第24話 演習の日

演習の日が来た。


早朝に起きた時にはお父さんは既に居らず、アレックスさんも居なくて、今日ばかりは訓練をお休みする事にしようと思っていたので、朝食を食べた後は時間までゆっくりしようとしていたらアイリスちゃんに話しかけられて。

「剣士ごっこしよ」


「いいよ」

アイリスちゃんと剣士ごっこをして遊ぶ事にしたけども、ソフィアさんは少し心配そうな顔でこっちを見ている。


だが任せてほしい、闇属性は重力魔法は重くする事も出来るが軽くすることも出来るのだ。


怪我をしないよう、転ばないように重力の掛け具合を調節しつつ僕は楽しんでほしいのでやられ役をやってあげていると。

「うふふ、アンドレイ君ありがとうね」

温かい目で見守ってくれているソフィアさんから褒められた

「だいじょうぶ、たのしいから」

恐らく色んな方法で切られたふりをして倒れているので外から見ていると結構面白い光景になっていると思われる。


その後も剣士ごっこを続けていると、ドアがノックされる。


お母さんが向かってすぐに戻ってくる。

「時間だ、出発するよ」

身支度は既に終えていたので僕はお母さんに抱っこされ、アイリスちゃんはソフィアさんに抱っこされ出発した。


村はまるで町に居るんじゃないかくらい活気に満ち溢れている。


僕はキョロキョロと周囲を見渡し、これだけ注目されているのかと再確認してドキドキしてしまっていた。


人込みに飲まれないよう、少し脇にそれたりしながらも時間がかかる事もなくお父さんとアレックスさんの居るところに到着、アリーさんも居た。

「よーし、来たな。そんじゃ早速別れるぞ。アンドレイはアリーさんと一緒に行動してくれ。アリー頼んだぞ」


「任せて」

僕はアリーさんにに渡され抱っこしてもらい、お母さん、ソフィアさんとアイリスちゃんはお父さんとアレックスさんと一緒に移動しその場を離れていく。


訓練場は元々サッカーコート位の大きさだったけど、さらに大きくなって畑が出来そうなサイズになっていて、周囲には既に人で溢れている。


アリーさんは僕をだっこしながら訓練場に建てられた、朝礼台のような物の上に立ち、ぼくを傍らに降ろしてくれた。

「そろそろ始まると思うから待つよ」


「うん」

周囲から視線が集まってきてちょっと恥ずかしいけどアリーさんの傍らで静かに待つ。


そしてあまり時間もかからず、戦士団の皆が駆け足で入場してくる。


皆両腕に赤と黄色の布を巻いている。


皆表情は柔らかく、この状況を楽しんでいるようにも思えた。


訓練場の中心でそれぞれの色に分かれ、距離を取って向かい合う戦士団。


お父さんとお母さん分かれておりカイルさんとデレじいはお父さん側に居る。


(もしかして、相手は居ないのかな)


そんな疑問を持っていると、お父さんが前に歩き真ん中に立ち周囲を見渡し息を吸い込む。

「これより!《笑う戦士団》の演習を開始する!!勝敗は、それぞれ陣営の代表を倒すことだ!!赤色の代表はこの俺ゴルダス!!そして!!」

と言うと、お母さんが前に出て来て

「黄色の代表は、あたしだ!」

と声を上げると、お父さんが手を叩き発破をかける。

「よっしゃぁあ!てめぇら、気合を入れろよ!!配置につけ!!!」

だだっ広い訓練場の中で、二手に分かれ離れていく。


配置につけって言ってたけども、どっちの陣営も代表が少し前に配置された状態で横一列に並ぶ。


僕は二人が後ろに立つようなタイプではないと知っているし、戦士団の皆も後ろに立つタイプではない。


人数的には赤色陣営お父さんと13人対黄色陣営お母さん14人。


それぞれの陣営は静かに笑みを浮かべながら戦意を高めていく……。


隣に居るアリーさんが息を深く吸い込む音がする。

「お前ら!準備はいいか!!!」

その声に呼応するかのように『おう!!』と戦士団の声が聞こえる。

「分かってるだろうがこれは演習だが、ただの演習じゃない!!油断してるやつがいたら首を搔っ切ってやりな!!死にたくなければ全力でやれ!死ななければ治してやるよ!!」

隣に居た僕は普段見た事のないアリーさんの迫力にビビっていた。


「じゃあいくよ!はじめぇええ!!」

勿論、そんな僕に構う事は無く、アリーさんは号令を掛けるのだった。

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