第9話 スーパー赤ちゃんマン
最初は魔法を使ってみたいなと思ったが、この体で何らかの形で魔法に失敗して暴発なんてしたら一巻の終わりなので全力で身体能力の向上に努めることにした。
前提として身体強化に頼り過ぎると成長の妨げになり、筋力が無いと身体強化に使う魔力の消費量が多くなってしまうと言われた。
身体強化を段々と使えるようになってから、一番取り組んだのは運動。
なんでもいいから体の動く部分を全部動かし続け、赤ちゃんの体で第一関門の寝返りをするべく訓練し続ける。
恐らく僕がこの世界に産まれてから1か月ちょい位経っただろうか、僕は寝返りに成功しそれを両親に見せると大喜びしてくれて、村の皆を呼び出し僕の寝返りを披露することになった。
目指せスーパー赤ちゃんマンだ、次は座って、ハイハイして、立って、歩いていけるようにならなければ!
この頃になると、アリーが魔力を操作しにくる事はなくなり、基本的にはお父さんとお母さんと共に行動し、訓練を見守ってもらいつつ身体強化を見て学んでいる。
そして暇が出来る度にこの世界に居る魔物や人種について話してくれた。
魔物には、聞き覚えのあるものがたくさん居て、ゴブリンやオークから始まりドラゴンや魔王なんかも居るらしい、ちょっとワクワクする。
人種はエルフや獣人、小人、ドワーフ、竜人、魔人、蟲人など多種多様な種族が居て、それ以外にも自分達が知らない種族は当然あるだろうと話していた。
それから2か月程経ち、座ることを成功しハイハイが出来るようになった頃、両親に抱っこされながら散歩していると村に見た事のない集団が来た。
それまで商人さんが来ることはあり、村の皆が狩った動物や魔物の素材と引き換えに穀物や野菜を交換してくれていた。
見た目は明らかに騎士っぽい、真ん中に馬車らしきものも見える。
両親から僕が産まれる前、騎士と共に村の皆で一緒に戦っていたと聞いたことがあるから、きっとその関係なのだろう。
両親は僕を抱っこしながら村の入口付近に向かい、近付いていくにつれ騎士と村の人達が話していた。
その内の一人が気付き声を掛けてくる
「おーい、団長。皇太子さん達ががわざわざ出産祝いを持ってきてくれたってよ!」
その声に対し周囲の反応は様々で村の人達は手を挙げて挨拶し、騎士の人達は胸に右手の握りこぶしを当て軽く会釈をした。
それに対しお父さんは軽く手を挙げ返答し、馬車へ歩いていくと騎士たちは道をあけていきその中を両親が僕を抱きながら歩いていく。
すると御者が馬車のドアを開き、人が出てきて周囲の近い位置に居る騎士が跪き、その他の騎士達は周囲の警戒を警戒する。
「久しぶりだね、ゴルダス、ダッラ」
そう言うとお互いに手を差し出し握手をする。
(さっきの会話から察するにこの人が皇太子様なのだろう)
「ああ、久しぶりだな。それで手紙にあった通りお前さんの娘も来てるんだろう?是非ともこの子に会わせてやってくれ絶対喜ぶぞ」
そう言うとお母さんに抱かれたぼくを太っとい指で撫で、皇太子に見えるよう傾けてくれた。
「この子が君達の自慢の子か、やはり大きいね。元気かい?」
やっぱり僕も大きいんだ、という自覚と共に手を振ってくれてたので手を振り返す。
「フフ、話したいことは色々あるけれど、まずはぼくの妻と娘を紹介させておくれ」
皇太子様が振り返り馬車の中へ迎えに行き、赤ちゃんを抱きながら奥様と共に出てきたのだが、素朴な村にこんな綺麗な方が来るんだなぁ~、って思うほど美人な奥様が薄緑の綺麗なドレスを着ていて、皇太子様に抱かれた赤ちゃんは超可愛らしい服を着せられた姿が見えた。
両親と僕の前に立った奥様はそれはそれは優雅に一礼をして挨拶をする
「初めまして、アレックスの妻のソフィア・ドラ・レクスノスです」
それに対し両親は軽く頭を下げ自己紹介をする
「これはどうもご丁寧に、初めまして俺はゴルダス、そして妻のダッラとアンドレイだ」
もちろん手を振っておく事は忘れずに行っておくと、ソフィアさんもニコニコしながら手を振り返してくれた。
お父さんは皇太子様ことアレックスさん達を手招きし家に招待する
「外で話すのもなんだから、俺達の家に行って話をしよう」
「うん、そうしよう。色々話を聞かせておくれ」
どんな話をするんだろうとちょっとワクワクしている僕が居た。
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