第16話 お誕生日
僕が「負けない」と宣言した後、両親は何かを準備しているようで村の外に出掛けたり忙しそうにしていて、僕はアリーさんに見守られながら色々訓練をしている。
最近はプランクをやってみたら出来る事に気付き、他の出来そうな筋トレを模索し何セットか日頃の訓練に加える事にした。
更に新しくカイルさんと言う人が教えてくれることになりスキルを獲得する為にする下準備の訓練をしてくれる事になった。
見た目は茶髪の優しそうなニコニコ笑顔のお兄さん、剣の素振りを見せて貰ったらそれはもう踊るかのように滑らかに剣を振ってる、超かっこいい。
一日の訓練内容は、身体能力を向上する為の運動、魔力を増やす為に限界まで使う訓練、魔法の練習と、斧・剣を振る練習、あと会話する事。
この中で一番きつい訓練は魔力を限界まで使う訓練だ、血の気の引いた感覚になり、気持ち悪くなり倒れそうになる。
でもアリーさんや両親が見守ってくれているお陰もあり、今のところは大事には至ってないし少しずつ魔力量が増えているのを実感できているからいくらでもやれる、本当に辛くなるのは増えている実感が無くなった時だろう、それでもやり続ける。
新しい訓練も追加し日々強くなる為に訓練し続けて2か月後、僕の誕生日の日がやってくる。
結局冬と思われる期間も短く雪が降ったのも2~3回くらいだった。
その日は村全体が騒然としており見ない顔の人も村の外から見に来ていて、太陽が頂点に到達した頃、訓練場を使い僕の誕生日を祝ってくれた。
最初はお父さんが挨拶し、僕を祝福した後、皆からも一斉に祝福して貰い、その後は誕生日と言うなの飲み会となって、飲んで食ってのどんちゃん騒ぎ。
いつも僕はこういう時すぐ寝てしまっていて最後はどんな状況なのかよく知らなかったけど、初めて見る最後まで見る飲み会は本当に面白かった。
急に始まる喧嘩それを煽る周囲、両親に対して飲み比べを挑み轟沈していく人達、それを笑って見守る人達、楽しくて面白くて常に笑みが顔から抜けることはなかった。
誕生日が終わった後、皆の様子を木陰で両親と共に見守ることにした。
家に戻る者、その道中に僕の事に気付き再度祝福してくれる者、倒れたまま動けない者、それを立たせてケツを蹴って歩かせるアリーの姿、本当に楽しい一日だった。
そして帰路につき家に帰宅する。
そこには村の外から来たであろう見知らぬ人とカイルさんが待っていた。
見知らぬ人は二人共ちょっと皺のある男性で、一人は坊主頭の角ばった顔の顰めた顔をしていて腕を組んでいる人、もう一人は赤く長い髪を全部後ろに纏めてて、カッコいいけどヤンチャそうな顔をしていてニヤニヤしながら腰に手を当てていた、。
その内の赤髪さんがしゃべり始める
「ようやく帰って来たのか、待ってたぜ。その子が噂のアンドレイだろ?」
と、お母さんの足に掴まって立っている僕を見る。
歓迎した様子でお母さんが話す。
「待たせて悪いね、この子が私達の自慢の子、アンドレイだ」
するとお父さんが二人を紹介してくれた。
「アンドレイ、この二人はお母さんが冒険者をやっていた頃に世話になった人達だ」
へぇ~、と二人の顔をじっと見ているとお母さんが口を開く。
「やっぱりポールは来れなかったかい」
「まあアイツは今ギルドを仕切ってるからな、仕方ねえよ。だがちゃんと渡された物は持って来たぜ。ほらアンドレイ、母ちゃんの友達からの贈り物だ」
ポールって誰なんだろうと思っていると、赤髪さんが背負っている袋から、取り出して僕に渡してくれた。
それは、僕が持つにはあまりに大きい短剣が入った鞘、持ち手部分を持っても何も起こる事は無いが、それでも折角貰ったものだし大切にしようと感謝の言葉を伝える、頭を下げながら言うと転びそうになるので、赤髪さんの目をみていう事にした。
「ありあと!」
すると赤髪さんはくすっと笑う。
「へへ、俺は頼まれた物を持って来ただけだぜ。にしても聞いていた以上にマジで賢いんだな。二人の息子とは思えねぇぜ?どうやったら化け物二人からこんな利口な子供が産まれるってんだ?なぁ?」
と隣の坊主さんを向き同意を求めるが、坊主さんはおでこに手をやり、呆れている様子を見せた。
次の瞬間、ガシッとお母さんが赤髪さんの頭を片手で掴む。
「テメェはその歳になっても一言多いみたいだねェ……。ゴルダス、ちょっとコイツ揉んでくるからあと頼むわ」
「あいよ、俺の分も揉んでおいてくれ」
と言い、了承するお父さん。
赤髪さんがジタバタしながら全力で抵抗するがロックは外れる事はなく、そのままズルズルと引きずられながら家の外に出ていった、さすがに自業自得。
苦笑いしながらカイルさんが僕の前に立ち小さなポーチを見せてくれる。
「これは、村の皆からの贈り物だ。本当はお誕生会の時に渡せば良かったんだけど、皆照れるから嫌だと言ってね。僕が渡すことになったんだ。ほら、アリーは飲んだくれの介抱があるからね」
あれを介抱と言うのだろうかと、ちょっと疑問になったがそんな事よりも貰ったポーチだ。
肩にかけてもらって、中身を触ってみようとしたら違和感があり、底に手が届かない。
「あれぇ?」
と声が漏れるとカイルさんがネタばらしをしてくれた。
「それはね、マジックバックといって見た目以上に色々な物が入るんだ。詳しい事は両親に聞くといい」
それを聞き僕がびっくりしているとお父さんも驚いた様子で。
「お前らすげぇな、よく奮発してくれた。俺からも礼を言う」
それを聞いて感謝の言葉を忘れていたことを思い出し、慌てて言った。
「ずっとアリーばかりで皆羨ましがっていましたから、これからは僕以外の皆も訓練に混ぜてやってくださいね。僕達に出来ることならいくらでも協力しますから」
そう言うとカイルさんは手を振りながら去っていき、気まずそうにしていた坊主さんもそれに合わせて家を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます