第14話 サプライズ

その日以降、僕の訓練内容には斧を振る練習も加えることになった。


とはいえ、しっかり立つことも出来ないので誰かしら手の空いてる人の腕の中で振るう事にはなるんだけども。


お父さんから貰う事になっている加重の大斧の事を考え闇属性を鍛えておきたい、他の属性も慣れていきながら、特に闇属性には気を遣う事にした。


魔法を使うにあたり重要なのはイメージだそうで、それ自体は難しくはなかった。


だけど問題は魔力をどれだけ使うかという事、自分の感覚では弱めたつもりでも想像以上に魔力を消費してしまいアリーさんに何度も助けてもらってしまっていた。


だからこそどれだけ節約し、そして効率的に使うかを考えて練習をし続けていると分かったことが幾つかあった。


それは周囲に魔力が漂っているという事、そしてその魔力は魔法にも身体強化にも使用できるという事。


僕はそれを知ってから訓練に順序を付けてまずは体を動かして出来る限り身体能力の向上を目指し、疲れて動きにくくなったら今度は身体強化を使って動いて、その後魔力の効率的に動かせる方法を模索しながら安全そうな魔法を使い魔力を使う。


そしてまた動けるようになれば体を動かす。


それだけアリーさんにも付きっ切りになってもらい、アリーさんが居ない時は両親どちらかに付いてもらいながら訓練をし続けた。



訓練し続けて2か月経った頃には雪が降り始めた。


ここでは1年が何か月で一月に何日か正直わかってはいないけど季節があるのは助かっている、感覚的にどれくらい経ったかわかるから。


自分の身体能力のみで立っている事が出来るようになり身体強化を使用すれば歩けるようにもなった。


今日は何時もお世話になっている両親とアリーさんにサプライズがある。


ずっとこの練習を誰にも見られないように隠れてし続けたんだ、完璧ではないけどそれでもやってみよう。


一か月に二度、僕の成長具合や訓練の進捗を3人で食事を取りながら話す機会がある。


僕専用の椅子に座らせてもらって僕は離乳食を頂き食事を終えて3人で話し合いを始めた時、僕は練習の成果を出すべく覚悟を決めて口を開いた。

「おとしゃん、おかしゃん、ありーしゃんいつもありあと」

僕がそう言った瞬間3人の声はピタッと止まり、錆びたブリキ人形の如くギギギとこっちを向いてきた。


お父さんが口をゆっくりと開く。

「二人とも、今のは聞き間違えじゃないよな」

お母さんとアリーさんは頷き、笑顔の僕をじっと見つめている。


なのでもう一度言う。

「おとしゃん、おかちゃん、ありーしゃんいつもありあと」

それを聞いた3人はそれぞれ別の反応をしていて、お父さんは天を仰いで両手を上に挙げて叫び、お母さんは顔を覆って泣き、アリーさんは腹を抱えて笑っていた。


アリーさんが息を整えながら聞いてくる。

「フゥフゥ、ハハ、あんた喋れたの?」


「よろこんれほちくてれんいゅういた」

それを聞いたお父さんは僕を持ち上げて掲げて大きな声で宣言した。

「ダッラ!!アリー!!皆を呼べ!!!今日はしゅううくぅぅふぁああいだああああああああ!!!!」

テンションが上がり過ぎて呂律が回ってない、でもこんなに喜んでくれたのなら、ずっと隠れて練習した成果があった!


ちなみにその後、村全体で祝杯を挙げたのだが次の日に残ったものは死体のように倒れた村の皆の姿であった。


無事だったのは、アリーさんと両親のみだった。


僕は途中で寝ちゃってわからなかったけど、多分僕の両親は酒が恐ろしいほどに強い、何故なら他の人よりもガブガブ飲んでたのに全く酔った様子が無かったから。


ちなみにアリーさんはちょくちょく自分に回復魔法使ってた。


回復魔法……超便利。

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