第9話 いともたやすく行われるグロ行為

「し……死ぬかと思った」


「さて、着きましたが暗いですね。照明魔法は、必要でしょうか」


 コウスケ達は、ホレの扉からダンジョンに戻るとそこは光も届かず真っ暗な世界。視力強化により、お互いに位置などは分かるため、ある程度の距離感を持ち、立つが、クリスは、一人無言であった。


「師匠……?」


「うんやはりここが最終階層、婆さんの手紙なんだけど……要約すると、ダンジョンボスの間まで送るから、私たちには手を出させるな、コウスケの実力を見なさいだって」


クリスが口を開くと暗闇の空間が突然明るくなりそこには、何かを決意したかのような目のクリスがコウスケを見ていた。


「し、師匠! コウスケさんは、転移者ですがまだ戦闘経験は、皆無ですよ! いきなり無茶です!」


「展開『おかるてぃずむ:あカイへや』」


レーラは、慌てて申し出をするが、クリスは聞かずに目に魔方陣を展開しクリスとレーラを赤い正方形の結界のようなもので包み込む。


「さあ、コースケこの部屋は、30分入っていると精神に異常をきたす部屋。あーれー、敵の罠にかかり、ハカラレター」


「し、師匠! なんて魔法の中に……って、アッツ! この魔法! またオリジナルですか! てか、出してください!」


とんでもない魔法を自分とレーラに使ったクリス。コウスケは何か意図があると感じ、クリスを前に真剣なまなざしで目を合わせる。


「これは、今後、怪物級の魔法使いたちとパーティーを組めるかのテストってことか?」


「そうね。今後は、私たち、危なすぎて誰も立ち寄らないような土地に行くかもしれない。そんな時足手まといがいたらアンタは死ぬ。だから、アンタは、私の所有物という扱いでここに来た。今後も一緒に冒険をしたいなら実力を見せなさい、いやなら、あんなのすぐ捻り倒すわよ」


クリスの顔も至って真剣、そんな二人を見て、レーラも意を決し、コウスケに声をかける。


「コウスケさん、私、結構あなたのこと気にっているので勝ってくださいね」


「分かった」


「やるのね、コースケ」


「ああ」


そういうとコウスケは、石像のように動かない牛頭の巨人の前に立ち杖を構えた。


「見ていると良い! あんなのすぐ倒す!」


瞬間、ダンジョンから機械的な声が発せられる。


『侵入者三名、排除行動に移ります』


「うぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


瞬間牛頭の巨人が雄たけびを上げ、立ち上がる。コウスケは、少しおびえ汗を垂らすが、その汗をぬぐうと杖を構える。


「展開『想像:早く走り飛ぶ』」


「ぶもおおおおおおおおおおお」


がしゃんと巨人の振り下ろすコン棒が、コウスケめがけて飛ぶが、当の本人は杖を中心に魔方陣が展開して空を飛び回り、巨人を翻弄する。


「あれ、師匠、コウスケさんは、媒介スキルで魔法を使えるのは分かっていましたがいつの間に空を飛ぶ魔法を教えたんですか」


そんな先頭を見てレーラは、クリスに質問するが、クリスは呆れたようにレーラを見て説明を始める。


「いや、教えてない。コースケのスキル。媒介は、非生物を媒介に魔法を行使できる。でもどういった魔法かしら? 何か制限ってあったかしら」


「いや、特にステータスを見せていただいた時には書いてなかったですが……」


「そう、書いていないのよ。だから、アイツは、何かを媒介にすれば想像だけで魔法を使える。『どんな魔法もね』」


「そ、それってずるでは……」


レーラは、改めて転移者のチートぶりを聞き戦場に目を戻す。

そこには、冒険が初めてとは思えない戦闘の光景が広がっていた。


「ぶもおおおおおおおおおおおおおお!」


「うお! 展開『ブラックボックス』」


コウスケは、巨人の振り下ろされるコン棒めがけて、黒い空間を開くと巨人の腕は、黒い空間に飲み込まれる。


「からの! 『ブラックボックス解除』」


そして、コウスケの合図とともに、黒い空間は、巨人の握るコン棒ごと、消える。

巨人は、刹那失った右腕から出た鮮血を見て、痛みという感覚を感じ叫びだす。


「ぶもおおおおおおおおお!」


その咆哮は、コースケをはるか後方へと吹き飛ばす。


「うお! 展開『想像:緊急回避』! た、助かった……てか咆哮でこの威力。普通に飛ばされたら死にますよ、俺」


コウスケは、落下の寸前、魔法を展開し衝撃を軽減する。

巨人は、コウスケが動いているのを見ると走って襲ってくる。


「いやいや、媒介のスキルがこう使えるとは……それなら、展開『ブラックボックス三連』からの『解除』」


『ぶもおおおおおおおおおおおおお』


コウスケは、ブラックボックスを巨人の残った四肢に展開し解除。瞬間巨人の体を支えるものがなくなり、巨人はその場でのたうち回る。


「わ……私もブラックボックス、ああいう使い方を……」


「ムリに決まっているわ。私たちの常識で、ブラックボックスは、収納魔法。アイツみたいにまだこっちの世界の常識が身についていない転移者だからできる物だけど……アイツ、油断しなければ……」


レーラと、クリスは、コウスケの戦いを観戦し各々感想を言うが、コウスケにその声は聞こえず、コウスケは、巨人に杖を掲げとどめを刺そうとした。


「悪いがしんでもら……」


「ぶもおおおおおおおおおお!」


瞬間、巨人が雄たけびを上げると、胴体が、真っ二つに割れ、中からムカデのように長い胴体が飛び出し、所々から、血の涙を流した人間の顔がいぼの様に浮く。そして、クモのような足が胴体から生え、顔の部分は、黒く長い髪を生やした表情の見えない女の大きすぎる顔が生え壁中をはい回りだした。その見た目は、生物が根源的な恐怖を覚えるような見た目であった。


「ひい! き、きもい!」


「……ああ、そういう系ね」


レーラは、びっくりするが、クリスは動じない。

そしてそれは、コウスケも同じで、その表情は極めて冷静で、その冷静さは、レーラから見るとまさに狂気の沙汰であった。


「イタイ……なんデ、イジメるのオにイちゃん」


化け物になった巨人は、何重にも重なった人間の声をコウスケに発するが、コウスケは全く動じない。

それどころか、レーラ達のほうを向く。


「じゃあ、俺の合格だな」


「まあ、そうね……コースケ、アンタもいっぱしの転移者だったみたい」


クリスとコウスケは、終わったかのように話すがレーラは、その状況を読み切れず、

声を上げる。


「こ、コウスケさん後ろ!」


コウスケの後ろには、化け物が早すぎる速度で迫ってくるが、コウスケは、掲げていた杖を振り下ろすとボソッと一言だけ放つ。


「解徐『隠匿』『想像:メイデン』」


「な、ナンデ!」


瞬間化け物の前に同じ大きさの優しい表情をした女性が化け物を抱擁する。そして、その刹那女性の表情は一遍、目は血走り金切り声を上げ、全身から棘を生やし、化け物串刺しにする。

そしてコウスケ達の居る部屋に血の雨が降るが、コウスケは、満面の笑みでクリスに近づく。


「よ、合格か?」


「まだね。後ろを見なさい」


「ん?」


「タスケテ」


そこには、血だまりの中に、牛の角を生やした赤い髪の少女が全裸でその場に座り込み、コウスケに手を向け、助けを求めていた。


「どうする。あの守護魔獣の本体よ。アンタはどうする? 助ける? アンタの行動で合格か見極めてあげる」


クリスの挑発的な視線にも、コウスケは、笑顔を崩さず赤い髪の少女の方に杖を構え歩いていく。

赤い髪の少女は、コウスケに助けを求める。


「タスケテ、クライの、コワイ」


「お前は?」


コウスケは、少女の前にかがみ、名前を聞くと、赤い髪の少女は、安心したような表情で自分の名前をこたえる。


「あ、アリアドネ!」


「そうかいい名前だな」


コウスケは、アリアドネに向けて笑顔を向けると、アリアドネは、コウスケに抱きつこうと飛び出した。


「ご、ゴシュジンサ……マ……ナンデ」


刹那、アリアドネの頭部は、胴体と切り離され鮮血をまき散らしその目は生気を失った。


「いや、なんでも何も。敵は殺さないと」


展開魔方陣も唱えずコウスケは、クリスの使っていた大ばさみを展開し、アリアドネの首をはねていた。


「どう? クリス。簡易魔法も使えるようになったぞ」


「おぞましいほど醜悪ね。合格よ。ようこそ私のパーティーへ、コースケ」


二人は、笑顔で話しクリスは、あカイへやを解除し、コウスケと握手をするのだが、あまりの展開にレーラは、言葉を失った。


「たく、こいつは……魔獣は、どんな姿になっても魔獣。人を騙すため擬態することもある。そんな魔獣に感情を持ったらいけないのに」


「ま、まあ、俺も少しやりすぎたかも……」


レーラは、意識を手放す前、涙を流し思った。


「(ああ、私、このパーティーもたないかも)」

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