第10話決闘と精霊

 俺達はギルドの地下へと移動。そこは闘技場みたいになっていた。


「ちょっと! 本当に大丈夫なんでしょうね!?」


「うん、大丈夫だと思うよ」


「超絶美少女様にも頼まれてるのよ!?本当に本当に大丈夫!?自分の事も分かっていないでしょっ!?」


「少なくとも使える能力は分かってるよ?まぁ、まだやれる事は少ないけどね」


 なかなか眠れなかった時に『ステータスオープン』とか、『スキル開放』とか念じて見たんだよね。小声で言ってみたりもしたけどね。異世界に行ったらみんな一度は試す筈だ。残念ながら何も出なかったんだけど、【血の代価】以外に2つスキルがあったっぽいんだよね。1つは【精神耐性】。これがあったお陰でアイシスに斬られた時も痛みや恐怖に取り乱さなくて済んだんだと思う。


「…では…両者中央へ」


 ミーシャさんが審判みたいな者を務めてくれるようだ。


「殺してやる」


 わぉ〜 殺る気十二分て感じ…


「ガイさん?それを私が黙って見ているとでも?」


「…言葉の綾さ…。さぁ、合図を…」


「こちらもいつでもいいですよ?」


 俺はそう言ってアイシスに借りたナイフを構える。


「くっはっはっはっ…こりゃあ傑作だ。その構え…くくっ…自分の手でも斬るつもりかよっ!」


 ミーシャさんも俺の構えを見て心配して合図を躊躇している。大丈夫だとミーシャさんに頷いてみせる。


「……始め!」


 合図と共にガイは大剣を構えてこちらに迫り来る。俺は合図と共に後ろに下がっていく…


「逃げてんじゃねぇーぞ!」


 そして自分の手の平をナイフで斬り…


「コイツ本当に自分の手を斬り…」


 斬り口から血が溢れるその手を横へと一閃。


「【血剣ブラッドソード】✕5」


 傷口からスキルの使用分の血液が放出。空中へと放たれた血の塊がその形を剣の姿へと変え空中で静止。あれっ…これってやっぱり結構血を使っちゃう感じ!?

 

 チラっと視線をアイシスに…。ジト目でこちらを見ているのは多分気のせいだろう。


「な、なんだよ…これっ…クソっ!!」


 空中に浮かんだ5本の血剣は俺の思い通りにガイを囲む様に動き回り、大剣では捌けない隙間を縫う形でガイに迫る。


「くそっ!クソっ!」


 やがて捌ききれなくなった血剣の内の一本の剣先がガイの喉元を捉え、突きつける様に静止する。


「うっ…あっ…」


 ガイは信じられない表情をしている。こういう輩は脅しておいた方がいいよな?


「約束は守れよ?次はそれを止めないからな?」


「ぁっ…ぁぁ」


 言質とったぞ?


「勝負あり…ね」


 そこからの展開は早かったよ。ミーシャさんの声が響くとともにガイは逃げるようにその場を立ち去っていった。俺はというと血で作った剣を元の血に戻し、ソレを体の中に戻せないか試してみる。でも流石に駄目だった。やっぱり一回体外に出ているからだろうか?そこら辺はままならないな。


「一応お礼を言っておくわね、ありがとう」


「うん。別にいいよ?」


「でも…あんなに血を使ったら…」


「あっ…分かる?先に謝らせて貰ってもいいかな?」


「いいわけないでしょっ!?」


 そんな風にアイシスと話していると、


「レイン君…君は何者?」


 ミーシャさんの声。


と契約している私にはなんとなく分かるわ。それ闇の力よね?悪い人には見えないけど…仕方ないよね?」


 やっぱり闇…だよね?吸血鬼だし…。でも仕方ないってなに?


「【シルフ】来なさい!」


 ミーシャさんの周りに可視化された風が集まり竜巻を形成…


『呼んだ?』


 竜巻が消えるとよく物語に出てくる様な羽根が生えた妖精とも呼べるような存在が目の前に現れた。

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