第1章 幼少期

第5話 目覚め

目を覚ます。


周りを頑張って見渡すと、木製の家っぽい。


最初に思ったことは、僕が居なくなってしまった施設でインシデントや事故が発生してない事を祈り、だけど僕が消えてしまった事自体がすでに事件で……。


職場の方に本当に申し訳ないと思い、そして恐らく家族にはもう会えない事を思い出し涙が溢れてしまった。


でも顔を拭こうとするも、なかなか難しい。


赤ちゃんになってしまった身体ではそりゃあ難しいだろうな……。


多分、恐らく、っていうか確実に元の僕は死んでしまっているだろう。


であれば、今起こっている事を受け入れ、生きていこうと思う。


どんな世界に産まれたのか、そして恐らく両親だと思われるあの巨人……。


いや、ぼくが赤ちゃんになったから小さくなっただけだな……。


うん!無理をしてでも前を向けるよう笑おう。


頑張れ、僕!!


「キャッ、キャッ」


自分で笑ってる声が聞こえるが、やっぱり赤ちゃんの笑い声ってのはかわいいな。


自分の笑い声がかわいいというのに、また自分で笑ってしまっていた。


すると、足元の方から大きい足音が聞こえ、顔を覗いてくる人、この体になった時に一番最初に見た顔だ!


「笑ってる!笑ってるぞダーラ!!おとうちゃんでちゅよー」


声を聴いてやっぱり父親だったのか、と思わず笑ってるのが止まってしまったのも仕方ない。


すると、ドスドスと走る声が聞こえ、昨日真っ赤な顔だった人が現れた。


「本当かい!!おかあちゃんでちゅよ~。べろべろばー!」


僕の笑顔が無くなってしまったのを見てか変顔をするが、怖い!


でも僕を笑わせてくれようとしてるんだから、悪いという気持ちになり笑うことにした。


「キャッキャ!」

と手をパチパチしながら笑う。


すると胸を打たれたような動きを見せ、両親がのけぞり『あぁぁぁ~』と漏れ出るような声を出す。


こんなに喜んでもらえることに嬉しくなり、ぼくはニコニコ笑った。


我に返った両親は僕の名前を教えてくれた。

「可愛い俺たちの子、お前の名前はアンドレイだ。産まれた後みーんなで考えたんだぞ?いい名前だろ?」


アンドレイ……。すんげぇ強そうな名前を貰った !有難いと僕は喜んで見せた。


そんな中、正直な僕の体はすんごい腹減りを感じ、手を合唱し乳を願った。


「おい、見ろ!ダーラ、手を合わせてるぞ!」


「本当だ!本当に可愛いったらないね!」


違う、そうじゃない。


可愛いといってくれてる事は有難いが今欲しいのは乳だ!


伝える方法を考え、ダーラと呼ばれている母の方へ、両手を伸ばす。


「あたしに抱っこしてほしいのかい!?」

と言い恐る恐る抱きかかえてくれた。


第一関門突破!次はどうする……そうだ!。


右手で自分のお腹を叩き、左手で母の胸を叩きアピールをする。


最初は両親は顔を合わせ首をかしげるが、母が閃く。

「もしかして、お腹減ってるのかい?」

「おいおいそんなはずは……」

と、父が口を挟むが、僕は伝わったのが嬉しくて出来るだけ頷き大喜びした。


その行動を見てびっくりした様子で

「すごい!すごいぞダッラ!俺たちの息子は天才だ!赤ちゃんなのに俺たちの会話を理解できてるなんて天才以外の何者でもないぞ!!」


「ゴルダス!なに言ってんだいあたしらの息子が天才じゃない訳ないじゃないか!!」

そうだよね、普通は当たり前に泣くばかりで理解する訳ないよね。


母は父から距離をとり、僕に胸を出し、母乳をくれた。


正直恥ずかしいがそんなこと生きる為に言ってられんから頭を空っぽにして母乳をいただく。


飲んだ後、割れ物を扱うかのように優しく優しく背中を叩きゲップを出させてくれた。


本当にありがたい、ゲロは出したくない。


その後、母に抱かれ家の外に出る。


周囲は幾つも木でできた家があり、更に周囲は木に囲まれているもの程伐採されており、のどかな村だと感じる。


歩いている人の姿を見かけるが頭を押さえ辛そうにしている、それは良い、それは良いんだ。


遠くにどう考えてものどかな村とは似つかない、デカい火の玉が飛び、岩が飛び、なにかが弾け飛んでいる。


魔法なんだろう、でもそんな事は一瞬で頭から吹っ飛び襲撃されているんじゃないかと、母を叩き、指を指し全力で伝えるも声から出てくる声は

「だぁ!だぁ!だぁ!」

叩かれた母は笑顔で僕を見た後、指を指す先を見つめ更に笑顔を深める。

「さすがうちの子だ!戦ってる様子が見たいんだね!ゴルダス!ちょいと訓練場まで行ってくるよ!」

と伝えてから、歩き始め後ろから「行ってこい」と父の声が聞こえる。


訓練場と聞きとっても一安心、そして魔法だという事を思い出し嬉しくなった。


母に抱えられた僕を、道行く人たちは頭が痛いのか手で頭を押さえながら優しげの表情で見ている。


その中を母は歩き、僕は魔法が今も放たれている訓練場の方を目を輝かせて見ていた。

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