第10話 応接間での赤ちゃん話
我が家に着き、僕が入ったことのない部屋に入ると応接室のようになっておりそこにあるソファーに対面して座り、皇太子の家族の後ろには御者の方が控えていた。
(すごいな~座る姿も様になっているしかっこいいなぁ)
流石皇族だな~と思いつつ、後ろの御者さんの圧倒的執事感が素晴らしい
「さて、色々話は聞きたいけど、まずはアンドレイ君が言葉を理解しているとのことだったけど?」
おお!僕の話か!手を振ってみよ!
「多分だがあたしがこの子を産んだ時にゴルダスから貰ったペンダントを握り込み過ぎて潰してしまったんだけどその時光を放ったんだ。あたし達はそれが理由だと思ってるよ。正直もうどうでもいいんだけどね」
「フフッ、でも私は気になってしまってね。出来る限り調べてはみたけれども結局分からず仕舞いだったよ」
「ッハ、皇太子様が分からないんだったら誰が調べても分からないだろうよ」
と父が言ったところで、アレックスさんが僕を見て質問を投げかける。
「ところでアンドレイ君、僕の言葉が分かっていたら、手を振った後に笑って見せてくれるかな?」
そんな事言われたらやるっきゃないでしょう、身体強化をフル活用して両手でブンブン振った後、笑って見せた。
すると相手方3人とも目を見張って驚いていて、一番先に奥様のソフィアさんが口を開く。
「実際に目にすると本当に驚くべきことですね」
それに賛同するようにアレックスさんが続き
「ああ、本当にそうだね。……それに今、身体強化を使ってなかったかい?」
アレックスさんがすっと後ろの執事さんに目線を移すと
「ええ、アンドレイ様は間違いなく身体強化を使って手を振られていました」
(アンドレイ”様”だって……、へへへ)
と喜んでいると、お父さんが答える。
「アンドレイが産まれた次の日に言葉を理解している事が分かってな。外に出た途端訓練場の戦闘に興味を持ったし、魔法やら戦う事を早い内からやってみるか?って聞いたら凄い喜びようでな、うちのヒーラーのアリーが魔力の操作なんかを教えてくれたんだ。そしたら、すぐに訓練しだして今じゃハイハイだって出来るんだぜ?勿論出来る限り魔力を使わず自力でもやろうとはしてるみたいだがな」
それに対し苦笑いするアレックスさんとお二人
「産まれてから2か月かそこらだろう?驚くべき事だね……。」
少し間をおいてまた話始めようとした時、アレックスさんが抱いている赤ちゃんがぐずってしまい、ソフィアさんが赤ちゃんを預かり席を立とうとする。
「あたしが案内するよ。あんたは話してな」
と言い、お母さんが席を立ち案内する。
二人と赤ちゃんが部屋を出るのを見送った後、アレックスさんがほんの少し首を傾げながら口を開く
「アンドレイ君はぐずったり泣いたりしないのかい?」
「聞いたこともないな。お腹が減ったり小便とかウンチとかした時は身振りで伝えてきたり、声を出してアピールしてきたりな。それこそ最初は凄い世話するのが大変だから乳母を雇った方がいいだとか言われたからどうなることかと思ったが、今のところ苦労を感じた事は無いな」
それに対し苦笑いするアレックスさん
「私たちの場合はソフィアが自分で育てると聞かなくてね、乳母を雇わなかったんだが……。正直何度も寝てる間に起きる事になるから大変だよ……。疲れた体でゆっくり休もうと思っても起こされてしまうからね。最近は夜の間だけ別室で寝て交代で変わったりしてるよ」
お父さんが抱いている僕の目をじっと見て言う。
「本当にありがとうな」
なので僕は。
(どういたしまして!)
と笑って拍手して見せた。
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