第4話おあがりよ!
さて…まずはトンカツ…いや、オークカツから作り始める事にしよう。トンカツを作る時と同じ要領でまずはオーク肉の筋に切り込みを入れていく。そして包丁の背で叩く。
“トントントントントン―”
「―これ位かな。次はっと―」
「凄く手慣れてるわね」
「モチのロンよ!」
それからオーク肉に薄力粉をつけて、それを溶いた卵につけ、パン粉をまぶす。
「ふわぁ〜 これ卵なの!?小さいね? でも上質そう…うわっ、柔らかっ!? えっ、これパンの粉なのっ!? 何でもかんでもレインの世界のモノって上質過ぎない!?」
アイシスは地球産の物に興味津々といった所かな。
そんな様子のアイシスを傍目に火にかけている2つの鍋の元へ。2つとも油が入っており、それぞれの油の温度を箸先で確認。箸先を油に入れ、箸先から静かに泡が出たら大体160〜170度位の温度、箸先全体から勢いよく泡が出たら180度以上の温度って事だ。2つ用意したのはいわゆる2度揚げの為だ。
「よし、2つとも準備は完了みたいだ。まずはこっちの低めの温度の油でっと!」
“ジュワワッ! パチパチパチパチッ―”
「油っ!? 食用!? 油であげる? そんな油があるのっ!? わっ!? 少しずつ色が付いてきたわっ! ふわぁ〜 なんか食欲を誘ういい香りが…」
オーク肉につけた衣が油の中で薄いキツネ色へと色付いた所で取り出し、油をきる。
油をきったら今度は高温の油の中へとそれを投入。エイヤッ!
“バチバチバチッバチバチバチバチッ―”
「あっという間に色付いていって…ゴクリ…も、もう食べれる!? 食べれるよね!?
食べていいと言って!?」
「………ここだっ!」
衣がいいキツネ色になった所で高温の油からオーク肉を取り出し、後はそれを包丁で食べやすいサイズに切っていく。
“サクッ…サクッサクッ―”
うん。この切る時の音が素晴らしい。
「良い音…」
おっ!?アイシスも分かってくれるか!
「後はコレを綺麗に盛り付けて…」
皿に千切りにしたキャベツと食べやすいサイズに切ったオークカツを見た目よく盛り付け、イ◯リのトンカツソースをかける。カラシはお好みでつけれるようにしたうえでアイシスへと差し出す。あの名セリフと共に。
「オークカツ…おあがりよ!」
「…オークカツ…なんて素敵な名前なの」
「美味しすぎるからって着ている服を脱ぎ捨てて裸にならないでくれよ?」
「っ!?な、なるわけないでしょっ!?何言ってるのっ!?」
そりゃあそうか…。異世界だからあの漫画の様になるかなと少し思ってしまった。
「あ、あまつさえ…きょ、今日会ったばかりの異性に…そそそそ、そんなハレンチな…」
美少女からハレンチを頂きました。オークカツを作った俺の生涯に一片の悔い無し!
俺は目を閉じ、拳を握りしめた右手を天へと突き出す様なポーズをとる。
「…レインは何してるの?」
「あっ、こっちの事は気にしないでくれこっちの事は気にせず、熱いうちにどうぞどうぞ!」
「それじゃあ…いただくわね」
アイシスと一緒に俺もオークカツをパクリ…。
サクッと衣の音と共に口の中に味わった事がない肉汁のハーモニー。なんだこれは…。一口で無理だと思った肉とは到底思えない。濃厚なんだけどしつこさもクセもない…。表現が上手く出来ないとはこの事なんじゃないかとそう思わせる…そんな味。
オークカツ…俺は大変な物を作ってしまったのかも知れない…。
「…止まらない…んぐっ…美味し過ぎて止まらないよぅ〜 もぐもぐ…」
アイシスはこんな美味しいものは食べた事がないと言いながら、次から次へとオークカツを口に運んでいる。
そんなアイシスの様子を見た俺はアイシスが焼いてくれてお互いに食べかけていたオーク肉を手に取り台所へと向かう。そしてダ◯ショウの味塩胡椒をササッと振り掛け…焼きなおす。
それと同時進行で牛乳と卵を混ぜたものに森◯のホットケーキ◯ックスをドーン!混ぜ合わせものを焼き上げていく。そんな俺の元にモジモジしながらアイシスがやって来た。
「レ、レイン…お、オークカツ…って、まだある?」
どうやらおかわりを所望されているようだ。
「言っておくけど普段はこんなに食べたりなんかはしないんだからね!?」
口には出せないが、もしかして俺のせいか?吸血した事が関係している?俺が言える事は…
「仰せのままに…。今からまたオークカツを揚げるからその間にコレを食べてて」
「コレは…私が食べかけていたステーキ?」
「そうだよ。それとデザートは最後かなと思ったんだけど焼き上がったからコレもどうぞ」
「…すぅ〜 甘いようないい匂い。コレは?」
「コレはホットケーキ。好みでコレを掛けるか付けて食べてみて?」
シロップとバターを手渡す。
するとアイシスは早速その場で一口ずつ口に入れる。
「んんっ〜〜〜〜〜♪」
特にホットケーキがお気に召した様子だ。
「…ところで…こんなに色んな物を欲したら血が足りなくなるのは当然よね?」
おっと…痛い所をお突きになる…。そしてアイシスはジト目で俺を見てくる。美少女のジト目はご褒美にしかならないというのは本当だったんだな。何だかクセになりそうな感じだ。誠にありがとうございます。
しかしこういう時はアレだな…。俺は鈍感ではないのでアイシスが何を求めてそういう事をしているのかが分かる男だ。
「おかわり自由になっておりますゆえ…」
「まあ、こんなに美味しくなるのならそりゃあ欲しくなっても仕方ないわね♪」
アイシスはご機嫌な様子で食卓へと戻っていった。そして次から次へと平らげていったのだった。
お粗末!!
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