作業に追われているようだ。
その後、僕が動けない事を思い出したお父さんは家に戻り、病み上がりの僕を連れて外に出たという事でお母さんとアリーさんに怒鳴られていました。
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