第9話テンプレな冒険者

「レインが異様な程エルフに興味があるのがよく分かったわ」


「エルフだぜ?生エルフ!それこそ創作の中でしか出てこない種族だし、そんな憧れのエルフに会えたんだぞ!?興味があるのを分かってくれるならもう少しお話させてもらいたかったんだがっ!?」


「迷惑でしょうが!?少し考えなさいよね!?」


「おっ、もしかして妬いてるのか?」


「なっ!?」


「エルフの話ばかりして…」


“ゴチン”


「痛っ!?」


「誰が誰に妬くっていうのよ!?妬くわけないでしょ!ばっかじゃないの!?」


「はい、言ってみただけです…」


 何も殴らなくても…。


「別の世界から来たってバレたら色々と面倒でしょ? 違う?」


「はい、おっしゃる通りで…」


「少しは考えて行動してくれる?」


「はい」


 くっ…アイシスが正論過ぎて何も言えねぇ。


「そういえばアイシスはソロの冒険者なのか?」


「露骨に話題を変えてきたわね? まあ、いいけど…。ええ、私は基本ソロよ。依頼によっては組む事もあるけどね」


「ランクは?」


「私は今Bランクね。ちなみにミーシャは元Aランク冒険者よ」


「お〜 やっぱりミーシャさんは元高ランク冒険者だったんだな」


「分かるの?」


「いや、テンプレだろ?」


「テンプレが何か分からないけど…エルフって種族に絶大な信頼を置いてる感がするわ」


 アイシスは呆れているようだが別にエルフだけに興味がある訳じゃないんだからね!?

先程からちらほらと目にする人族じゃない種族にも大変興味があるのは言わない方がいいかな?


「もしかして…人族じゃない種族全般なわけ?」


「分かるのかっ!?」


「…あなたの視線やら表情を見て分からない方がおかしいと思うわ」


「そ、そうか」


 そんなに顔に出てたかな…。


「…場をわきまえて…恥ずかしい事しないでね?」


「しないよ!?場位わきまえてるって!」


「…ホントかしら」


 ふむ。信頼ないな。エルフのミーシャさんを見た時は流石にちょっと興奮し過ぎたとは自分でも思うけども…。


「よぉ アイシス」


 声の方に視線を向けると、そこには金髪のイカつい顔をした冒険者と一目で分かるあんちゃんの姿が…。背には大剣を携えている。


「何か用?」


「相変わらずツレナイなぁ、アイシスは。会うたびに俺がこうしてわざわざ話掛けてやってるっていうのによぉ〜」


 うわぁ〜。またもやテンプレ来たよ。これ絶対にアイシス狙って奴じゃん。何でそんな上から目線なのさ。


「頼んでないし、わざわざ話掛けなくていいわよ?」


「チッ…それよりも…横の男誰よ?」


 うわぁ〜 俺の存在にも気付いてるのかぁ〜。こういうのって物語では定番だけど、いざ自分が絡まれると面倒だな…。


「あなたには関係ないでしょ?」


「いーや、関係あるね。お前は俺の女になるんだからよ?」


「アイシスモテモテだな…。まあ、アイシスは美少女だし、その気持ちは分かるけど…」


「にゃ!? とちゅぜんレインはにゃに言ってるにゃ!?」


「えっ!?事実を言っただけだけど?」


「ば…ばかっ…」


「おい!俺を無視して2人でイチャイチャするんじゃねぇーよ!!それにお前は俺の女だろーがよー!」


「い、イチャイチャなんてしてないわよ!?それに何度も言うけど私はあんたの女じゃないし、あんたの女になんかならないわよ!」


「だってさ?」


 “ギリッ”


 悔しい時の歯ぎしりってこんなに音がするんだな。


「それに…アイシスはもう俺の女だ。昨日もそれはもう俺の前で乱れてたぞ?」


「ふぁっ!?な、何言って…!?」


「…ぶっ殺してやる」


 男が大剣に手に構え、アイシスもそれに反応していつでも抜ける様に帯刀している剣に手をかける。周りもなんだなんだと騒がしくなってきたな。


町中まちなかで剣を抜くなんてあなた正気?」


「そんなの関係ねぇー!挑発したのはソイツだ」


「レインも何で挑発…」


 俺はアイシスの前に出る。


「いや、好き勝手言ってるあいつが許せないだけだけど?アイシスも嫌でしょ?付きまとわれるのは…。これが初めてじゃないだろうし…」


「それは…そうだけど…」


「ごちゃごちゃごちゃごちゃっ…いつまでも言ってんじゃねえー!!!」


“ザシュッ!ザシュッ!”


 イカついあんちゃんが大剣を振りかぶって迫りくると思い、コチラも構える。その瞬間の事だった。各々の足元の地面に矢が突き刺ささった。


「お互いそこまでよ?」


 そう言って姿を見せたのは弓を構えたミーシャさんだ。エルフの弓構えた姿が目茶苦茶かっけぇー!


「これは何の騒ぎ?冒険者同士の争いは御法度の筈よね?」


 俺達が事情を説明すると、


「ガイさん、また貴方なの?」


「チッ」


 ガイと呼ばれた男はバツが悪そうな表情をして舌打ちする。


「うちのギルドマスターからも通告されていた筈ですが?」


「くっ…この男が俺のアイシスに―」


 まだ言ってるし…


「アイシスはあんたのモノじゃないだろ?」

「私はあんたのモノじゃないわよ?」


 俺とアイシスの声が見事にハモる。


「こ、この男が特に気に喰わねぇー!」


 男は剣先を俺に向けて…


「ギルドの地下を貸してくれ!この男と決闘させてくれ!頼むよっ!!」


「それは認められませんね。彼は今日冒険者登録されたばかりですし何よりガイさん、貴方は最早そんな事を言える立場じゃあ―」


「俺は構いませんよ?」


「「えっ?」」


「その代わり俺が勝ったらアイシスには二度と近寄らないでくれるなら」


 俺は決闘を受け入れる事にしたんだ。こういうのは許せないしな。


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