第14話引っ越し祝い

「ふんふんふ〜ん♪わくわくわく♪」


 鼻歌を口ずさんでいるのはミーシャさん。俺が今から作る食事をとても楽しみにしている様だ。ならば期待に応えねばなるまい。


「え〜と、用意されてる食材はっ…と―」


 魔導具の冷蔵庫を開け食材を確認。すると、一見すると人のアバラかとも思える不気味な緑色のソレが目に入る。


「………ミーシャさん、これは?」


「ん? ああ、これは貰い物なんだけど、ゴブリンのアバラ肉の塊だよ」


 ゴブリンって、あのゴブリンだよな?よく物語で目にする。話を聞くとゴブリンのアバラ部分の肉は食べれるという事だった。食感はというとパサパサした感じで、味は味気ないものの、その禍々しいとも言える見た目とは裏腹にこの世界では結構出回っていて、頻繁に食べられているらしい。


「普段は焼いて果実ソースに付けて食べる感じだね」


 なるほどね。


「じゃあ、これを使って料理をしてみようかな」


「「ホントにっ!?それも美味しくなるのっ!?」」


「ん〜 まぁ、出来てからのお楽しみという事で」


「「凄く楽しみ♪」」


 アイシスもミーシャさんも楽しみにしてる所、非常に申し訳ないんだけど…これだけは言っておかねばなるまいて。


「ただ…」


「「どうかしたの?」」


「材料を取り寄せたいんだけど…」


 結構調味料も使ったし、アレを取り寄せたいと思ったんだよね。


「はっ?」


 アイシスは怪訝な表情をしている。


「大丈夫よ、アイシス。あなたは何も心配しなくていいわ。美味しいものの為なら私が一肌脱いでみせるわっ!」


「み、ミーシャ…」


 いかにもカッコいい人を見たかの様にアイシスが瞳をウルウルさせてミーシャさんを崇なってるんだけど、言葉通り本人も脱ぐ事になるとは1ミリたりとも思っていないようだ。まあ、脱ぐだけではすまないのだが…。


「じゃあ、早速…【血の代価】発動!」


 そして取り寄せたるは…六◯の美味しい水の2リットルペットボトル3本、キッ◯ーマンの醤油ボトル、そしてお酒は月◯冠の一升瓶に砂糖等など。


「ふわぁ〜 凄い」


 そういえばミーシャさんはこれを見るのは初めてだったな。


「また…こんなに取り寄せて…」


「仕方ないだろ?これは必よ…」


“ドクンっ!”


 まあ、ここからはこの間と同じ感じ。あえて多くは語らないけど…意識が戻った時にはミーシャさんが素っ裸でエロフとなりて励んでいた事は言うまでもない事だろう。


 アイシスはというと…その場にいるのが憚れたのか自室へと引きこもっていたようだ。


 顔や見える部分の肌が上気している気がするのは多分気のせいだと思う。





「こ、この世界ってお酒は何歳からなんだ?」


「そ、そうね…。十五歳からよ」


「そ、そうか。だったら料理が出来る迄の間、2人ともコレでも飲んで待っててくれるか?」


 俺は取り寄せたガラスのコップにお酒を注ぎ、そのツマミにさきいかを用意。


「凄く綺麗なコップね?」


「だろ?」


 俺はアイシスの言葉に短く言葉を返した。そして…発散した後、素に戻って恥ずかがってるエロフ…ゲフンゲフン…ミーシャさんに酒とさきいかを薦める。


「ううっ…ま、また…やっちゃった…食べ物の為とはいえ…またあんな姿を晒してしまうなんて…」


「ささっ!ど、どうぞ、ミーシャさん。こちらをお召し上がり下さい!俺の世界のお酒とさきいかと言うお酒のおつまみです!」


「お酒っ!?お酒には私はうるさいわよ?」


 んっ…ミーシャさんが単純で良かったな。お酒で元に戻るとは残念過ぎるけども…。食べ物でもそういえば元に戻っていたようだし、第一印象からは想像出来ない姿だな。


 そしてグビッっと一口。


「「!?」」


「…飲みやすい」

 

「アイシスはお酒の味が分かるんだな?」


「多少はね。それにこの…さきいかっていうの?コレも非常に美味しいわ」


「だろ?」


「こ、これがお酒…お酒がこんなにも美味しいなんて…レイン君の世界恐るべし…グビッグビッグビッ! ムシャムシャムシャっ!さきいかも美味し過ぎるわっ!?何この無限ループはっ!?レイン君は私をどこへ連れていこういうのっ!?グビッグビッ!」


 うん。お酒が飲み干される前に料理にも使ってしまうとしよう。ちなみにどこにも連れて行くつもりはないですからね?俺はそんな事を思いながらキッチンへと向かう。

 

「まずはこのゴブリンのアバラ肉のブロックから骨を取り除いてっと…」 


 骨はダシにも使えるらしいので冷蔵庫へ。そしてゴブリンのアバラ肉を手でほぐして、それを小鍋に入れる。ここで六◯の美味しい水を注ぎ込む。お肉が少しかぶるくらい注ぎ入れたらふつふつさせていく。


 そして、砂糖に酒と醤油を入れて、ふつふつした状態をキープ!


 更にそこへ落とし蓋をして、ゴブリンのアバラ肉に味を染み込ませていく。


 暫くして味が染み込んできた頃合いを見て、先程の落とし蓋を取り、更に汁がなくなる迄煮込んで………


「出来上がりだよい!!」


「「ふわぁ〜〜〜 いい匂い」」


 出来たソレを、皿に盛り付けてっと…


「ゴブリンのアバラ肉のしぐれ煮!熱いうちにおあがりよっ!」


 我ながらいい出来だと思う。アイシスとミーシャがそれを口に入れる。


「「パクッ…」」


 もぐもぐと2人はゆっくり味を確かるように咀嚼。そして飲み込むと、涙を流しながら…


「「…神が居たわ」」


 2人とも同じ言葉を発するのだった。

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