第5話 魔女は、ピクニック気分で世界を救う

「ぐす……なぜ……なぜ私まで怒られなくてはいけないのですか……」


「たく……このダンジョンを攻略した後、アイツは……ス。顔と名前覚えたわよ」


「ダンジョン! すげえ!」


ダンジョン内部一階層。

スフィンクスのような石像が並ぶ通路は、たいまつや光魔法で明るくなっている唯一の現在踏破エリア。

三者三葉のリアクションを説教後に食らう三人。べそをかくレーラに怒れるクリス、そしてもう気にしていないのか好奇心が前に出るコウスケ。


「おいおい、あの冒険者たち死ぬぞ、装備も編成もなってねえ」


「まあ、女は面がいい、亜人も希少種の吸血鬼。男が死んだら助けてやろうぜ」


「二人とも、下世話ですよ。そういうのは、ベッドの上で話してください」


周りは、コウスケ達を見るからに初心者の冒険者のように見ていた。

魔術師が二人に前衛と思わしき亜人。亜人にも種類があるが、レーラは、角と翼から、吸血鬼の亜人と見られている。吸血鬼の亜人は、血を魔力に戦う種族で肉体も強いが夜行性のため、日の出ている間は、力が大きく弱くなる。

それに魔術師二人、一人は、見るからに新人で一人は、容姿に気を遣いすぎて冒険者向きでない。そんな声は、コウスケ達にも聞こえていた。


「もしかして、俺達のパーティーって弱すぎ?」


「そうね、本来パーティーは、前衛、支援、魔術の組み合わせが多いわ。私たちは、見るからに前衛1の魔術2。支援役って結構大事なの。前衛と魔術のバランスを見て、魔法や支援攻撃、果てには回復も担当するし、魔術は、いたら楽。前衛と支援は必須なのよ。……教科書通りならね。まあ教科書しか読めないやつに冒険なんてできないけれどね」


「ですが、師匠。弱者の声も大事ですよ。まあ、弱者の知恵ですが」


澄まして言うが、喧嘩っ早いクリスに理不尽の権化のようなレーラの目は笑っていない。

そんな魔物より恐ろしい二人を必死になだめるコウスケ。


「ほ、ほらね。そろそろ未踏エリアだし、そこで実力をね……って、うおぉぉぉ!」


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「わ、わわ、いきなりの浮遊感って、師匠! コウスケさあぁぁぁぁん!」


コウスケは、石像によりかかった瞬間、落とし穴の罠が作動し、コウスケと気を抜いていたクリスは、落とし穴から落下、レーナは、普段から翼を生やし浮遊魔法をわずかに起動しているため落ちずに済んだが二人を受け止めるため自ら落とし穴に落ちていく。


そして刹那の瞬間、額に汗を垂らすレーナは、二人を宙で受け止めた。


「コウスケさん、むやみやたらにダンジョン内のものを触らないでください。死にま

すよ。全く……反省してください」


「はい、穴から戻ったら謝ります」


コウスケは、反省をして、レーラに謝るのだが、クリスは、黙って下に続く深淵を一人覗いていた。


「待って……うん、そうだ絶対に」


「し、師匠? そんな深淵を除いても深淵は、師匠を除き返してなんか……」


「簡易魔法で下を見なさいレーラ。コースケ、アンタには、今度、冒険で使える簡易魔法とか教えるから、今は私の魔法を唱えるから抵抗しないでね。展開『視力強化付与』」


クリスは、そう唱えるとコウスケの目にレンズが現れる。レーラも簡易魔法……呪文を省いた簡単な視力強化魔法で下を覗く。

そこには、はるか地下深く、その場にはふさわしくないやけにファンシーな扉が無数に宙に浮いている。


「……あの婆さん、人が冒険するときぐらいは、呼び出さないでよ……」


「ば、婆さん?」


コウスケは、呆れて溜息をつくクリスに聞くがクリスは、あーあとため息をついてコウスケに説明をしだす。


「残念だけど、今回の冒険は、ダンジョン探索ではなく魔女の家への正体だったみたいね」


「え、えーダンジョン探索はしないんっすか、クリス先輩」


コウスケは、ジト目でクリスを見るが、クリスはそれ以上の落胆した表情で話し出す。


「残念なことにね……。文句はこれから会う婆さんに行って」


「でもー」


コウスケは、レーラに目を向けるとレーラは、一人怯えていた。


「に、逃げませんか? あの人には会いたくないです」


「無理、魔女の招待状は、魔法体系に無理やり組み込まれた呪いみたいな魔法なの、そんな常識はずれなことをする魔女に私たちが逃げ切れると思う?」


「黒竜の力で……」


「全力のあんたが、私以外に倒しきれなかった正真正銘の魔女よ。できると思う?」


「倒されることはないですが、絶対に倒せないですね」


「え、えっと、すみません。なに? 魔王にでも会いに行くのですか?」


コウスケは、怯えて話を聞こうとするが二人は本当に深刻そうな顔でコウスケに伝える。


「この世界の魔王をピクニック気分で殺した魔女……倒せると思う?」


「できれば会いたくないです……けど逃げられないので」


レーラは、意気消沈ゆっくりとファンシーな扉をくぐるため降下してく。


「え、えっと逃げるという選択肢は?」


「ない」


コウスケの願いは、クリスの両手を上げ、お手上げジャスチャーをすると扉は開きコウスケ達は、扉に導かれていくのであった。

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