第22話 村の現状と楽しみ

その後も話は続き、お父さんは今の村の帝国での立ち位置を話してくれた。

「今の俺たちは帝国所属の人間なんだが兵士でも騎士でもなくてな。国から給料を貰う事はないし、貴族になったりすることもない。戦士団っていう特殊な立ち位置でな、《笑う戦士団》って呼ばれてんだ。この村が俺たち戦士団の拠点って事になってる。役割は簡単でな厄介な魔物が出てきたり、戦争があった時には参戦して前線に行ってとっとと終わらせるっつーのが俺らの仕事だ」

それを聞いてお母さんが笑う。

「ハッハッハ、《笑う悪魔》から《笑う戦士団》だからね、ハハッ、正直名前だけ見たら弱くなってるわな」

お母さんの言葉に対し気に入らないのかお父さんが鼻を鳴らす。

「フンっ、どう考えたって悪魔じゃあねぇ。可愛らしい笑顔だろうがよ。天使の方がお似合いだってんだ」

僕は二人の笑顔を誰も知らない人がみたら天使よりも悪魔だと感じると思った。


そんな感じで少しの間談話していたのだが、フッと思い出したかのようにお母さんはお父さんに対し提案をした。

「ゴルダス、そういえばアンドレイが産まれてから一度も演習してなかっただろう?そろそろやらないかい?」


「あぁ~、そうだな。しばらくやってないしそろそろやるか」

二人の会話が気になり僕は質問した。

「えんしゅう?」


「ああ、演習っつーのは、簡単に言うと全力で戦う訓練のことでな。前は時間を持て余してる時に体を鈍らせないようにやっていたんだが、ここ2年はやってなかったからな。まあ、この村の周囲は結構魔物が多いから相手には困らないからやっていなかったっつーのもあるんだがな」

そういうと髭を撫でながら考え始め。

「うーん、そうだなぁ。一応報告と予定を組まなきゃいかんからなぁ。大体3か月後位にするとして詳しい日程は向こうに決めてもらうか。」


「それでいいんじゃないか」

演習と言うぐらいだから相手が必要なのだろうか。


ちょっと気になって聞いてみた。

「だれかとやるの?」

と聞くと二人は頭の上に?を浮かべたかのように目を見合わせ、思い出したかの様に答えてくれた。

「あ~、そうか、確かにそうか。さっき話した償いの話が関わってくるんだがな。俺たちがやる演習っていうのは相当見応えがあるみたいでな。見物客なんかも招待してやって金を稼いだり。他国のお偉いさんを招待してこの国を敵に回すとコイツらが出て来るぞって抑止力になるらしいんだ。そんで、それで発生した金は俺たちが被害を与えてしまった人たちとかそれに関係してる人達が苦しい生活をしなくて済むように使われるんだ」


「アンドレイはアリーと一緒に最前列で見るといい、見応えはあるだろうからね」


「アリーさんはでないの?」


「そうなんだよ、アリーに見守っておいて貰わないと死んじゃう人も出ちゃうし、演習を続けてるどころじゃなくなることになっちまうんだよ。だからこそ、アリーに全体を見守ってもらった上でガンガン回復魔法使ってもらって戦闘を続けるのさ。演習の日を楽しみにするんだね。アリーの凄さってのが良くわかるよ。」


(やっぱりアリーさんってすごい人なんだ。)


日頃村の人……、いや戦士団の皆がアリーさんに対して何か敬意を払っているような……、そんな姿を見ていたから。


結局戦う相手の話は聞けなかったけど、そんな事はもうどうでも良かった。


只々演習の日が本当に待ち遠しく感じた。

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