第6話 ドヤ顔したい者達
訓練場に向かう道中。
道行く人がついてきてチラチラとこちらを見ながらニコニコしている。
昨日見かけた覚えのある人ばかりで、皆一様に顔や体が傷だらけだ。
ついてきている人の一人が母に声を掛ける。
「おい、ダッラ。アンドレイ連れてどこにいくんだ?」
それを聞いた母はニヤっと笑い
「アンドレイが訓練場で戦ってるのを遠目でみて興味を持ったようでね。折角興味を持ったんだから見せてやろうと思ったのさ」
『おぉ』と周囲がざわつき、心なしか準備運動や体を解す動きを見せる。
みんな戦える人なのだろうか、と疑問に思い目に映る人に注目するとそれぞれ武器を持っていた。
母の胸の中から見える限りでは、剣や槍、中には斧を2本両腰から下げている者もいる。
(すっげー!まーじか超かっこいい!)
見た事のない武器の数々を見ると興奮してしまう、ゲームや漫画では見た事はあるが実物は迫力が違う。
他の人がどんな武器を持っているのか気になりキョロキョロしていると、訓練場に着く。
そこで向かい合っていたのは2人、1人は無手の男性で、もう1人は先が膨らんでいる棒……恐らくメイスだ、それを2本持っている女性。
2人は集団が近付いてきている事が分かると戦闘を止めこちらに足早に歩いてきて女性の方が口を開く。
「ダーラどうしたんだい、こんな場所に赤ちゃんなんて連れてきて」
「アリー、あたしの赤ちゃんはここで飛んでた魔法を見て指を指したんだ!だからみんなで戦ってる様子を見せてあげようと思ったのさ」
「あーはーはーはー、はぁ、ただびっくりして指さしただけでしょ?」
おどけた様子で笑い呆れたような声を出す。
それに対し母は僕をアリーの方へ掲げる。
「ほーらアリーだ、抱っこしてもらいな」
「仕方ない、任せな」
と言いそっと抱っこしてくれた。
アリーは黒髪短髪で片方を刈り上げていて顔の傷跡が超クールなおば様。
慣れた様子でほっぺたを撫でて背中をトントンと叩いてくれる。
そんな中母が声を上げる
「みんな!今からアンドレイに戦ってる姿を見せるよ!」
周囲のみんなが武器を上に掲げて叫ぶ。
「さぁ、始めるよ!まずは誰からやるんだい!」
その声に反応し「俺がやる!」と何人かの男たちが前に出て向かい合いそれぞれの武器を構える。
そして合図も無く、急に戦闘を始める。
全員がまるで殺し合うかのように武器を振る。
武器と武器が当たる度に鋭い音が鳴り、打撃が当たる度鈍い音が鳴り響く。
(凄い……凄すぎるよ、こんなの!)
段々と戦闘は激化し、武器に炎を纏ったり魔法が飛び交ったり滅茶苦茶動きが速くなったりとにかくもう凄かった。
僕が戦闘に見惚れ、拍手し、喜んでる姿をアリーが見て声を出す
「あんたら、アンドレイが喜んでるよ!気合を入れな!」
母とアリー以外の戦闘をしている者も含め全員がギョッとした様子でこっちに振り返り、僕の様子を見る。
そして周りの連中も一人一人と我慢できなくなった様子で参加し始めてまさに乱戦になっていた。
凄すぎるし、楽しくて笑いが止まらない。
僕が笑うたびに戦ってる者達がチラりと僕を見てきて、その後は決め技のような動きをする度にドヤ顔し、また戦闘を始める。
段々と僕の視界の中心を取ろうと競い合い取っ組み合いになり、戦闘どころではなくなってしまった……。
その有様をみて、母は顔に青筋を立て、大きく息を吸い込み胸を膨らませた。
アリーはそれを見てすぐに僕の耳を塞ぎかばうようにしゃがみこんだ……、次の瞬間。
「バカたれ共ぉぉ!!並べえええぇ!!!」という声が衝撃と共に周囲に響き渡った。
全員がギョッとし、すぐに隊列を組み始め、一人一人の頭をどつきながら母は説教し始める
アリーは僕を抱っこしたまま立ち上がり、呆れたように説教している様子を見ていたが、母が「家に連れて行ってあげて」というと頷き、振り返って僕を家まで送ってくれた。
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