第25話 ラスボス

「うーん。私の正体やら、そこら辺を暴こうとすると変なオカルティズムの魔法が発動するから嫌なのよ……」


 申し訳なさそうに頭をかくクリスの前には、全身から体液を流し気絶をするミリガンであったが、クリスには、何が起こったかわかっていない。

いつもそうだ、心理や、転生を探ろうとする敵は、自動防衛で猿夢の魔法が発動する。


「こりゃ、廃人に……」


「やったー師匠!」


「ちょ、レーラ! ふ、服!」


レーラは、戦いが決したのか、クリに飛んで抱き着いてくるが、上半身がはだけていることに気が付き、クリスは慌てて、復元の魔法で、レーラの服を修復する。


「……え、エグイ魔法」


「いや、幸助さんも負けてないですよ!」


「本当にな……」


コウスケ達もケリがついたのか、全員でクリスの周りに集まる。


「なによみんなして集まっちゃって……別に当たり前じゃない。私たちが負けるわけがないじゃない」


「い、いや、まあ、負けていましたが一度は……ですが私が本気を出せばこんなものですよ!がはは」


スズは、軽快に笑い飛ばすが、明らかに調子に乗っているのが分かり、クリスは、ため息をつき、少し面白そうに笑い返す。


「あはは、アンタは本当に一言余計よね」


「痛い!」


クリスのゲンコツを食らい、痛そうにするスズだが、その顔は少し嬉しそうにはにかんでいた。


「よ、お疲れ。ありがとうなクリスちゃん。ギルド長として、本当に助かるよ」


「珍しいじゃない金キノコ」


「おい、新しいあだ名をつけるな。あと普通に感謝は、受け取っておけよ」


「ヘイヘイ」


二人は、グーで拳を合わせ、嬉しそうに笑顔を交わす。

そんな中、コウスケは、どこか恥ずかしそうに目をそらしクリスに近づく。


「その……おめでとう」


「こ、幸助……。くぅぅぅぅ」


クリスは、拳握り変な喜び方をする。コウスケは、変なことでも行ったかと思ったが、それは、違ったようであった。


「えっと、く、クリスさん」


「幸助いつもありがとう! 最近幸助へ感謝するのが日課になりつつあります! 単刀直入に我慢してたこと言いそうになる! 幸助尊いぞおおおお。誤解しそうですが長文失礼!ちなみにあまりの恥ずかしさに今は、本気で喜びの舞を踊ってしまいそうになってしまうわ! 本当に、本当にいつもありがとう幸助! ああ! 限界!」


そういうと、ゴロゴロと転がり、恥ずかしがるクリス。

キャラ崩壊にもほどがあるその姿にシンジはドン引きするが、クリスとコウスケの異世界事情を知るレーラとスズは、女性だからか、ニマニマとクリスを見て笑う。


「え、え……えと、クリスさん、一応、いろいろな人がいるので……」


「は! い、今のは、忘れなさい!」


コウスケは、どこか懐かしく感じる。

この行動は、クリスとしてではなく、真理としての行動。

真理は生前、男っぽい性格と強気な性格をしていたが、それはかわいい女の子へのあこがれへの裏返しなのか、たまに本気で自分すら分からない奇行をするが、まさしくそのままであった。


「そのクリス……えーっと。汚れるぞ、とりあえず立てよ……」


「う、うん……」


コウスケも クリスの行動を嬉しく思うが感情を出さないようにスキルで本心を隠し、クリスの手を握り、立ち上がらせる。

目をそらす二人、その甘酸っぱい空間、ニマニマするコウスケとクリス以外であったが、平穏は、長く続くものではなかった。


「いた! な、なんですか……」


レーラが、急に痛がり、全員がレーラを見ると一匹の蛇が、レーラの首筋に嚙みついていたのであった。


「ふははは、これで、これで」


「ふん! ニーズ、最後に悪あが……ぐう!」


ニーズは、吹き飛ばされ、絶命をしてしまうが、レーラは苦しみだす。

そして、クリスの手元にはいきなり、クマの形をしたパズル……リンフォンが現れると、機械音と共にその形をどんどん変えていく。


「え、え……『オカルティズム:りんふぉん。強制発動……魚』」


「が……だ、だめです……師匠にげ」


レーラが苦しみだすと、レーラの前に王座が現れ、その子に座るレイラは、レーラを見下すように座っていた。


「やあ宿主。ようやく条件がそろった。やはりニーズヘックや、そこの娘を私の駒にして正解だったな。ニーズヘックが宿主の体に送り込んだのは、奴の血だ」


しかし、レイラの声は、全く違う声、しかし、クリスとコウスケは聞いたことのある声であった。


「「メイ!」」


「あ、やほー二人とも前世ぶりー、黒竜の鱗、二種の竜の血、そんでもってリンフォンの最終起動! すべての面倒な条件をクリアして、メイちゃんフッカーツ」


それは、前世でクリス……真理を殺し、コウスケが殺したコウスケの元嫁。

メイ。その表情は、いつも矛盾していて、ゆらゆらとつかみどころのない声と表情。


「し、師匠……すみません」


「それじゃあ、宿主もといレーラちゃんの体をもらって完全復活しちゃいましょう」


レイラだった少女、メイは、そういうとふざけたように手を振ると、レーラは、瞬間煙の様に漂いだしメイにすべてを吸収する。


「な、れ、レーラをどうしたメイ!」


「いやー、ラスボスですよ。レーラちゃんは、私がこの世界に完全に転生するための道具なの。つまり、私は、竜王で幸助は、勇者様って所かしら」

突然の絶望。空気は冷たくあたりを包み込んだ。

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