第7話 朕のエクスカリバー
「ふう……、やはり風呂は、いいなあ」
コウスケは、ホレの家にある西洋式の大きな大浴場で足を延ばし浴場に入る。
冒険を始めて数日、まだ分からない事ばかりであるが、この世界では、ゆっくりとスローラフな転生生活を送ろうなどと物思いに老けながら、入浴をしていた。
「ふむ……服は、入浴後に魔法で生成するとしましょう」
「うん……?」
コウスケは、聞いたことのある声に耳を疑ったが、瞬間風呂の扉が勢いよく開かれ、扉から、レーラがタオルも巻かずに出てきた。
「ささ、大浴場……ふふ、お風呂に入れてよかったです……あ、コウスケさんもお風呂ですか? すみません、私、体が汚いので先に洗い場、借りますね」
「……!!」
「……?」
コウスケは、開いた口がふさがらず、レーラは、そんなコウスケを見て頭に疑問符を浮かす。
「コウスケさんどうしました?」
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!」
コウスケは、状況を把握、小さいとはいえ美少女が、全裸に入ってきて普段上げないような大きな声を上げてしまう。レーラはたまらず耳をふさぎ、コウスケに苦言を呈す。
「まったく、いきなり叫ばないでください! ビックリするじゃないですか」
「いや、だっておま……ひゃん!」
コウスケは、思わず目をそらしてしまうのだが、レーラは、気にすることなく腕を組み、コウスケを睨みつける。
「いやいや、コウスケさん。なぜ竜に発情するのです? 普通に考えて、発情する理由なくないですよ? 種族が違いすぎますし」
「そ、そういう問題か!」
「そういう問題です。師匠が入ってきたら話は違いますが別に私は、悲しいことにわらべの体と何ら変わらないです。発情するほうがおかしいです……それに、ホレさんに私の体のどこを剥がれるかとか考えたくないです……今はただお風呂を楽しませてください……」
「あ、ごめんなさい」
レーラは、死んだ目で、洗い場に腰を下ろし、お湯を浴び、体を洗い、暗い気持ちと汚れを流し落とし始める。
今、風呂を出てしまうとロリコン疑惑が浮上してしまうため、コウスケは、お湯につかり、レーラから目をそらす。
「ふんーふんーそーらーのー」
陽気な鼻歌、体をこすれる布の音、流れるお湯の音、石鹸のいい香り、全てがコウスケをおかしくしてしまう……事はなく、むしろおかしいのは自分なのではと考えるとやけに冷静になってしまう。
「まったく……なんかドキドキしていた自分がアホらしい、年の離れた従妹をお風呂に入れていると考えれば、いいじゃないか」
「何か言いましたー?」
「なんでもないわー」
冷静になると、騒いでいた自分があほらしく感じてしまう。
そこから数分、レーラは、体を洗い終わり、湯船に近づいてくる音が聞こえる。
「ふふーん! ざぶーんです!」
「ぎゃ! レーラ! 湯船に飛び込むんじゃない! おじさん顔にお湯がかかったじゃないですか!」
レーラは、思いっきり湯船に飛び込みコウスケの隣に座る。
コウスケは、お湯が顔にかかり少し不快であったが、都市の離れた従妹をお風呂に入れた時も同じような気がしたので気にしないことにした。
「ふー、いいお湯ですね」
「だなー」
無言の空間。
何も話さないのも退屈なのか、レーラは、何の気なしにコウスケに話しかけていた。
「コウスケさん、そういえば、貴方の転移前話、聞いたことなかったですね。お互いを知るということも大事なので話を聞かせては、もらえないでしょうか」
「転移前か……」
コウスケは少しだけ言葉を濁らせたが、転移前の話をしだした。
「俺の転移前か……そうだな、やることは果たしたしな……まあ、話すことと言えば、あ、転移後は、少し若くなってたわ! 異世界転移のボーナスかもな」
「ふむ、後腐れなくこちらの世界にこれた以外何も分かりませんでしたね。もっと教えてくれませんか?」
「いや話すことないって」
「えー、なんかあるでしょう……うむ、こういう時は」
レーラは思い出したかのように体をコウスケに引っ付け、上目遣いで、コウスケを見る。
「教えて、お兄ちゃん」
「……!」
レーラは、自分の顔をコウスケの耳元までもっていくと囁くように話だす。
戻った理性が、どこかに飛んで行ってしまいそうであった。
「お兄ちゃん……レーラ、知りたい。お兄ちゃんの全部。体の隅々、記憶の隅々、全部、ぜぇーんぶ、レーラ知りたいなぁ……教えてくれたらなんでもしてあげる。だから、お兄ちゃん、がんばれ、がんばれ」
……これ以上は、まずい。
コウスケは、自分の息子がブラザーに昇格してしまったことに気が付いてしまう。
「れ、レーラさん、そ、そろそろ風呂出るよ」
「教えてくれたら、ダシてあげる」
どうしてか卑猥に聞こえるセリフを耳元でささやかれたコウスケは、限界を感じてしまい。その場で立ち上がる。
「で、出ます!」
立ち上がった瞬間、自分の息子が元気になっていたことに気が付かず立ち上がったため、レーラの顔面に元気な息子が頬に、生々しいビンビンタかましてしまう。
「お……おーまいでぃっく」
「ぴゃあああ……こ、こりぇって、発情したチン……」
「はい、発情した朕のチンです。朕チン……です」
凍り付いた時間。レーラは、今まで見たことのないほど顔が赤くなり始める。
「れ、レーラさん」
「きゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」
「ぎゃああああああ!」
竜の咆哮と言わんばかりに耳をさく轟音、風呂においてあった道具は、全て飛び出し、コウスケも吹っ飛ばされる。
「な、何事!」
大きすぎる声にクリスも気が付き、浴場の扉を思いっきり開けると、目の前に、全裸で下腹部を膨らませたコウスケが転がっていた。
「ど、ども、朕とチンです」
冷たい目線。コウスケは、何を言えばいいのか変なことを口走るが、クリスは、冷え切った目から、魔方陣を展開する。
「展開『去勢術魔法』展開『オカルティズム:くちさけ』展開『オカルティズム:りんふぉん』展開『しねしねしねしね』」
クリスは、大鋏と、クマの形をしたパズルを媒介に黒い炎がクリスから燃え上がりコウスケの下腹部に大鋏突きつけようとする。
男、コウスケ。
男を卒業してしまいそうになる危険を感じたのか、猛ダッシュで浴場を飛び出していった。
「すびばせんでしたあぁぁぁぁぁ!」
「まて! 女の敵めぇぇぇぇぇ!」
この後、工房にこもっていたホレに本気で説教がされるまで、この無益な追いかけっこは続いていったのであった。
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