第19話 人の為になる闇魔法
次の日、起きようとしても体が全く動かせなかった。
昨日やり過ぎたかなと思いつつ今度は身体強化を使うことでやっと動かせたが体中が筋肉痛で痛くて中々自由に動けない。
動きにくい体を引きずるような気分になりながらゆっくりゆっくり歩いて食堂へ向かう。
扉を開けると、お父さんが食卓についていたのだが僕の様子を見て抱っこしに来た。
「動きにくいだろうが、それは頑張った証拠だ。よくやったぞ」
そう言って椅子に座り僕を膝に乗せてくれる。
「そうだけど、かなりつらい。でもきょうもできるかぎりやる!」
それを聞いたお父さんは笑いながら撫でてくれた。
「ガハハッ、だがその状態で無理をしても意味はないからな。今日は軽い運動と魔力の訓練を重点的にやるといい。そろそろダッラがご飯作って持ってきてくれるだろうから待とう」
そう言ってぼくを隣の席に座らせてくれた。
「まつ!」
それからあまり時間も経たずお母さんがどでかい皿を二つ持ってくる。
「おや、起きてたんだね。いっぱい食べるんだよ。食べれば食べるほど体は大きくなるんだからね!」
そう言ってくれるお母さんに、僕はもっと体を大きくして運動しまくっていきたいと思っていたのでお願いをする。
「たべる!それとおかあさん、もっていくごはんをもっとふやしてたべたい」
それを聞いて喜んだ様子で「任せときな!」と言って頷いてくれた。
お母さんの作ってくれる料理はとても美味しい、食べやすい大きさにしてくれてるし、ボリューム満点だし、パンも料理で出てくる旨い汁を染み込ませてくれていて柔らかくて美味しい。
油っこいのはこの体に大丈夫かなと思っていた時もあったが、気持ち悪くなった事は一度もないし、毎日毎日最高の食事を楽しんでいる。
ご飯を食べたらちょっと回復してきたので外に出て訓練することにした。
「いってきます!」
と言って「頑張ってこい」と言う言葉を背に家を出て広場へ向かう。
訓練を始める前に、昨日やり忘れたストレッチをちゃんとする。
この体でストレッチはなかなかやりにくいがそれでもできる限り体をほぐす。
歩くだけでも体は痛いけど体力をつけるために小走りで広場を周回し、疲れたら身体強化多めで転ばないように重力を扱いつつ剣をゆっくり振り、そこでもまた疲れて来たら少し休みつつ水分補給とご飯を沢山たべて一度休む。
それを二回ほど繰り返して休んでいると髭もじゃの体が大きくデカい剣を背負ったおじさんが近づいてきて話掛けてくれた。
「坊ちゃん、頑張ってるな。俺も一緒に混ざって良いかい?」
僕は何故かそれがとても嬉しく感じて二つ返事で返答する。
「もちろん!」
「おお、そうか!ありがてぇ。坊ちゃんの頑張ってる姿を見てたら負けてられねぇってなってな、他の奴らも躍起になって訓練場で鍛えてるんだぜ」
僕の訓練が皆のモチベーションになってくれてるのはとても嬉しい、だけども僕は髭もじゃさんの名前がわからないので聞いてみた。
「おにいさんのなまえは?」
それを聞くと目を丸くした後、大笑いした。
「ウハハハハハハ!俺がおにいさんか!!ウハハハハ!坊ちゃん、俺の名前はデレルンっつーんだ。おにいさんなんて呼ばずにオジサンでいいぜ!なんだったらジジイでも良い!ウハハ!」
とても豪快な髭もじゃオジサンだった。
「じゃあ、デレじいってよぶ!」
「おう!デレじいだ!よろしくな!!」
訓練を一緒にやるにあたり、恐らく僕が遅かったり鈍かったりで合わせるのが大変だと思うし、自分がこれから強くなる為にも役立てると思った為一つ提案をしてみた。
「デレじい、くんれんいっしょにやるとき、じゅうりょくかける?」
そう聞くと頷き「ちょっと試してくれ」と言ってくれた。
デレじいは立ち上がり僕の闇魔法の重力に備えてくれた為、全力の半分くらいの気持ちで重力を掛けてみた……すると。
「ぐお!!」
と言う声と共に地面に叩きつけられたかのように倒れた。
慌ててすぐに解除し「だいじょぶ!?」と声を掛けるが、すくっと立ち上がり笑いながら話しかけてきた。
「ウハハハ!坊ちゃん、すげぇな!その歳でここまで魔法使えんのかよ!!さすが団長とダッラの息子だ!だが次からは少しずつかけてくれよな、びっくりしちまったぜ!」
「ごめんなさい。ゆっくりするからおしえて」
とすぐに謝って、気を取り直して再開する。
0から少しずつ重力をかけていき、デレじいが身体強化を使い重力を耐えていく。
そして大体30ちょい位になった時「それぐらいが良い」と言われた為、そこで止める。
この位だったら少し位長い時間でも重力をかけられる自信があったため、声を掛けて一緒に広場を周り始める。
僕は小走りだがデレじいは歩いて一緒のペースで広場を周る。
僕が段々と疲れてきて限界かなと感じてから少し無理をして走った後訓練を終わる事を伝えて重力をかけるのを辞めた。
すると疲れた様子で汗をかいているデレじいが息を整えながら一つ質問をしてきた。
「フゥー、フー。坊ちゃん、今使った重力魔法?っていうのはまだ使えるのかい?」
正直体力は限界だったけど魔力量にはまだ余裕があった為答える。
「えっと、ハァハァ、まだ、ハァ、出来るよ」
その答えを聞いたデレじいは目を輝かせながら頼んでくる。
「本当か!!そしたらよぅ!!これから素振りをするから重力かけてくれよ!疲れてきたら止めて良いからな!」
当然二つ返事で答え、同じ重力で良いか尋ねると頷いた為先ほどと同じようにゆっくり重力をかけて同じくらいで止める。
きっと僕の闇魔法が訓練に使えると感じてくれたのだろう、デレじいは真剣な表情で額に汗を浮かべながら剣を振るう。
デレじいが剣を振るう姿は恰好が良く、豪快であり滑らかで強さを感じた。
体感時間で言うと20分程で段々と魔力量に限界が来てしまった為、デレじいに伝えた後すぐに重力を止めた。
すると、剣を振るっていたデレじいは止めたと共にゴロンと倒れ、大汗をかき服が濡れてしまって息が切れた様子で胸を大きく動かしていた。
さすがに大変そうなので心配してしまう。
「だいじょうぶ??」
そう聞くと手を上に挙げグッと握り大丈夫だという事をアピールしてくれた。
それからも心配で見守っていたが1分もかからず、起き上がりニカッと笑い座った状態で声を掛けてきた。
「最高だ、最高だぜ!坊ちゃん!こんだけ負荷の掛かる訓練は中々出来ねぇからな!また頼めるかい!?」
僕としてもあまり出来ない相手に重力をかける練習になるし、デレじいも良い訓練になると言ってくれてるのだったら、時間と魔力が残ってるときなら是非やらせて欲しいと思った。
「ぼくからもおねがい!ぼくもれんしゅうになる!」
その日はそれでデレじいとは別れたのだが、その様子を遠くで見守っていた両親はデレじいに対してしていた訓練を羨ましがっていて、帰宅後の夕食時に『「おれも」「あたしも」やりたい』と言ってくれた。
自分の訓練もあるとはいえ、こういう形で両親に親孝行出来るならと二つ返事で了承した。
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